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ゆかりのバンド活動、ガールズバンドじゃないよ。

 バンド物です。

 興味のある人は目を通して下さいね。

 俺の名前は紫、むらさきと漢字で書いて、ゆかりと読む。


 これは、いい年こいてハードロック大好きな親父が、昔から大好きなバンド、ディープパープルから引用したらしく、゛ゆかり゛と言う名前なら、男女問わず使えそうと言う安易な気持ちで考えて、お袋が俺を妊娠する前から決めていたらしい。

 お陰様で俺は、小学校の頃から、女みたいな名前と、クラス中の男子から、からかわれていた、せめて俺が女に生まれていれば、こんなからかわれ方しなかったのに、と親父を恨んだ時期もあったが、親父の車の中や、休日に親父が家で流す、ディープパープルやレインボーの曲を聞いているうちに、俺も立派なロック大好き少年になっていた。

 親父の車に乗ると流れてくる、おそらくリフが世界一有名な曲スモーク・オン・ザ・ウォーターを聞くと、思わず口ずさむ程になっていた。

 そんなある日の日曜日、親父の部屋から、お馴染みのスモーク・オン・ザ・ウォーターが流れてきたけど、何か違うと思った。

 ギターの音色しか聞こえない、不思議に思い、親父の部屋を覗くと、親父がギターを弾いていた。

 初めて見る親父のギターを弾く姿に、見とれていると、俺に気が付いた親父は、演奏の手を止めずに、


「すまん、五月蝿かったか?」


 と、照れた様な顔で俺に聞いてきた。


「お父さんってギター弾けたんだ。」


「おぅ!これでも、昔は、バンド組んでプロになろうと思ってたんだけどな、母さんと出会って、成れるか分からないプロを諦めて、母さんを幸せにする事だけを考えて、いい会社に入ろうと努力したんだ。」


「ふぅ~ん、でも、お父さんのギター弾いてるところって格好いいね!」


「ありがとな!紫もギター弾きたかったら、俺が教えてやるぞ。」


 そう言ってくれた親父は、年甲斐もなく、はにかむ様に笑っていた。

 当時、小学校の4年生だった俺は、本気でギターを弾く親父の姿を格好いいと思い、すぐ様、親父にギターを習った。

 親父にギターを教えてって言うと、凄く喜んで、当時身体の小さかった俺の為に、ショートスケールのギターを買ってくれた。


 親父のレッスンは、俺を飽きさせない様にと考えてくれたのか中々楽しいレッスンだった、ドレミファソラシドの音階から始まり、それを弾けると、簡単なカエルの唄を教えてくれた。

 何か1つ弾けると、凄く上達した気分になり、益々ギターを弾くのが楽しくなり、俺は親父の教えてくれる事を次々に覚えてゆき、中学に上がる頃には、親父のレッスンを必要としなくなった。

 そして、その頃には、親父の実家から、親父のコレクションしていたギターを3本貰い、初めて手にしたショートスケールのギターを卒業した。

 親父のくれたギターは、フェンダージャパンのストラトキャスターこれは、ディープパープルのギタリストのシグネーチャーモデルで、フィンガーボードを削ったスキャロプト加工されたもので、ビブラートやチョーキングするのが楽で左手のタッチの強弱で、微妙な音程の変化があって、上級者はなれば、色んな音の表情を楽しめると教えてもらった。

 2本目は、トーカイのレス・ポールこれは、とんでもなくいい音がなる!親父が言うには、本家のレス・ポールのヴィンテージギターと遜色の無い程いい音だそうだ。

 そして3本目は、フェンダージャパンのジャズベース、これは、オマケで付けてくれたと笑っていた。


 親父に貰ったギターは、どれも弾きやすく、俺は益々ギターにのめり込んで行ってギターの腕も上達し、親父は喜んでくれたのだが、日長一日ギターを弾く俺を、お袋は快くおもわなかった。

 学校の成績は、中の上、少し頑張れば、近くの公立は楽勝のレベルなのだが、小学校の頃は、常にトップクラスの成績が、ギターを弾く様になってから、平均より上をキープするに留まっている俺に痺れを切らし、私立の難関高校を狙えと無茶を言ってきた。


 当時、俺の成績低下は、親父が俺に与えたギターのせいだ!とお袋に凄まれた親父は、俺に頭を下げ、受験だけは、母さんの言う通りにしてくれ!もし私立の難関高校に合格したら、欲しいギターを買ってやる!と言われた。

 親父がお袋に頭が上がらないのは、昔から知っていたけど、その親父の姿が、ギターを弾いていた格好良かった親父と、あまりにも差がありすぎて、受験は、親父の為に頑張ろうと心に誓った。

