02
教会の裏手は小さな庭になっていて、そっちから入れるようになっていた。
こじんまりとしているがきれいに掃除されていて落ち着いた部屋だった。
「狭い部屋ですがどうぞお入りください、奥にも巡礼の者が泊まる部屋があります。今夜はそちらをお使いください。」
「ありがとうございます、しかしよろしいのですか。」
「真摯に祈りを捧げていらしたのを見て神に仕える者として大丈夫だと思えたのです。食事の用意をいたします、お疲れでしょう?お茶を出しますのでゆっくりなさって下さい。」
そう言うとじいちゃん神父は出て行った。
あ、そうか水道なんてないのか。いやいや俺だけ座ってるわけにもいかんでしょう。
外で大きめの木桶を持ち出したじいちゃん神父を呼び止めた。
「水でしたら私が汲んでまいります。」
「よろしいのですか?助かります。井戸は道の先にある広場にあります。」
地味にきっついわこれ。
じいちゃん神父こんなん運ぶつもりだったのか?いや俺が雑魚いのか。
会社と家の往復だけ、休みも出掛けないでゲームばかりだったしな。
家に戻るとじいちゃん神父に言われ木桶の水を水瓶に移す。
そういや名前聞いてないな、【鑑定】って人にも使えるのかな。
使ってみるか。
名前 イザンク=ロフィス
レベル 17
種族 人族
職業 【司祭】【剣士】
よしよし、人にも使えるみたいだな。
しかしレベル17でジョブは2つか、これってこの世界ではどのくらいの強さなんだ?
人が良さそうで物静かなじいちゃんなんだよなぁ。
でもなんとなくだけど、ただ者じゃないような気がするんだ。
不審な相手を前にして余裕みたいなものを感じる、まあ不審者って俺なんだけど。
「どうぞ村の近くで採れる香草で作ったお茶なんですが、お口にあうとよいのですが。」
見た目紅茶のような色だ、味はちょっと渋めだけど嫌いじゃない。
「見たところ巡礼の旅というわけでも無いご様子、アーヴェイの大神殿までですかな?」
アーヴェイ?大神殿?
「街道を抜けた先にあるアーヴェイの街にある大神殿でジョブの洗礼を受けて何かのジョブに就かれるのでは無いのですか?」
なるほど、そうやって普通の人はジョブを得るんだな。俺のは爺ちゃん神がくれたからな。ジョブは神からの贈り物的なものなのだろうな。
「いえすでに【神官見習い】のジョブには就いているのですが、見聞を広めるためにあちこち見て回ろうかと思いまして」
「なるほど、アーヴェイからいらしたのですね、見ての通り何も無い村ですがほどよい魔素がある森があり魔法薬の素材などでそれなりに豊かです。ゆっくりしていって下さい。
イローヴ村にようこそ、申し遅れましたこの教会の司祭をしておりますイザンクと申します。」
「これはご丁寧に、私はケータと申します。」
「【神官見習い】でしたら遠慮はいりません、この村にいる間は奥の部屋をお使いください。」