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ある日魔法は唐突に  作者: 亜入
第一章
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第十一話 学園生活は唐突に 前編

「ふわぁ……。もう朝か」


 ピピピピピピと部屋の中で鳴り響くスマホのアラームを止めて起き上がる。

 画面を起動させて時刻を確認。そしてガラスの画面に映る姿は男の姿ではなく一人の可愛らしい顔をした少女である。


「夢ならたくさん見たんだけどな……」


 本当に現実なのだと思い知らされた瞬間だった。寝て目が覚めれば元に戻っていることをほんの少しだけ期待していた。

 これは紛れもない現実なんだ。だったら昨日誓った通り今日を頑張ろう、明るい明日に向けて。




「おはようアリスちゃん。昨日は体調悪かったけど大丈夫?」


 部屋を出て洗面所に向かったところ偶然にも翡翠ちゃんと出会った。彼女の髪の毛は寝起きなのでボサボサだ。昨日はしっかりした子だと思っていたが、こんな一面もあるんだなと思ってしまう。


「おはよう翡翠ちゃん。昨日はお騒がせしました」


 昨日何回も気遣ってくれたお礼を言った。何気ない一言だが一字一句自分の発言する言葉には気をつけている。当然この子にも自分が漂流者であることを明らかにしていない。しっかりした子だといえ余計な混乱を招くこともあるし。


「……なんかアリスちゃん話し方固くない?」

「……えぇ!?」

 

 図星をつかれ、思わず反応してしまった。だって実際そうなんだもの、おとといまでとは別人で翡翠ちゃんが知っているアリスではない。

 当たり障りのないように装っていれば少なくともバレることはないと思っていたが……、それが裏となってしまったか。


「そ、そんなことないよ! ふつーふつー。どこがおかしい?」

 とりあえず勢いで可愛く振舞って誤魔化してみた。この可愛さに免じてスルーしてくれれば簡単なのだが果たして……。

「うーん、気のせい、かな。ただ何となく雰囲気がね? まだ病み上がりなのに変なこと言ってごめんね」

 ふーーっ……、何とか納得してくれたみたいだ。まだ違和感を持たれているみたいだが、これ以上言い訳をするとボロが出るかもしれないので黙っておくことにした。城ケ崎明の話し方の癖が出ないように徹底していたけれど対策を考え直さなくてはならない。

 その後は何事もなく検査に呼ばれるまで自室で待機していた。今朝の朝食も部屋まで運んできてくれたし、無暗に他の生徒と接触しなくてすんだ。




 昨日保健室でシャワーを浴びた後、一限が始まるころに寮の部屋の前に行くと未来が言っていた。

 スマホと財布を準備していつでも出れるように支度をする。


 キーンコーンカーンコーン


 鐘の音が学園中に響き渡る。昨日は音色なんか聞く余裕がなかったので気がつかなかったが、これは多分録音された音ではない。学園の敷地のどこかで鳴らされている音だと思う。

 この広い敷地のどこに鐘があるんだろうとワクワクしていると、コンコンと扉がノックされる。

 っとこうしちゃいられない。パタパタと歩き扉をゆっくりと開けた。


「おはよう、アリス。ゆっくり眠れたかい? それじゃあ行こっか」


 扉を開けた先にいたのは自分よりも頭半分くらい小さい未来がいた。後ろにも周りにも他に人は見当たらない。どうやら一人だけで迎えに来てくれたようだ。

 漂流者の検査、というからにはもっと仰々しく白衣を着た人が大人数で押し寄せてくるものだと想像していた。少しでも抵抗の意志を見せれば数の暴力で強制連行……、ということも最悪のパターンとしていたのに拍子抜けだ。

 ……でも来てくれたのが未来で内心ホッとする。もしかして自分に気を使って知っている人を寄こしたのかな? などと思っていた。


「そういえば検査とかって何やるの? 魔法で魔法陣とか発動したり、呪文を唱えたりするの?」

 検査と言われてもどんなことをどの程度やられるのかは知る義務はあると思う。魔法の世界だから不思議なポーションとか飲まされたり、精霊を呼び出して想像もつかぬようなことをするのか?

「ふっはははっ! 君たちの世界の魔法のイメージってすごく物騒なんだね。なに、簡単な臨床検査さ。魔法の世界でも君の世界同様の科学水準と思ってくれていいと思う。大体検査結果も含めて正午には終わるかな?」

「それだけ? 思ったよりも楽そうだね」

 

 想定外と言えば想定外、いや想定内? なのか?

 元の世界と変わらない臨床検査として安堵したというかがっかりしてしまったというか。

 魔法の世界と言われてもまだ未来の物体飛行しか見ていない。学園にいる限り魔法を見る機会は山ほどあると思うが、どんな魔法でもいいから見てみたいのが本心。だってそれがこの世界での一つの楽しみ方であるから。


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