あーしたてんきにになぁれ!
「あーしたてんきになぁれ!」
男の子はそう叫ぶと、空に向かって足を蹴り上げて靴を飛ばしました。その靴は真っ暗な空をくるくると回り、地面に落ちると底を上に向けて止まりました。
「あーあ、明日もおてんと様は見れないのかー……」
男の子は不満げに呟きました。それを見ていた大人たちは、悲しそうな表情で空を見上げました。空はただただ真っ暗なだけで、そこにおてんと様の姿はありませんでした。
──むかしむかし、空にはおてんと様と呼ばれるとっても明るいお星様がありました。おてんと様は、空から暖かい光で私たちを見守ってくれていて、おてんと様のいる空は綺麗な青色だったそうです。
ある日突然、おてんと様は現れなくなってしまいました。たくさんの雲がおてんと様を隠してしまったのです。それからというもの、どれだけ時間が経っても空が明るく輝くことはなくなってしまいました。
おてんと様がいなくなったことで、食べるためのお米や動物たちが育たなくなってしまい、みんなはお腹がすいて困っていました。そして、お腹がすいた大人たちはついに食べ物を取り合って喧嘩を始めてしまったのです。たくさんの人が怪我をして、たくさんのお家が燃えてしまいました。
おてんと様が帰ってくれば、きっと大人たちも喧嘩をやめてくれるはずです。男の子は、今日もおてんと様を探しに靴を飛ばします。
「あーしたてんきになぁれ!」