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第二十四話 小さい戦争

 ノービスの森北部、ここにゴブリンの上位種達は居る。ゴブリンメイジの変異種が精霊石の確保に失敗し妖精種の血を失った彼らはエヴァンタイユに攻め入ろうと考えていた。すでにノービスの森の南部に集めた下位のゴブリンを送り込み。別のゴブリンメイジの魔法によって様子を伺っていた。

 目的はあくまでも妖精種の血液を確保し惑わしの結界を突破することにあるため上位種達は下位のゴブリン達と戦うであろう妖精種の出現を待っているのだ。


『妖精まだこない?』


『まだ人間も出てきてない。焦る必要ない』


 ゴブリンソルジャーはもたもたしているゴブリンメイジに苛々していた。下位のゴブリンはほとんど知能を持っていないためホブゴブリン達に率いさせている。それに魔法で指示を出しているのがゴブリンメイジなのだ。


『早くしろ。雑魚は死んでもいい』


『わかった。森にいるゴブリン全部出す』


 そう言ってゴブリンメイジは集めたゴブリン約2000体を一斉に街へと向けるのだった。





 オールが北門に到着した時にはもう兵士たちがゴブリンと戦闘していた。なんとか街に入り込めないよう北門周辺で抑え込めているようだ。外壁の上では兵士たちがクロスボウを使ってゴブリンを攻撃しているようだ。

 北門付近だけでも溢れんばかりの数が押し寄せてきている。外壁の外にどれだけの数がいるのかオールには想像つがつかない。


「遠距離攻撃できる者は外壁まで上がってきてくれ!」


 外壁の上で指示を出していた上官らしき兵士が集まってきた冒険者に大声でそう呼びかける。オールは指示に従い、城壁に登るための梯子探しそちらの方に向かう。

 城壁に登り壁の外側を見渡すとそこには1000体以上のゴブリンが見える。さらに森の中からぞろぞろと出てき続けている。


「この量じゃ泉の園へ行けるまでどのくらいかかるか……」


 この場にいる戦闘員は多く見積もっても600人程である。いくら地の利があるとはいえ殲滅するには時間がかかるだろう。


「お、おい……ホブゴブリンがいるぞ……!」

 外壁の上にいる兵士からそんな言葉が聞こえてくる。ホブゴブリンはランクDの魔物だ。脅威度Fの街にいる一介の兵士に相手できるものではない。その言葉を聞いた周りの兵士達は一様に指揮を下げてしまう。

 オールはゴブリンの上位種の怖さを身を以て分かっているが今はただ弓に矢を番て黙々と射る。この状況でいち早く援軍を連れて泉の園に行くにはそうするしかないのだ。


「まるで小さな戦争のようだ……」


 誰かがそう言った。目の前の争いは確かに規模の小さい戦争のようだ。



 オールが北門でゴブリンの軍勢と対峙してから約1時間が過ぎた。未だ目に見えてゴブリンが減っているようには思えない。

 日は完全に落ちてしまい兵士達の矢の精度が落ちてきているようだ。オールには[暗視]のSkillがあるためそれほど関係ないが討伐速度が明らかに落ちているのが分かる。

 NPC達は無理をせず北門を抑えているため死者は出ていないようだが、プレイヤーは違う目先の欲に目が眩んだのか飛び出して行った者達が何人もやられている。ここで初めて分かったのはプレイヤーがデスすると数分したいが残り、その後地面に吸い込まれていくということだけだ。

 ここでオールが気になったのはデスしたプレイヤーにホブゴブリンが集まり死体を漁っていたのだ。持っていた武器を奪っているわけではなく、ただ死体を切りつけて何かをしていることしか分からない。


「そうか、血液!?」


 オールは思わず声を上げる。なぜ、唐突にこんなイベントが発生したのか、ゴブリンメイジがなぜ泉の園を襲ったのかは分からないがゴブリンの狙いは泉の園に張られている惑わしの結界を抜けることなのではないのだろうか。そう考えたのである。


「そうだとしたら……まずい……!」


 デスしたプレイヤーの中にはエルフと思わしき者がいたことをオールは思い出し焦る。しかし、この状況下でどうやって泉の園へ向かえばいいのか分からない。北門から出ようにもゴブリン達の数が多すぎる。インビジブルフェアリークロークを使ったところであの数を抜けるのは不可能であろう。そう、オールが思考していると通話が掛かってくる。オールに通話を掛けることができるのはエルム一人しかいないため迷わずメニューウィンドウを開き応答する。


「エルムさん? そっちは大丈夫ですか!?」


『嬢ちゃんすまねぇ、やばそうだ。水の嬢ちゃんがなんとかしてくれてるがゴブリンどもが何匹か入り込んできてやがる。なんとか応援を……おいありゃなんだ!? 水の嬢ちゃん危ねぇ!?……』


 通話が途切れてしまう。オールは顔を青くし何も考えずに外套を羽織り城壁から飛び降りるのだった。


 飛び降りたオールはゴブリンの頭を踏んで衝撃を緩和し着地した。外套の効果が無くなるかもしれないとヒヤヒヤしたが周りのゴブリン達はオールの存在に気付いていない。どうやら攻撃したことになっていないようだ。

 しかし、飛び降りたはいいもののここからどうすればいいかオールは分からなくなる。辺りを見回すと東側はゴブリンが少ないことに気付き迂回して森を目指すことにする。

 森の中に入ると総出で街を攻撃しているからかゴブリンが見当たらなくなった。ゴブリンを警戒せずに行けるのなら気が楽だとオールは全速力で走り出す。

 泉の園まであと少しというところで何かが見えてくる。


「あれは……ゴブリンメイジ!?」


 以前戦った変異種と雰囲気が違うが杖を持ちローブをまとったその姿はまさしくゴブリンメイジだった。

読んでいただいてありがとうございます。

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