 実際のところ、親父に貰ったギターに大変満足していたので、新しいギターについては、あまり考えていなかった。


 それからは、ギターを弾く時間を半分削って勉強にも力を入れた。

 その日の復習とそれまで疎かにしていた期間の復習を重点的に頑張り中2の終わりには、学年でも上位の成績にまで押し上げる事が出来た。

 この頃には、お袋の言った私立の難関高校よりも上のランクの、地域最難関高校を目指せる様になり、お袋も勉強さえすればと、ギターを弾く事に何も言わなくなった。


 しかし、結局受験したのは、最難関高校ではなく、お袋が最初に言った難関高だった。

 お袋も学校の担任も、最難関高校を受けさせたかった様だが、一番レベルの高い高校で、へわ勉強に付いて行けなくなるよりも、1つランクを下げて、そこで上位を目指したいと言う俺の希望を優先して貰った。

 本当のところは、難関高の軽音部が有名で、最難関高校には、軽音部が無かったと言うのが理由なのだが、それは誰にも言って無い。



 かくして、難関高に合格したおれは、入学してすぐに軽音部に入る手続きをしたのだった。

 この軽音部には、ライブハウスで定期的に演奏している3年生のバンドが在籍していて、部室は、その先輩のバンドの専用スタジオとなっていて、先輩達のファンが練習を見にきてキャーキャー言って、他の部員が練習出来る環境ではなかったので、顧問の教師に掛け合い、

音を鳴らせる場所を提供して貰う事にした。

 結局、新たな部室を提供して貰えなかったので、誰も使っていない屋上の使用許可を無理矢理だが取る事が出来たので、3年のバンドメンバー以外は、雨の日以外、屋上で練習する事になった。


 屋上で練習する様になって、暫くすると、2年の先輩と1年の女子が俺のギターを見て不思議そうにしていた。


「お前のストラト変わってるなぁ、フィンガーボード抉れてるじゃん。」


「ああ、スキャロプトです。」


「スキャロプトって何?」


「こんな風に抉れてるやつです、音の表情が豊かになって面白いですよ。」


「じゃあ、何か弾いてみて。」


 先輩のリクエストに応えて、椅子代わりにしていたアンプのボリュームを上げて、エフェクターのペダルを踏むと、


「お前何で、同じオーバードライブを2個繋げてるの?」


 いちいち質問の多い先輩だなぁと思いながら、


「この方が、微妙に甘く音が歪んですきなんですよ。」


「ついでに聞くけど、ギターに並んだ3つのスイッチは?」


「ああ、このトグルスイッチですか?このストラトのピックアップシングルに見えるけどハムバッカーなんですよ、だから、一基づつ上から、オフ、シングル、ハムバッカーと配線の切り替えが出来る様にしてあります。」


