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第十八話 AssaultSkill

 オールは道場の師範代なる人物の元までエルムに案内された。師範代といっても道着を着た人物ではなく、鉛色のフルプレートメイルを身に纏った2m近い身長の男性だった。


「ハンマ師範代! 新人を連れて来たぜ!」


 師範代をエルムはハンマと呼んだ、おそらくそれが名前なのだろう。 


「エルム殿、そんな華奢な小娘が新人なのか? 槌術の道を歩むものは勇ましき者でなければならないのだぞ?」


 師範代から発せられる声は野太くオールは少し気圧されてしまう。その声のイメージ通りお堅い人物なようだ。


「それがよ、この嬢ちゃんSkillランクEらしいんだよ」


「なに? 道場に通うことなくランクを上げただと?」


 師範代は信じられないといった表情を兜の間から見せ、担いでいた鎧と同じ鉛色のオールの身長程あろうハンマーを地面に叩きつけ威圧してくる。


「ならば、我輩とひと勝負していただこう。実力の程を見せてもらおうではないか!」


「え!??」


 急に宣戦布告されたじろぐオール。すると、エルムがオールに近付き耳打ちしてくる。


「大丈夫だ嬢ちゃん、ここにいる連中は皆一度は師範代と勝負してる。それに師範代のSkillランクはああ見えてDだ、意外となんとかなるかもしれないぜ?」


 オールは師範代の見た目からして、かなり高いランクだと思い込んでいた。


「ルールは簡単、卑劣な手を使わなければ特に禁止事項はない。勝敗は戦闘不能になるかどちらかが負けを認めた場合とする」


 他の武器と複合して戦えばなんとかなるのではと考えるオールだが、そもそも戦う理由が無いため拒否権がないのか尋ねる。


「あのぉ、この勝負受けなくても良いんですか?」


「何をいっておる!! 槌術を嗜む者が一度受けた勝負を降りると言うのか? 失礼にもほどがある!」


 そもそも受けた覚えが無いのだが、ここまで言われてしまうとオールは一泡吹かせたいと思ってしまう。


「わかりました、その勝負受けます。どうなっても知りませんからね!」


 師範代は少し卑下た目をオールに向けフッと鼻で笑うのだった。




 師範代が闘技場の真ん中へ行きパンパンッと手を叩くと槌を振るっていたプレイヤーたちが手を止め注目する。


「今から我輩がこの小娘と勝負する! 場所を開けてもらおう!」


 師範代がそう言うとプレイヤー達は面白そうだ、と呟きながら訓練場を囲むように中心を開けて広がっていく。

 エルムに促されオールは前へ進み出てからInventoryからブロンズハンマーと願いの盾を取り出す。願いの盾をこんなところで使うことになるとオールは思っていなかったが、ハンマーだけだと不安だったため背に腹は変えられない。


「むむっ、お主盾術まで使えるのか?」


「ルール上問題ないですよね?」


「ふ、ふん。まぁいい、盾を使おうが我輩に勝てるはずが無いのだからな!」


 お互い距離を取りつつ構えを取り合図を待つ。


「勝負、始めぇええ!!」


 エルムの合図で師範代がオールに向かって走り出す。

 オールは唖然とした。なぜなら師範代の動きがあまりにも遅いのだ。ノービスの森で出現する野犬よりも遅い。オールは迷わず師範代の側面を取ろうと駆け出し、槌のAssaultSkill[ヘビィストライク]を発動し師範代の左肩へハンマーを真上から叩きつける。


「な、なにぃ!?」


 ガキンッという金属音とともに師範代が情けない声を上げる。

 流石にフルプレートメイルの防御力が高いからか肩部分を凹ませることしかできなかった。しかし、内側にダメージが無かったわけではないようで兜越しでも苦悶の表情を浮かべていることがわかる。


「き、貴様ぁっ!」

 

 師範代が水平にハンマーを振るうがオールは軽々とバックステップで躱してしまう。


「これなら盾無しでも行けそうだな…」


 そう言ってオールは盾をInventoryに仕舞う。それを見た師範代は激昂しハンマーを高々と振り上げオールに向かって猛進する。


「舐めおって! [グランウドクエイク]っ!!」


 師範代の持つハンマーが銀色のエフェクトを帯びる。なぜか師範代はオールから数m離れたところで急制動し、ハンマーを地面に叩きつける。

 オールの足元がグラグラと足腰が立たなくなるほど揺れる。思わずブロンズハンマーの頭を地面につけ杖代わりにし自身の体を支えてしまう。


「甘いわっ!!」


 その隙をついて師範代はオールにハンマーを叩きつける。


「ぐあ゛っ」


 とてつもない衝撃でオールは吹き飛ばされてしまう。地面をゴロゴロと転がり止まった頃に不快感が襲ってくる。しかし、衝撃は物凄かったがゴブリンメイジから受けた一撃ほどのダメージは感じない。


「なに!? 今の一撃を受けて立上れるというのか!?」


 オールは立ち上がると師範代と同じようにブロンズハンマーを高々と掲げ加速し始める。

 なぜかオールは師範代が先ほど使ったAssaultSkill[グラウンドクエイク]が使えるような気がした。

 AssaultSkillは指南してもらうか、自身で技と呼べるレベルの攻撃を放つことで習得できる。オールはチュートリアルの際、マネキンの放つAssaultSkillを真似てそれを習得した。つまり、先程師範代が放ったAssaultSkillを真似することが指南を受けることと同義ではないか、そうオールは考えたのだ。


「その動きは我輩の!?」


 オールの持つエフェクトを帯びたブロンズハンマーが地面に叩きつけられる直前、師範代は逃げようと四肢を動かそうとしたがもう遅かった。


「[グラウンドクエイク]!!」


 オールの掛け声とともに叩きつけられたハンマーは師範代の足元に揺れを発生させる。オールは地面に叩きつけた勢いを利用して前宙し、持っていたブロンズハンマーを[クイックチェンジ]を使ってシルバーバーチロッドに持ち替える。バランスを崩している師範代の脳天めがけて前宙の遠心力を利用した一撃をシルバーバーチロッドで放つ。


「ぐぅはぁっ」


 師範代はなす術なく攻撃を受け泡を吹いて膝をつき倒れるのだった。その瞬間、見ていたプレイヤー達から歓声が沸き起こる。


【AssaultSkill[グラウンドクエイク]を修得しました】


 歓声の中に聞こえるアナウンスはオールにとって心地よいものだった。

読んでいただいてありがとうございます。

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