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第二十話 酒と料理

評価していただいた方、誤字報告をしていただいた方誠にありがとうございます。



 オールとエルムは中央区画の冒険者ギルドへ向かっていた。


「悪かったな嬢ちゃん。まさかあんなことになるとわよ……」


「大丈夫ですよ。なんだかんだ楽しかったですし」


 オールはなんだかんだで戦いが好きだ。先ほどの戦闘を望んでいたわけではないが、結果的に自身がどれほど戦えるのか把握できた。さらに、新たなAssaultSkillも習得できたのだから御の字である。


「俺も色んなVRゲームをやってきたがよ、あんな戦い方するやつ滅多に見ないぜ。身のこなしといい現実で武道かなんかやってんのか?」


「ええまぁ、一応ですが…」


 今回の戦闘ではオールが得意とする剣、槍、合気道の技は一切使っていないのだが体の動かし方や視線の向け方などでエルムはそう予想したのだ。エルムの洞察力には目を見張るものがある。


「やっぱりかぁ! ゲームの中でも武道かやスポーツ選手ってのはなんていうか動きにキレがあるんだよな……」


 あれこれ話しているうちに冒険者ギルドが見えて来る。ここに来るまでに漆黒の空が赤く色づき始めている。

 二人は冒険者ギルドに入りオールの案内でライラがいつもいる受付に並ぼうとした。しかし、そこに居たのは別の受け付け係だった。


「あのぉ、ライラさんは居ますか?」


「ライラさんですか? 彼女は今非番の時間帯なのでいらっしゃいませんよ」


 オールは驚いた。NPCが休息をとるとは思ってもいなかったからである。


「彼女が戻られるのは大体お昼過ぎ頃ですね。代わりに私がご対応いたしましょうか?」


「い、いえ。大丈夫です」


 キャメルからライラを通してくれと言われていたので、オールは断りその場を去った。エルムは唯々オールについて行く。


「すいません。まさか、NPCが居ないなんて……」



「しょうがねぇさ。俺もNPCが休息をとると知った時にゃ驚いたもんさ」


 エルムはこのことを知っていたようで澄ました顔をしている。


「時間大丈夫ですか?」


 現在の現実時間は深夜2時だ。この世界の時間はだいたい朝の6時で、ライラが来る時間まで1時間半ほど待たなければならない。


「嬢ちゃんこそ大丈夫なのか? 俺ぁ休みだから大丈夫だけどよ」


「わ、私も大丈夫です」


「そぉかい、だったら時間つぶしに飯でも食いに行くか? 良い場所知ってんだよ」


 オールはQuestに言ってもいいのではと考えたが、丁度空腹を感じはじめたのでエルムの意見に賛成する。

 エルムに連れられて向かったのは中央区画にある商業区域の酒場だった。外装はそこまで綺麗ではないが風情があるまさにファンタジー世界の酒場といった様相だ。

 中に入ると顔を赤くしたNPCやプレイヤー達が数人見える。朝方だからか数は多くない。

 二人は仕切りのある奥の席に案内されそこに座る。


「このゲームの酒はすごいぜぇ! ちゃんとした酔いを感じれるんだからなぁ、嬢ちゃんも飲むか?」


 今までのゲームの酒は高揚感を与えてはくれるが酒にようといった感覚ではなかった。オールは本当に酔えるのか試したくなり一杯だけ飲むことにする。


「じゃあ一杯だけ……」


 エルムは店員を呼び自分の分と合わせて二つエールを、他にもエルムが薦める料理をいくつか注文した。

 注文した品は数分で配膳され、その見た目は現実のものと遜色ない物だった。二人は乾杯してからまずエールを口にする。

 エールの喉越し、微細な苦味の表現は素晴らしいものだ。オールは現実ではあまりビール系の酒は得意でないためあまり飲まないがこのエールには感服してしまう。

 

「くぅあぁっ! やっぱ、うめぇ!」


 エルムの豪快な飲みっぷりにオールは若干引いてしまうが唸りたい気持ちも理解できてしまうほどの美味さだ。

 次にどんな種類の魚かは分からないが魚のフライを食べてみる。サクサクの食感と身が崩れる感触、ソースの味と絶妙な塩加減に思わずオールの表情が綻んでしまう。他の焼き鳥や野菜炒めなども現実の飲食店で出されているぐらいのクオリティだ。


「なんですか、この世界の食べ物は全部こんな感じなんですか!?」


 思い返してみればこの世界で初めて食べたフランクフルトもゲームの中とは思えないものだった。あまりにも自然だったためその時は何も考えずに食べていたが改めてオールはこのゲームのリアルさを実感させられた。




 特に会話もなく黙々と二人は料理を食べ進め、数十分で完食してしまった。料理を食べ終わった後に襲って来る酔いによる高揚感と頰の暑くなる感覚まで表現されている。


「はぁー、食った食った。まだ、時間があるな。なんかするか?」


「そうですね、お願いするのは討伐Questじゃないとはいえ害獣や魔物が出ますしお互いの戦い方の話をしませんか?」


 エルムは討伐Questで野犬すら相手にできなかったと言っていた。道場に通って槌SkillのランクをEまであげた今どうなのかは分からないが、おそらくオールが援護することになる。そのためにもお互いの戦闘スタイルやどんな基本武器のWeaponSkillを持っているのか話した方が良いだろう。


「確かにな、流石に今は害獣程度ならなんとかなるが数で押されちまったら嬢ちゃんを頼らざるをえねぇしな」


 エルムの同意を得たオールは先に自分の戦闘スタイルを話した。全ての基本武器のWeaponSkillをつかえることや[クイックチェンジ]を使って武器を入れ替えながら戦うことなど話せることはすべて伝えた。


「まさか全部使えるとは思ってもいなかったぜ……俺が使えるのは槌と盾だけだ、それでも周りの奴らには羨まれたってのに……」


「女神様からは今の所私だけだって言われました」


「本当かよ……他のゲームでいうユニークスキルみたいだな」


 最早お決まりのやり取りだが、エルムの言う通り10万人近く居るプレイヤーの中で未だオールだけと言うのはゲーム内で一人しか使うことのできないスキル、ユニークスキルに近しいものがあるだろう。

 このゲームはプレイヤーの公平性が全くない。才能という不確かなものを基準としてシステムが成り立っているからである。だからこそより現実に近い人間性といったものの表現をすることができるのだ。


「俺はさっきも言ったが槌と盾を使う。VITが最初から高かったし他のゲームでもタンクをしてたからそう言う戦い方だって思ってくれりゃあ良い」


 オールはイメージ通りだなと思いつつ最初からと言う言葉が引っかかった。


「ちょっと聞きづらいんですけど、初期ステータスってどんな感じでした?」


「ん? 初期ステータスならHP、STR、VITがDでそれ以外はFだったな」


 オールの初期のステータスは全てFだった。そのため初期ステータスは他のプレイヤー達と同じだと考えていたのだ。


「私は全部Fだったんです……」


「ステータスまで才能によって違うってことかもな……」


 そうこうしているうちにライラが仕事に出る昼過ぎごろになったため二人は冒険者ギルドに向かうのだった。

お陰様で4000pv、1000ユニークを達成いたしました。

これからも頑張りますので、応援のほどよろしくお願いいたします。


読んでいただいてありがとうございます。

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