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第十五話 忌まわしき記憶

『君さあ、言われたことを何でも卒なくこなせるのはいいんだけどね。こちらとしては何か尖ったものが欲しいんだよね』


『聞いた? あの子大手不動産会社ご令嬢らしいよ?』

『マジで? その割には言われたことしかできないよね?』

『ホントそれ! 雑用とか全部任せちゃえばいいんじゃない?』


『私何でもできますだってさ。調子乗んなよって感じ』

『何でも並みにでしょ? 才能ないんだから言われたことだけやってろっつの』


『あのねぇ、頑張ってくれるのはいいんだけど他の子の仕事全部やるのやめてくれる? 周りのモチベーションが下がっちゃうんだよね』


『俺より年上だからって指図するんじゃねぇ。才能もない愚図なんだからよぉ』


『誰に向かって口を聞いているか分かっているのかね? 君のような才能のない人間いくらでも変えがいるんだからな!』


『あの子部長に文句言ったらしいよ? やばくね?』

『才能のかけらもないのにね。この会社からいなくなればいいのに』


『お嬢様だからって調子乗んなよ! ずぶ濡れになって少しは反省しな!』

『ウケる、中学生のイジメみたいじゃん。アハハハハッ』



才能、才能、才能、才能………… 才能があればこんなことにはならなかったのかな……?


才能が欲しい。




「おい! おい嬢ちゃん聞いてるのか? おい!?」


 ハッと店主の言葉で意識が引き戻される。今何が起こったのかオールには全く理解できなかった。現実世界でも起きたことのない記憶のフラッシュバックに仮想世界の体がビクビクと震えている。


「おい、大丈夫かよ?」


「す、すみません大丈夫です!」


 店主はオールの冷や汗を流している様を見て心配そうな顔をしている。


「そ、そうか… ならいいんだけどよ」


「ごめんなさい。何の話してましたっけ?」


「何言ってんだ、願いの盾の話だよ」


「そ、そうでした」


 つい先刻していた話が何なのか一瞬忘れてしまうほど強烈なフラッシュバックだった。どれもこれも思い出したくもな記憶、忌まわしき会社勤務時代の記憶だ。


「いやぁビックリしたぜ、急に願いの盾が光ったと思ったら嬢ちゃんが虚ろな目をし始めるからよ」


「え、この盾光ったんですか?」


 どうやら願いの盾がオールが意識を一瞬離したときに光っていたようだ。オールは先ほどのフラッシュバックはこの盾が原因なのではと思ってしまう。


「おうよ! 実はなこの盾はとある人物から貰ったもんなんだよ。そいつから盾が光ったら教えてくれって言われててよ。まさか嬢ちゃんが光らせるとわな!」


「私が光らせたとはどういうことですか?」


「なんでもよ、聞いた話じゃそいつは持ち主が現れた時に光るらしいのよ。つまり、この店には今俺と嬢ちゃんしかいねぇから結果的に嬢ちゃんが光らせたってことになるわけよ」


「な、なるほど…?」


「ってことで嬢ちゃんこいつを貰ってくれ。預かりもんだから売ることもできねぇしどうしたもんかと思ってたとこなんだよ」


 そう言って店主は額縁から盾を取り出しオールに渡そうとする。しかし、オールとしては先程のこともあり正直言って貰い受けたくなかった。


「こ、困りますよ! だいたい預かりものなのに勝手に渡しちゃっていいんですか?」


「いいんだよ。そいつには本当の持ち主を見つけたら必ず渡してくれって言われてるんだからな。むしろ貰ってくれなきゃ困るってもんだぜ」


 そこまで言われて言い返す言葉が見つからなくなりオールは渋々受け取る。新しい盾が欲しかったことは事実なので前向きに考えることにするのだった。


「さて、こいつのせいですっかり忘れちまいそうになってるが杖と外套の鑑定結果を話そうか」


 オールも危うく忘れそうになっていた。お願いしますと一言言ってから鑑定結果に耳を傾ける。

「じゃあ、まずはシルバーバーチロッドからだ。こいつは攻撃力はCランクだ。次に付与されてる効果だが、火属性魔法に補正Bだな。全くなかなかのもんだぜ」


 装備品には攻撃力や防御力といったプレイヤーの持つステータスとはまた異なるステータスを持っている。また、特定のアイテムには特殊効果や補正なども存在するのだ。

 当然オールはこのことを知らない。だがどんなゲームにも装備品等のアイテムにはそういったものが存在しているため予想はしていた。


「で、こっちのインビジブルフェアリークロークだがこの杖よりもやばい代物だぜ。防御力のランクはEだが、この装備に対する魔法への完全耐性が付いてる。つまり、この外套自体は魔法では一切傷つけることができないってこった。しかしながら魔法防御に関する表記はなかったから使用者へ耐性を与えるもんじゃない。ここがミソだな」


 魔法への完全耐性。これはゴブリンメイジがファラの上位魔法を受け、結果外套だけが無傷で残ったことから頷けるだろう。

 そもそも薄い外套なのだから防御力にオールは期待はしていなかったのだが、魔法が使用者に効いてしまうのは扱いづらくもある。


「さらに気配遮断の効果まで持ってる。素材は不明、俺が見たことない素材ってこったな」


 店主の顔は少し疲れているように見える。おそらくオールが持ち込んだものが思った以上に凄まじかったため気疲れしたのだろう。


「ありがとうございます。鑑定してくれただけでも十分なのに盾まで貰っちゃって…」


「いやぁ、こちらこそ久々に凄いもん見せて貰っていい刺激になったぜ! 盾はまぁ、押し付けたようなもんだからな…」


 鑑定結果を教えて貰った後、オールは店主に使わない装備があったら買い取ると言われたのでブロンズロッドと壊れたブロンズソード、ブロンズシールドを買い取って貰った。

 新しい剣を買うか迷ったがもう少しgifを貯めてからにしようと思い、店主に礼を言ってから武具屋を後にするのだった。


             

読んでいただいてありがとうございます。

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