廊下の虹と秘密基地
廊下にこだまする無数の声
艶のあるタイルは黄ばんだ光を反射する
外はほんの少し雨
駅前を忙しく歩く人々と
同じとは思えないほどゆったりと
楽しげな会話とともに
時間がゆるやかに流れていく
そこで私はスマホを片手に
こうして詩作にふけっている
内緒の遊び
ここは私の秘密基地
鐘の音とともに廊下が賑わう
買ったばかりの弁当を片手にした
そんな人混みを避けて
当てもなくふらふら
適当な居場所を見つけ本を開く
そんな日常
少し寂しく、それ故に優しい
許されている、と思う
言葉の海に沈んで
私は私を失ってゆく
壁際に立つ友人を見つけて声をかける
私ではない誰かを待っていたのだろう
しかし、友は笑顔をくれる
廊下の隅でおしゃべりを
それは一冊の本より短くも
幸福な時間であることを
こんな薄暗い雨の日には
眩しく輝いて
「覚えているよ」と呟いてみる
雲の切れ間
一瞬だけ顔を出した太陽が
長い廊下を照らしていく
白いタイルの表面に
虹がかかったら
きっと素敵だろう
想像を
秘密基地に持ち帰るため
開いた傘と外へ駆け出した