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異世界に転生

 俺は人生でモテ期が一度も来たことがない高校生、九条仁だ。


 なぜモテないかは自分ではわからない。顔は割りといい方だ。勉強はダメだが運動はそこそこできる。

 性格も悪くはない……と思う。


「モテてぇ――」

「またその事?」

「――お前はモテるからいいよな」


 俺と幼馴染みの瀬戸口真寛だ。イケメンで頭もいい、運動神経抜群でおまけに美人の彼女がいる。


「仁ちゃんだって知らないだけで女子に人気あるかもよ?」

「あるかもよ? って……」

「モテる奴はいいよな――」

「モテてないよ――」

「次それ言ったらブッ飛ばすかんな!」

「一度死んで人生やり直そっかな」

「仁ちゃん、しんじゃだめだよ?」

(真寛はいい性格してると改めて思うよ)

「しなね――よ」

「異世界で彼女でも作りて――」

「できたらいいね!」



「仁ちゃん、部活疲れたね――」

「そだな」

「帰りコンビニでも寄るか」


「仁ちゃん危ないっ」


 気がついたら目の前には大きな扉があった。


「――どこだよ、ここ」


「こんにちは、迷える魂よ」

「俺、死んだのか?」

「はい、あなたはトラックに跳ねられ死を遂げました」

「――モテ期来なかったか」

「俺はこれからどうなるんだ?」

「あら、落ち着いていますね!」

「あなたには二つの選択肢があります。一つはもう一度同じ世界でやり直す、もう一つは別世界で記憶があるまま転生される。」

「どちらがいいですか?」

「それって異世界へ行けるってことですよね?」

「はい」


 俺は迷わなかった。

(これほどまでにないほど迷いのない発言をしたことがあるだろうか。否!)


「二つ目でお願いします。できればモテ期の来るようにしてくれませんか?」

「わかりました、それでは良い旅になることを!」

「ついに……ついにこの俺にモテ期が来るのか!」

「行ってきます!」


 扉を開けると光が漏れだし気がつくと見知らぬ町にいた。


「ついに来た! 憧れの! 異世界だ――!」

「……」

「金も武器もねえ」


(どうすればいいんだ……)

(普通は最低限の金と最強の武器とかなんかあるだろ。

 これじゃあモテ期どころかイベント一つ起きねえよ。)


「この世界の神様はなにしてんだよ」


「神様がどうしたのよ?」


(おいおい、こんな最悪と思われる状況からイベントが発生するというのか?)

(見るからに美人で豪邸にでもすんでそうなお姫様じゃね――かよ)


「あ――、神様に願い事をな!」

「あっそう、叶うといいわね」


(俺にはわかる、こいつはツンデレにちがいない。)

 俺は生きてきてこれだけは得意だった。属性を見分けることに関しちゃ誰にも負けない。


(グ――)


 腹が鳴ってしまった。

(確かに何も食べてなかったからな)


「あなた、お腹が減っているのね。」

「何も食べてなかったからな――」

「変わった服を着ているし、あなたお金がないのね?」

「いいわ、私の屋敷に来なさい」


 いきなり屋敷に行けるのか。

(ラッキーだぜ!これもしやモテ期か!)


「あなた名前は?」

「俺の名前は仁だ!あんたは?」

「私は……アリシヤ」

「アリシヤか、かわいい名前だな!」


(決まった! これで俺のことが好きになっただろう!)


「私もお腹が減ったわ! 行きましょ」

(無視か? まぁこれからか!)


「捕まって」


(まさか魔法か?テレポートできるのか、便利だな)


「ついたわよ」

「ってここどこです?」

(どっからどう見ても荒れ果てた廃墟みたいなとこなんですけど……)


「みんな――、昼飯よ!」

「ガルルルル」


(目の前に大きなトカゲのような生き物が見えるのは俺だけ?)

(いや待てよ、ここでアリシアを守れば間違いなく俺に惚れるだろ)


「アリシア、俺の後ろにいろ!」

「あれ?アリシア?」

「アリシアが化け物に変化した?!」

「会ったときから美味しそうと思ってました!」

(おいおいおい、こんなモテ期は望んではいねえぞ!)

「早速だけど、いただくわ」

「フフフっ、動くといたいわよ」

(何でこんなことになるんだよ、ふざけんな)

「アリシア、言っとくが俺は不味いぞ! 食わない方がいい!」


(逃げ道はないか、……あった!)


(あそこから出て助けを呼べばなんとかなる)


「アリシア、話し合おう、ここで見逃してくれれば肉をたくさん持ってきてやる!」

「――お前、逃げる気か?」

「嘘の匂いがする、嘘ついたな」


 化け物はどんどん数を増やしていき逃げることもできない。


「……」

(どうすればいいんだよ、……おわった――)


(ん?なんか来る、鉄の擦れる音?)


「大丈夫か?!」


(誰か来たぞ、たすかった!)

「大丈夫じゃねえ! 助けてくれ」

「任せてくれ」


「王によりお前らリザードの群れを破滅させろとの命令が出た、これよりお前らを完膚なきまでに潰してやる」


(あの化け物リザードって言うんだ)


「覚悟しろ」


「騎士風情が何しようが私らに勝てるまい」


(……)


 一瞬の光と風で目をつぶった。その間にこの騎士は剣を一振りしてすべてのリザードを倒した。


「すげぇ……」


「怪我はないかい?」

(こんな人がモテるのか)


「ないです、ありがとうございます」


「騎士として当たり前のことをしたまでだ」

「君、名前は?」

「仁といいます」

「そうか、私はクロリスだ」

「クロリスさん、ありがとうございます」

「クロリスでいいぞ、それよりは気を付けろ! ここら辺は人を食らうモンスターが多い」

「わかった、ありがとうクロリス」

「町まで送ろう」


(またあのテレポートか、俺もつかいて――な)


「それじゃ仁、また会えることを願っている」


(かっこいいひとだったな――)

「まぁ一件落着か、てか金もないしまた振り出しか」

「あ――、もう絶対あんなことになってたまるか!」


「モテ期なんて来なくたっていい――!」

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