プロローグ1
その日、仕事を終えた俺は築20年は超えたであろう安アパートに帰るとネットゲームを立ち上げていた。
4年ほど続けているゲームだ、いつもの街にログインした俺はネットの友人を見つけた。
「よう、最近見なかったじゃねえか。暇してるならひと狩り手伝ってくれよ。」
「あぁ、ケータか。ちょっとリアルで困ったことがあってさ、そうだ!ケータ相談にのってくれよ。」
「明日も仕事だし遅くならないならいいけど・・・」
「ならここじゃ何だし、こっちに【呼ぶ】よ。」
その書き込まれたログを見たとたんに視界は真っ白に塗りつぶされた。
光に目が慣れると見たこと無い部屋だった。
でかい図書館?何列も続く本棚とその間にある大きな机。人の良さそうな眼鏡のおっさんが手招きをしていた。
「やあ、直接会うのは初めてだね。厄介なことになりそうなんだ、出来ればケータに手伝って貰えると助かるんだけどね。」
「あんた何者だ、いやその前にここはどこなんだ!」
「イヤだなぁ、前から言ってたじゃないか。私は神だって。」
そうだった。このネットの友人はたまに自分は神だとか冗談を言っていた気がする。まさかマヂなのか・・・
「ほら、ケータがこの間言ってたろ?異世界があるなら行ってみたいって。ちょっと行って来てくれないかな?」
いやそんな近所のコンビニ行くようなノリで頼まれても。
「最近の君たちは魔法とかを使わなさすぎるんだよ、ちょっと前まで魔女だ巫女だのシャーマンだのあったのに、おかげで魔素溜まりがあちこちに出来て見てて危なっかしいんだ。」
このおっさんが言うには、魔素浄化ってスキルを持ち帰って欲しいらしい。
向こうに行くと死ぬまで戻れないとか、死ぬとここに来た時間に部屋に戻れるのだとか。
正直、どうでも良かった。だってそうだろう?一番気になるのは
「なあ、当然貰えるんだよな?」
「どうでも良くはないと思うんだけどねぇ。まあ言いたいことはわかるよ、ただよくある勇者とかはないから」
「ないのかよ!こう凄い魔法とかスキルを奪ったりとかさあ、魔力無限とかさあるんだろ?」
「そんなのあるならスキル覚えて来てなんて頼まないよ、そういうの向こうの神の管轄なのさ、私から君には【ステータス詳細表示】だけさ。」
不味い、これはハードモードなんじゃね?このままの俺なんて軽く雑魚だ。スライムにだって負けるタイプだ。
「大丈夫、戦える程度の能力にはしておくよ。スキルなんかは向こうの神が用意するって、ケータはあっちでいい感じにスキルを取って持ち帰ってくれれば良いんだよ。」
そう言いながらおっさんはポチっという感じで手元のボタンを押した。