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第二十二話 急襲

 エルムを待ち始めてから1時間が経とうとしていた。泉の園に夕焼け色の光が差し込んで来ている。オールが初めて惑わしの結界によって彷徨ったのはおよそ30分ほどだったため、そろそろ待ちきれなくなって来ている。


「さすがに時間かかりすぎじゃない?」


『そうね、やっぱり血液を持っていても惑わしの結界は抜けられないってことかしらね』


 オールはさすがにまずいと思いエルムを探そうと泉の園から出ようとする。その時目の前に人影が見えてくる。


「あ、あれは!?」


 目の前に現れたのはエルムだった。しかし、防具はボロボロで体は傷だらけだ。


「な、何があったんですか、エルムさん!?」


 エルムはオールの目の前に倒れ込み息絶え絶えだ。


「ご、ゴブリンだ……ゴブリンが襲って来た」


「まさか……!?」


 ライラが危惧していたことが起こってしまったのだ。それも惑わしの結界によって離れ離れになった状況でだ。

 オールはファラに許しをもらい泉の園の回復草をエルムに食べさせる。ひどかった顔色はみるみるうちに元に戻り、傷も治り始める。


『まさか、妖精種の血液を持っていれば結界の中に入れるなんて……襲って来たゴブリンたちが持っていたらここも危険だわ!』


「でも、逃げるにも周りはゴブリンたちに囲まれてるかもしれないわよ?」


 ファラはこの場所から離れることができない。さらにエルムは負傷しており動かすことはできない。ファラとオールはどうすればいいか思案する。数秒経ったところでファラがポンっと手を叩く。


『そうだ! あなたが前に私を驚かせて来た外套を使って助けを呼んでくればいいじゃない!』


 この状況で二人を置いて行くのは少々憚れるが、このまま泉の園にこもってしまうのは賢い選択ではない。オールは決意し意気揚々と立ち上がり、ファラの案を実行するため外套をInventoryから取り出し装備する。


「冒険者ギルドに応援要請してくる。エルムさんをお願いね」


『私の言葉は分からないだろうけど、なんとかやってみるわ』


 オールは外套のフードを被り駆け出した。




 泉の園の外には多くのゴブリンたちが徘徊していた。その見た目は以前オールが戦ったゴブリンメイジと似ているが、より小柄で身にまとっているものは腰布一枚とかなり貧弱そうである。


 オールがゴブリン達に気付かれないよう慎重に移動しているとゴブリンが騒いでいる声が聞こえてくる。木の裏からその方向を確認すると15mほど先で男女3人の冒険者が戦っていた。数で押されどう見ても冒険者達が劣勢である。ゴブリンの数は8体だ。

 オールはエルムとファラを待たせている状況で助けるべきか迷うが放っておくことができず、Inventoryからブロンズボウと矢を取り出しオールに一番近いゴブリンの頭に向けて矢を放つ。狙い通り後頭部に突き刺さり絶命する。

 インビジブルフェアリークロークの気配遮断効果は攻撃を放つと効果が消えてしまうため、冒険者達と戦っていなかった1体がオールに気付き、他のゴブリン達に知らせ残りの6体の内2体と最初に気づいた1体がオールに向かって来る。

 すぐさまオールはシルバーバーチロッドに持ち替え臨戦態勢に入る。


「ギギャアッ!!」


 初めに気づいたゴブリンが粗末な棍棒をオールに向けて振るってくるが、オールはそれをシルバーバーチロッドで弾き右斜め上方向から頭めがけてAssaultSkill[シャープネススラップ]を使い攻撃する。直撃したゴブリンは脳漿をぶちまけながら倒れ、後から追って来た2体はそれを見て後ずさる。


「ここっ!」


 その隙をオールは見逃さず左にいたゴブリンの頭を殴りつけ、勢いのまま右にいたゴブリンに蹴りを入れ吹き飛ばす。

 オールが冒険者3人の方を確認するとゴブリン4体に追い込まれて絶体絶命といった状態だった。吹き飛ばしたゴブリンは無視してそちらに駆け寄り、後ろからゴブリン達を杖で殴り引き剥がす。


「あなた達逃げるわよ!!」


 戦闘音を聞きつけたのか新手のゴブリンがどんどん集まって来たため、オールは逃げるという判断をした。冒険者達も依存はないようで一心不乱にオールの後を追って走る。

 森を抜けるとゴブリン達は急に動きを止め引き返していく。どうやら森を出ることはないようだ。

 肩で息をしながらもなんとか北門にたどり着いた4人は衛兵の前で座り込む。衛兵は怪訝そうな顔で問いかけてくる。


「どうした、お前達。何かあったのか?」


 オールはこうしている場合ではないと立ち上がり、冒険者ギルドに向かおうとする。


「あなた達起きたことを話してあげて! 私は冒険者ギルドに向かうから!」


 冒険者3人組が頷いたのを確認して、オールは再び走り出した。

 冒険者ギルドに着くとオールは真っ先にライラのいる受付に飛び込んだ。


「ライラさん大変です! ノービスの森にゴブリン達が……」


 オールが状況を説明するとライラは動揺しながらも急いで受付の奥へ消えていく。しばらくすると浮かない表情で戻ってくる。


「キャメル支部長に話したところ、西区画と東区画の支部長と相談すると言われました……すいません、もう少し待ってくれませんか……?」


 ライラの言葉にオールはぎゅっと拳を握る。応援を要請したところですぐに対応できるわけではないのだ。現実世界でも災害時などに起こったことにすぐ対応できるわけではない。オールは受付を離れライラの報告を待つことにする。


 やきもきしながら佇んでいると急にオールの頭に奇妙ないつものアナウンスとは違う声が流れてくる。


【エヴァンタイユの街にいらっしゃるプレイヤーの皆様こんにちは。私はこの世界をまとめる6女神のうち事象を司る者エルギネスと申します】


 女神リーベと同じような声、話し方、文言で女神エルギネスはプレイヤーに語りかけるのだ。




読んでいただいてありがとうございます。

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