「へ~、君のギターってビックリ箱みたいだね。」


 今まで何も喋らなかった1年の女子が楽しそうに覗き込みながら話し掛けてきた。


「じゃあ、弾きますよ!」


 と言って、レインボーのディフィカル・トゥ・ケアと言う曲(実はヴェートーベンの第9)を奏でた。

 アンプのボリュームの結構上げていたので、離れた場所で練習していた人達まで近くに寄って来て、俺の演奏に耳を傾けてくれていた。

 思えば、家でばかり弾いていたので、人に聞かせるのは、これが初めてだった。

 演奏が終わると、十数人程の人数の観客から拍手を貰い凄く気分が良かった。

 そして、口々に、良かった!凄かった!ムッチャ上手いやん!とか、3年のギタリストより上手いとか言われ、セッションしようと、同じ1年のベースの広瀬君が言ってきた。


「レインボーとディープパープルなら、俺も知ってるし!」


 と言われ、スモーク・オン・ザ・ウォーターとか、有名な曲を5~6曲2人で演奏した。

 演奏が終わって、ハッキリ言って気分は最高だった、広瀬君は、


「スゲェ!ハイウェイ・スターのソロ、ムッチャ余裕で流してたじゃん、もっと早く弾けるじゃないのか?」


「まぁ、あと少しくらいなら、広瀬君もCDに併せてるぐらいに、弾きやすかったよ、リズムキープ完璧だね。」


「お前って、ゆかりって、言うんだろ?だからパープル?(笑)」


「ハハハ(笑)親父がパープルファンで、俺に紫って名前付けたんだよ、レインボーやパープル好きなのと、ギターは、親父の影響なんだ(笑)」


「俺も親父が、パープルやツェッペリンのファンで、親父のコレクション聞いて、楽器始めたんだけど、ハイウェイ・スターの早弾きでギターを諦めてベースにしたんだ(笑)」


「俺達、似た者同士かもな(笑)」


「なぁ!それよりバンドでもセッションでもいいから、組まないか?先ずは、学祭ステージ目指して。」


「いいねぇ!そうなるとドラム叩ける奴が欲しいよね。

 捕まらなかったら、最悪、うちにマシン有るから打ち込みかな。」


「ドラム叩ける奴、紫のクラスに居るぜ、軽音には入ってくて、帰宅部の、樋口政宗つて、俺と同じ中学なんだ、中3の文化祭で一緒にステージに出たんだけど、無茶苦茶上手いって程じゃないけど、リズムキープはかなり正確だったよ。」


「じゃあ、明日にでも声かけてみるか!」


 と2人で盛り上がっていると、最初に先輩と声を掛けてきた女子が、


「盛り上がってるところ悪いんだけどヴォーカルどうするの?」


「パープルやレインボーなら、俺歌えるよ。」


「じゃあツェッペリンするなら、俺歌いたい!」


「じゃあ天国への階段やる?」


「もち!俺その曲やりたい!」


「じゃあ明日、打ち込んだマシン持って来るから早速併せてみる?」


「じゃあ、そんな感じでやるか!」


 ………………………………………




  そして翌日


 朝、教室に着くと、広瀬君が来ていた。

 俺の顔を見ると、ニコニコしながら寄って来て、


「樋口を誘いに来たんだけど、まだ来てないみたいだ。

 紫が、声を掛けるより、顔見知りの俺が声を掛けた方がいいかなって思ったんだ。」


「気を使わせて悪いな広瀬君。」


「あっ、これから俺の事は、泰士って呼んでくれないか、紫に君付けで呼ばれると、何かこそばゆいってか、変な感じなんだ。」


「分かった泰士。」


「あっ、政宗の奴来たぜ。」


 泰士が、樋口君に駆け寄り、話し始めると、樋口君は俺の方を見て、


「軽音部だろ、放課後見に行ってから、決めていいか?

 泰士の事は、大体解ってるけど、深町の事、全然知らないんだ、誰かと組むのは構わないけど、下手な奴とは組みたくないからな!」


「じゃあ、放課後、屋上に見に来てくれよ。」


「ああ、分かった。」


 じゃあ待ってるぜ!と泰士は、自分のクラスに帰って行った。

 泰士が出て行くのを見送ると、樋口君が俺の元に来て、


「深町も、大変たな、あいつ、中学の時文化祭で組んだんだけど、泰士以外のメンバーがボロボロで恥かいたんだよ、あいつ、少し出来る奴を見付けると、すぐに組みたがるから、奴が見付けたメンバーってあまり信用出来ないんだ。」


 そんな事を話していると、チャイムが鳴り、授業の時間になった。



 そして放課後になり、屋上では、泰士と俺でアンプ、リズムマシンのセッティングをして、樋口君を待った。

 樋口君が到着して、先ずは、ギターソロの曲を2曲、ラウ○ネスのエクスプローダー、短い曲だけど、早弾きとライトバンドのオンパレードで、ギター1本での演奏の割りに音の密度の高く、高難易度の曲、そして昨日に続いて、ディフィカル・トゥ・ケアの後は、泰士と2人で、天国への階段~ハイウェイ・スター~スモーク・オン・ザ・ウォーターと泰士と俺でヴォーカルを入れて3曲、続け様に行きたかったけど、1曲毎にマシンの曲を変えたりするので、俺的には少し白けてしまったが、概ねミスもなく終わらせた。

 演奏が終わると、軽音部の皆から、アンコールが起こり、樋口君が拍手しながら寄って来て、


「俺から、お願いする、一緒に組ませて欲しい、まさか深町が、こんなにスゲェーとは思わなかったよ。

 俺も、今から軽音部に入る!凄かった明日、ボロいドラム持って来るから併せようぜ、それから、深町、俺の事政宗って呼び捨てで構わないからな!」


「じゃあ、俺の事も(ゆかり)って呼んでくれよ。」


「お前、紫って、可愛い名前なんだな(笑)」


「ああ、親父が、パープルファンだったんでむらさきって書いてゆかりなんだよ(笑)」


「なんだよ、お前もか(笑)家の親父は、ラウ○ネスのファンで、名字が、樋口だから、名前、宗孝にされかけたんだけど、母親の猛反対にあっだけど、宗の字だけは譲らなかったらしく、この名前になったんだよね、だから、紫が、いきなりエクスプローダー()った時は、度肝抜かれたよ。

