偉大なる大先輩達の音。
バンド物、昔を思い出して書いてます。
完全に趣味の世界に浸って楽しんでます。
勝手に、色んなバンド名出してるけど、大丈夫かな?
出てくるバンドが古いのは、ご愛嬌と言う事で許して下さい。
政孝さんと政宗が、家に来た翌日、土曜日で学校は休み、昼の1時から政宗の家で練習なのだが、泰士に会って政宗が、バンド名の話しを出さない様にと祈りながら、重い足取りで、練習場となる政宗の家を目指した。
政宗の家に到着すると、暗い顔をした政孝さんが出迎えてくれた。
「宿酔ですか?家の親父も、久し振りに飲み過ぎた!って家でダウンしてますよ。」
「俺も、少し羽目を外し過ぎて、今朝から女房に、ケチョンケチョンに言わされちまったよ(笑)
政宗の奴、今昼飯食ってるから、紫も一緒に食うか?」
「俺は、家で食べて来たから大丈夫ですよ。」
「そうか、なら後で飲み物とおやつ用意してやるからな。」
政孝さんと喋ってると泰士が来て、政孝さんは、泰士にも昼飯を薦めていたが、泰士も食って来た様で、先に2人でガレージに入りギターのチューニングを合わせエフェクターを並べセッティングを終了させた頃に政宗が、昼飯を食べ終わりやって来た。
適当に知ってる古い曲を1時間程軽く奏って、少し水を入れる事にした。
「学祭も良いけど、ライブハウスで奏らないか?」
政宗が、スポーツドリンクを飲みながら、ポツリと口に出した。
「奏っても良いけど、オリジナル無いじゃん。
誰か曲書けるの?」
泰士が言うと、政宗が、
「紫が昨夜弾いた曲って、オリジナルだよなぁ?」
「あれは、インストだから、歌詞乗せるのは、作った事ないし、難しいと思う。」
「なぁ、紫、俺もその曲聞いてみたい!」
泰士のリクエストに応え10分程の長い曲を弾くと、泰士は、
「インストバンドでいいんじゃねぇ?」
と適当な事を言い始めた。
「いやいや、泰士、早まるな、紫はこんな曲を作れるんだぜ、少し頑張れば、歌詞乗せも大丈夫だと思うんだ。」
「そうだなぁ、紫チャレンジしょうぜ!」
「チャレンジぐらいならしても良いけど、あまり期待はするなよ!
それから、俺にばかりさせずに、お前達も曲とか、歌詞とかチャレンジしろよ。」
「それこそ、期待するなよ(笑)」
「迷曲待ってるぜ(笑)」
とか、馬鹿話ししてると、政孝さんが、
「愉しそうじゃないか、音楽は、音を楽しむと書いて音楽だから、楽しんでやるのが一番だ!」
なんて、それっぽい事を言いながら、おやつと飲み物を持ってガレージにやって来た。
「そうそう政孝さんは、親父と一緒に奏ってたんですよね。
親父がライブハウスとかで演奏してたって言ってたけど、オリジナルの曲ってどうしてたんですか?」
「殆ど、良さんが書いてたぞ、たまに俺や兄貴が作った曲を見せたら、『いいねぇ』とか言って勝手にアレンジして、全然違う極大にされてたのは、笑えたけどな(笑)」
「その頃の曲って聞いてみたいですね。」
「聞かせてやりたいけど、音源が残って無いからなぁ……………ちょっと待てよ、聞かせてやれるかも知れないぞ!」
そう言って政孝さんは、ガレージを飛び出して行った。
「何だったんだ、親父の奴、家に昔のカセットテープでも残ってたのかな?」
「ても、何かワクワクしないか?俺達の親父の曲聞けるんだぜ!」
「もしかしたら、スゴく恥ずい曲だったら、どおするよ(笑)」
「政宗、そんな事言って、マジに笑ったりしたら、お前、小遣い貰えなくなるぞ(笑)」
「いや大丈夫、小遣い渡してくれるのは、お袋たから(笑)親父お袋に頭上がらないからな(笑)」
「政宗の所もそうなのか?(笑)
家もお袋が一番強いわ(笑)」
「政宗の親父さん戻って来ないから、そろそろ練習再開するか。」
「じゃあ何奏る?」
「ノリのいいやつがいい!」
「じゃ初期のボン・ジョビとか?」
「いいねぇ、4枚目迄なら俺できるぜ。」
「俺も!」
「じゃあ3枚目を中心にやろうか?」
と練習を再開して、最後にファーストアルバムのRunawayを奏り始めた時に、政孝さんと家の親父がガレージに入って来た。
演奏を続けながら驚いていると、更に1人知らない人が親父の後ろに続いて入って来た。
その3人は、俺達の演奏が終ると拍手しながら、
「あの頃の俺達よりも、コイツらの方が上手くないか?」
と知らないおじさんが苦笑いしている。
「紫!恥ずかしいリクエストするんじゃねぇ!」
何故か親父に怒られた。
「政宗、席代われ!」
