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RAIN

作者: 東京 澪音
掲載日:2016/05/30

もう15年以上前の話だ。


家から少し離れた海の見える公園。

僕はそこにいた。


電灯の下に電話BOXがあって、僕はそこに駆け込む。


毎週一度金曜日の夜、僕は彼女に電話をする。

こんな事をもう二年も続けている。


何故電話BOXなのか?


アルバイト先の近くにある事が理由の一つと、実家は自営の為長電話が出来ない。

携帯電話はそれなりに普及されていが、通話料金が異常に高かった。


当時国際電話用プリペードカードが売られていて、5千円のカードを買うと30分程話が出来るプリペードカードを毎週コンビニで購入していた。


こちらとあちらでは13時間ほど時差がある。

彼女はホームステイしていたので、なるべく迷惑にならない時間を選び連絡していた。


11月半ば、金曜日。

いつもの様に電話をし、ぎこちない片言の英語で彼女を呼び出してもらう。


お互い近況報告をしたり、他愛もない会話で盛り上がったりもした。

もうすぐクリスマス。


街のショーウィンドーは季節を急ぎ、10月からクリスマスムードだった。

誰もが浮かれる季節。


僕は彼女に尋ねた。

何か欲しいものはあるかな?


それまで笑っていた彼女だったが、急に黙ってしまった。

沈黙の時。


いつもなら黙っている時間が勿体ないと、話が尽きないのだが・・・。


何も欲しくない。

ただ、叶うのなら5分でもいい、会いたい。


遠い異国の地、知り合いも少ない街で気丈に頑張り続ける彼女からこぼれた言葉。

決して我がままを言う子ではない。


寂しさに耐えられなくなったんだろうと思う。

直ぐに嘘だから気にしないでと言ったけれど、少しだけ声が鼻声だった。


気が付くと電話ボックスに雨音が響いた。

雨が降っている。


本当の気持ちをごまかす彼女の心の様に、雨が降ってきた。

彼女の涙の色を真似て。


それから少しまた話をした時には、彼女はいつもの声に戻っていた。

電話を切り、雨の降り続く公園の電話BOxに僕は立ち尽していた。


しばらくして僕は留学経験のある友達に電話をした。

パスポートの作り方・費用、チケットの取り方など。


僕は土日をフルに使って色々調べた。友達も格安の航空チケットなど探してくれた。

月曜日、朝からパスポートの手続きをしていた。大体3週間くらいで出来るとの事。

これならばクリスマスに間に合いそうだ。


問題はチケットだ。

あまり高いチケットは買えない。その旨も友達に伝えてあった。

直接旅行会社に問い合わせて、往復12万円のチケットを手に入れることが出来た。


お金は貯金があった。

車を買う為に積み立てていたたお金。


バイト先には無理を言って5日休みをもらった。その代りにその前後と正月はフルに働く交換条件つき。

準備は整った。


僕は一刻も早くそれを彼女に伝えたくて、水曜日に電話を掛けた。


彼女に電話を替わってもらった。

どうしたの?そんな彼女の言葉に、僕は答えた。


12月24日から5日間時間を空けて欲しい。


彼女にはそれだけでわかったらしい。

あんな言葉聞き流してくれてよかったのに・・・。


彼女は泣き出してしまった。


本当はもっと前から気が付いていたんだ。

彼女がずっと泣いていた事に。


もっと前にこうしていればよかった。

今更ながらに気が付いた夜だった。




12月23日。


僕は彼女に会う為に、飛行機に搭乗した。




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― 新着の感想 ―
[良い点]  二人は心底愛し合っているのが伝わってきました。 [一言]  強いです。
2016/06/10 19:40 退会済み
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