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Epsode1-1 特別な転校生

Epsode1 最強の剣と最弱の心

———リカネル王国にある王立第三軍学校


「よーし、ホームルーム始めるぞー」

朝のホームルームが始まるチャイムが鳴り終わると同時に僕たちが所属している一年B組の担任が入ってきた。


女性の先生でかなりスタイルもいいが、噂によると最近彼氏と別れたらしい。七年も続いていたそうだが彼氏の浮気が発覚して別れたそうだ。

七年も続いた関係が切れたのだから少しは落ち込んでもいいと思うのだが、そんな雰囲気を全く感じさせない勢いで、いつも通りのホームルームを始めた。


「出席とるぞぉ」

出席確認なんか一人一人名前を呼ぶよりも、ぱっと見てわかるではないかと僕は思う。

かなり技術が進歩してきたのに、出席確認は手動でやっているのが謎だ。


「おい、聞いているのか」


誰かが呼ばれているのに返事をしていないようだ。いったい誰がそんな…


「お前だよ、絡宮篤斗(からみやあつと)。何をぼさっとしている、退学にするぞ」

「え?僕ですか?だってまだ数人しか呼ばれてないですよね…」

「第六部隊はこのクラスでは一番数字が小さいだろ?さらにお前は隊長。最初に呼ばれるに決まっているだろ!」

そうだった、第六部隊の隊長だったのだ。まだこの制度には慣れていないからなぁ。


「ぼさっとすんなよ篤斗!」

「隊長がそんなので大丈夫か?」

「朝から先生を怒らせないでくれよ~」


みんなからの声が聞こえる中、僕の隣の席の幼馴染から感じられるオーラがとても怖く、熱いものだった…

(また始まるのか…)


「また篤斗をばかにして…」

「落ち着いてって実乃里(みのり)、僕は何とも思ってないからさ…」


小声で会話をする中、僕の心の中は半分実乃里を説得することをあきらめている。

彼女はクラスメイトでもあり同じ部隊にも所属している新宮(しんぐう)実乃里(みのり)。僕の幼馴染である。


幼稚園から一緒で、僕がこの学校に行くのを勧めてくれたのも彼女である。すこし小柄だがスタイルはとてもよくクラスからモテてもおかしくはないはずなのだが、あまりモテない。その原因が僕だったりするのだけど…


「みんな静かにしろ。今日はいつもよりやることが多いんだ。無駄な時間は取りたくない」


先生がそう言うとクラスのみんなは黙った。

いつもならこのまま実乃里がクラスのみんなに怒って「仲のいいカップルだなぁ」「いつ結婚するんだよ??」などと冷やかされるのだが、先生がこれを止めるのは珍しい。本当に何か大切なことがあるんだな。


「時間が無くなった。出席確認は勝手にやっておくから次に進むぞ」


(本当にすみません。僕のせいで時間とってしまいました。)


声に出したらまた時間を取るかもしれないので心の中で謝っておく。

先生は教卓に両手をついて真剣な顔で話し始めた。


「今日は王立軍学校規定第二十二条第二項による学校長会議により決定された特例法により、このクラスに転校生が配属されることになった。」


教室にいる全員が困惑の声を上げ、近くの人同士で話を始める。

「篤斗、うちの学校って転校生の制度あったっけ?」

実乃里も困惑しているようだ。

「確かなかったはずだよ。でも第二十二条の内容は特例法に関する学校規定のはずだから、特別な人なんだろう。」


特例法が施行されるのは珍しい。聞いたところ過去三年間で特例法が施行されたことはないそうだ。そこまでして入る生徒がいるということは、


「どんな強者が入ってくるんだろう…」

すこしワクワクしている自分がそこにいた。強い人と戦うのは楽しい。


でも、この学校は強い部隊から順番に上のクラスに配属されているはずだ。入学した段階で一部隊六人ま

での部隊を作る。その舞台に所属しているメンバーの入学試験の結果と、入学直後の実技試験の結果により判断される個人(ソロ)ランクもとに部隊の順位を決め、クラスに配属されていく。


なので、特例法で入ってくる転校生はとても強いと考えるのでA組に入るのではないかと思われるが、実際B組に入ってくる。どういうことだ?


「みんな静かにしろ。転校生が入ってくるぞ」


先生の発言と同時に教室の扉があき、一人の少女が入ってきた。眼鏡をかけており髪はきれいな金色のストレート。転校初日で緊張しているのか、顔がうつむいている。


「転校生、自己紹介をしろ」


先生の声に少し驚いたのか、体を少し震わせて不安そうに周囲を見渡した後、少女は言葉を紡ぎ始めた。


「は、初めまして…。私は、月野宮友菜(つきのみやゆうな)といいます。よ、よろしくです…」


クラスからは軽めの拍手が送られる。

人を見た目で判断するのは悪いことだとわかっているのだが、弱そうにしか見えない。これで強かったりしたら逆に怖い。

ただ、戦いになると目の色が変わる人もいるから断定はできない。


「本日から彼女、月野宮友菜は正式に王立第三軍学校一年B組の所属を認める。部隊は第十部隊への所属となる。みんな、なかよくしてやってくれ」


——————だ、第十部隊??

おかしい。第十部隊はこのクラスの中では一番弱い部隊だ。

しかも、ここ数日のランキング戦でC組の部隊に敗北してランキングが下がったばかりだ。


すると突然第十部隊の隊長が勢いよく立ち上がった。

「な、なんで俺たちの部隊に入るんですか??特例法で入った転校生がこんな弱小部隊に入るのはかわいそうです。ほかの部隊に入れてあげてください!」


確かに彼の発言はもっともだ。

それか、彼女が第十部隊に入る特別な理由でもあるのか…

彼女は彼の発言で少し顔が変わった。おびえていたのだ。


「何も問題はない。」

先生は大きな声で、真剣な顔で言った。



「なぜなら彼女の個人ランクはF。この学園内では最低ランクの位置づけだからな」



——五月の中旬。突如現れた謎の転校生は最弱だった。

ただ一人、僕を除いてはそう思っていたのだろう。


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