政孝さんが政宗を押し退けてドラムの前に座り、親父は、俺のギターのプラグをすっこ抜き、手に持ったケースから、自分のギターを取り出しプラグを繋いだ。
そして、知らないおじさんは、よく見ると、俺のジャズベースを持って泰士のプラグを抜いてジャズベースに刺して、
「久し振りだから、少し練習させろ!」
と適当なフレーズを鳴らし出した。
3人は、思い思いに音を鳴らし、ハッキリ言って、最初は耳障りなノイズに思えたのだが、10分程すると、妙にいい感じに聴こえてくるのが不思議だった。
「多分、いけるんじゃねぇ?」
知らないおじさんが言うと、
「じゃあ、少しこっ恥ずかしいけど、いつもの順番で!」
親父の掛け声で、一瞬、綺麗に音が消え、静かに、ギターのオルタネイトのメロディが流れ再び音が途切れ、1拍おいて、ドラム、ベース、ギターがドンピシャでフレーズを紡ぎ上げていく。
ベースのおじさんが言った「久し振り」を、感じさせない、息の合った3人。
ハッキリ言って鳥肌が立った。
俺達3人は、親父達の演奏に、完全に魅いってしまっていた。
俺自身は、まるで、外人アーティストのCDでも聴いてる様な気持ちになっていた。
何故CDかと言うと、アルバムを聴いてコンサートを見に行った某外人アーティスト、CDを聴いて素晴らしいと思って見に行ったけど、コンサートの演奏は適当に思える程荒くミスも目立った。
考えれば、あれ以来、外人アーティストのコンサートに興味を失くしてしまったのだが、目の前で演奏する親父達は、まるで、完成されたCDなどの音源を聴いている様に思えた。
演奏を終えた親父、昔、自分の部屋でスモーク・オン・ザ・ウォーターを弾いいたあの格好良かった姿が重なって、声が出なかった。
「正則叔父さん、格好いい!」
政宗が叫んだ。
「おい!政宗、兄貴は格好良くて俺は、格好良くないのか?」
政孝さんが、笑いながら政宗に問い掛けると、
「親父は、お袋の大座布団だからなぁ(笑)」
「てめぇ、小遣いやらねぇぞ!」
「いや!ちゃんと格好良かったって!」
政宗、小遣い渡してくれるのは、お袋さんじゃなかったのか?
「親父、何でプロにならなかったんだ?」
「紫、昔言っただろ、母さんを幸せにしたかったんだ、いくら、テクニックが有っても売れなければ、生活出来ないんだよ、だから、俺は、母さんとお腹の中にいた、お前の為に安定を求めたんだ、未練が無かったと言えば嘘になる、だから、未だにギターを棄てられずにいて、たまに弾いたりしているが、流石に今じゃただの趣味だけどな(笑)
でも、お前が上を目指すなら、俺はお前の意志を尊重して、俺に出来る事は、惜しみ無くしてやるつもりでいる。」
「ありがとう親父、あんたすげぇ格好良いよ、あんたの息子に生まれて、今、一番感動してるかも知れない、だから、親父の作った曲、何曲か奏らせてくれないか?」
「それは構わないが、俺の出す課題をクリアしたら奏ってもいいぞ。」
「課題って?」
「俺が認める曲を作って来い!
それが出来たら、俺が作った曲のスコアを渡してやるよ。」
「分かった、何時になるか分からないけど、親父を納得させてみるよ(笑)」
「おう!待ってるぜ!」
その後は、練習せずに、親父、正則さん、政孝さんを交えて、色んな話しをした。
偉大なる先輩達の失敗談や、思い出話しを聞かされ和気あいあいと話していると、不意に正則さんが、
「お前達の誰かが、良の課題をクリアしたら、うちのホールで奏らしてやろう!」
と言った、正則さんは、セブンス・シードと言うこの辺りでは、有名なライブハウスのオーナーで、うちの高校の軽音部の3年生のバンドがデモテープを送り続けて、未だに合格を貰えていない、と教えてくれた。
追加情報として、うちの軽音部の3年生が定期的に出演しているライブハウスと出演日を教えてくれた。
一度見に行くといいと言われたので、泰士と政宗が、行く気満々で、行こうぜと言って来たので、一度見に行く事にした。
ただ、泰士と政宗も、親父達の曲が、気に入ったらしく、俺達も作曲してみると鼻息が荒かったのには、少し笑えた。
性格に問題アリな3年の先輩達、考えれば、しっかりと演奏を聞いた事が無いから、見に行くのが少し楽しみでもある。
そして、俺達は、その日以降、練習時間の半分は、みんなで意見を出し合って、曲やフレーズを考える時間をつくり、曲作りに神経を磨り減らす事になる。
用語解説
大座布団 = 座布団ってお尻に敷く物ですよねぇ、大座布団、奥さんが座ると、常にお尻に敷かれていると言う事で納得して下さい。
次話、1週間以内に投稿したいです。