 しかし、お互い親に好き勝手な名前付けられたもんだな(笑)」


「ハハハ、まったくだ(笑)」


「深町君、アンコールお願い!」


 女の子達にせがまれてしまったので、泰士と相談して、女の子が知ってそうな少し古い日本のロックバンド、○-Japanの曲をギターとベースのツーピースで何曲かやったけど、演奏終了後、屋上には、軽音部員以外の生徒が20人程集まって拍手してくれていた。




 翌日、政宗は、父親の車に、シンプルな、ドラムセットを積んで投稿して来た。

 そのドラムセットは、俺と泰士と政宗の3人で、屋上の踊場に運び、放課後は、3人で初めて併せたのだが、政宗は、シンプルな、ドラムセットでも、圧倒的な存在感を感じさせるパワフルなドラミングを披露してくれた。

 本人曰く、中学の文化祭は、泰士以外のメンバーがシャバ過ぎて、半分ヤル気が無かったらしい。

 この日は、軽音の部室を独占している、3年の部員が取り巻きの女子生徒を連れて見に来ていたが、取り巻きの女子生徒が頻りに俺達の事を誉めていた事に気を悪くしたのか、「1年が、いちびった演奏してんじゃねぇ!」と悪態をついて帰って行った。

 ライブハウスで定期的に演奏しているので、天狗になっているのか、感じの悪い先輩だった。


 翌日の放課後、練習の為に屋上に行くと、政宗のバスドラのシェルが、カッターか何かで切り裂かれていた。

 多分、やったのは、十中八九3年の部員だと思うが証拠がない以上、こちらは何も出来ないが、泣き寝入りはしたくなかった。

 政宗は、どうせ昔ドラムを始めた時に、知り合いから、貰った安物だから、気にするなと言って、練習場所を変えようと言ってきた。

 政宗の家のガレージの一部がドラムの練習ブースになっていて、一応、防音にしてあるらしく、翌日から、放課後は、政宗の家に行く事になった。


 政宗の家で、練習を始めて1週間程経った頃、3年の部員が俺の所に来て、


「お前達、もう練習しないのか?」


 とニヤニヤしながら言ってきた。

 何も言い返さないでいると、


「お前、見処が有るから俺達のバンドに入らないか?」


 とふざけた事を言ってきたので、もうメンバー決まってますので、と御断りすると、


「お前程上手けりゃ、掛け持ちでもいいぜ。」


 と引き下がらないので、「多分、先輩達とは目指す処が違うので御断りします。」とキッパリ断ったら、


「後で吠え面かくなよ!」


 と、ドラマの悪役宜しく、小者的な捨て台詞を吐いて教室を後にした。

 近くでヒヤヒヤしながら見ていた政宗が、


「紫、お前、先輩相手に、一歩も引かないから、ビビったわ!

 どんな心臓してるんだよ。」


「多分だけど、政宗のバスドラのシェル切ったの3年の部員だと思うんだよね、俺さぁ楽器を大切に扱わない奴って、大嫌いなんだ、そんな奴等と一緒になんか()りたくないんだよ。

 俺のギターってさ、結構、綺麗に見えるだろ。」


「ああ、結構いじってて、紫の腕もだけど、あのギターって、良い音出すよなぁ、USAかと思ったらジャパンてぇのが、少し驚いたよ。」


「あれさ、親父のお下がりなんだよ。

 最初は、スキャロプトしてあるだけだったんだけど、折角、音の表情が豊かなスキャロプトフィンガーボードなんたから、更に色んなニュアンスの音を求めて、アッセンブリーをいじって、ピックアップを3基とも、ハムバッカーに変えたり、シングルとハムバッカーの切り替えが出来る様にしたりと、愛情持っていじったのがあのストラトキャスターなんだ。

 人に依っては、ノーマルを弾き込んで、ボディに好みの音を馴染ませるのが一番いいって奴も居るけど、俺は、そのギターのボディが持つ最大の性能ってか俺好みのの音を出せる様にしたいんだ、ギターって、そう言う物だって思ってるんだ。

 だから、楽器を故意に傷付ける奴は、許せないんだ!」


「お前、の熱いギター愛は、解ったけど、今日さぁ午後から、体育の授業有るだろ、ギター教室に置きっ放しにしてたら、3年に悪戯されたりしないか?」


「ヤバいね、それ、泰士の所に預けといたら大丈夫じゃない?」


「それが、良いかも。」



 そして、休み時間に、泰士のクラスにギターを持って行き、事情を話すと、


「ヤバい、俺のクラス移動教室なんだよ、てか、それなら俺のベースもヤバくねぇ?。」


「マジ?そりゃヤバいかも。」


「ああ!マジにヤバい。」


「仕方ない、俺、昼からフケるわ!」


「なら、3人でサボって練習しないのか?」


「いいねぇ!」


 俺達は、結局、昼まで授業を受けて政宗の家へと向かったのだが、在宅勤務の政宗の親父さんが家に居たので、サボった事がバレて説教を喰らう事になったのだが、理由を説明すると、一応、納得してもらえた。

