黒と熱と汗の匂い
あぁ、一面真っ黒。
下方からの放射熱。
あなたの靴の体臭と、鼻をつんざく女の香水の香り。
私はそんな香りは付けなかったわ。
都会の雑踏を通り抜けて、細い路地裏であなたはその女を抱き止めるのね。
でも、その女の顔を私は見ることが出来ないの。
見えるのは真っ黒のアスファルトだけよ。
とても残念だわ。
もっと上へ行きたいの。
もっと上へ。
あなたの顔が見えるまで。
あなたに気付いて貰えるまで。
私はあなたの周りを漂うわ。
あなたは私に一生を捧げたなじゃない。
女が羨ましいの。
私が死んでからこんなことするなんて、信じられない。
私はいつも見てるのよ。
あなたの大切な愛人の足下から。
明日はもう少し上から見るわ。
どんどん上へ上がって行くの。
私は女を蝕むわ。
いつかあなたは気が付くの。
女の顔が2つある事に。
女のどろどろした感じを書きたかったです。
全然怖く無いですね。
最後の2つの顔って言うのは、物理的な2つの顔と、女(視点の女)の裏の顔という2つの意味があります。
こんな注意書がいらない小説を書きたいですね。