 のだが、ここで政宗の親父さんに変な火が着いて、俺達の練習を見せろと言い出した。

 暫く練習を見ていた政宗の親父さんが、


「スキャロプトのストラトキャスターってリッチーモデルだよなぁ、昔、一緒にバンド組んでた1つ上の先輩で、スゲェ上手い深町って人がいて、その先輩のストラトが、それと同じ色のストラトキャスター使ってたんだよ、懐かしいなぁ。」


「エッ?僕の名前、深町紫って言うんですけど…………」


「エッ?君のお父さんの名前、もしかして深町良って名前?」


「はい、ソウデスガ……………ちなみにこのギターは親父のお下がりです。」


「悪い、ちょっとギター見せてくれるか?」


 政宗の親父さん、俺のギターを手に取ると、ボディの裏側を見て、


「間違いない、これ深町先輩のサブギターだわ。

 それにしても、いじってある割りに綺麗にしてるよなぁ、これって深町先輩が買ったの30年位前たぞ。」


「そんなに、古いギターなんですか?」


「ああ、それは、先輩が高校に入った時に始めて買ったエレキだよ、それまで、先輩は、クラシックギターやってたんだよ、で、高校に入ってすぐに俺の兄貴に誘われてバンド組んで、その時に買ったやつだよ、それ。」


「でも、よく判りましたね、親父のサブギターって。」


「ボルトオンプレートにR2って刻印有るだろ、その刻印、俺が打ったんだよ(笑)

 しかし、深町君、親父(せんぱい)より上手くないか?」


「いえ、早弾きとかは、俺の方が速いけど、チョーキングとか、ビブラートとかの表現力は、まだまだ親父には敵いませんよ。」


「そうなんだ、流石、先輩だな、俺は、先輩のギター聞いて、ギターを諦めたんだよ、この人には絶対に敵わないって思ったから。

 そんでもって、ドラム始めて、俺が持ってたギターを先輩に使って欲しくて、ただで渡したんだ、トーカイのレス・ポール結構高かったけど、俺は、これからドラム叩くんだ!って踏ん切り付ける為にな!」


「そのレス・ポールの色って、レモントロップですか?」


「ああ、トーカイで一番高いギターだ。」


「そのレス・ポール、今、俺が使ってます。

 あのボディ、無茶苦茶鳴きますよね。」


「そうか、今は君が使ってくれてるんだ、あれは、名器だろ(笑)」


「アーム使わない曲は、全部あれで弾いてます(笑)」


「今度、聞かせてくれるか?」


「勿論です!」


「おい、紫、家の親父とも、友達になったのか?」


「友達?…………なんですか?」


「ハハハ!ああ、友達だ(笑)

 今度、いや、今日、練習の後、送ってやる、深町君のお父さんは、何時頃に帰って来るんだ?」


「いつも7時頃ですが、」


「よし、その頃に送ってやる、先輩に会いに行くぞ(笑)」



 こんな感じで、最初はスリーピースで僕達のバンドは、始動し始めた。

 そして、その夜政宗と政宗の親父さん名前は、政孝さんと言うらしい。

 泰士を送った後、政宗と政孝さんは、俺の家に来て俺の親父と俺が貰ったレス・ポールとの再会を果たした。


 親父と政孝さんは、俺が弾くレス・ポールの旋律を聴きながら、再会を祝って遅くまで呑んでいた、政宗は、迎えに来たお袋さんの車で先に帰って行き、政孝さんは、深夜迄呑んで、運転代行業者を呼んで帰って行った。

 翌朝、親父は、飲み過ぎた、と頭を抱えていた。

 学校で政宗に聞くと、政孝さんは、朝、車の中で発見され奥さんに、こっぴどく怒られていたらしい。

 何にしろ、収穫が多く楽しい1日だった。



 昨夜の事を思い出していると、政宗が言った不穏な一言を、思い出した。


「バンドの名前なんだけど、(ゆかり)バンドにしない?」


 いや、やめて欲しい。


 泰士が、反対する事を祈ろう。

 

 

 週1で10話以内の予定です。


 バンドのメンバーの腕は、御都合主義丸出しで紫以下殆どのメンバーが水準以上での登場です。

 


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