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賢王と呼ばれた王様

 勇者と賢者を支えた『賢王』。そう呼ばれた国王がいました。彼は本来、国王に即位することはないだろうと思われていました。第3王子である彼は、継承権はあるものの、比較的自由に育てられたのです。


 彼が辺境の森に住まう魔女に出会ったのは、彼が16歳の夏のことでした。避暑地での休養をとっていた彼は、ある時思いたって気ままに馬を走らせたのです。そして、馬が辿り着いた先が、魔女の住まう小屋でした。


 馬にはわかっていたのかもしれません。魔女が彼の主を呼んでいることが。そして、彼の主には魔女の力が必要だということが。



 彼は馬から降りると、小屋の周りを散策しました。すると、小屋の中から1人の女性が出てきました。彼は女性に話しかけました。『貴方が辺境の森に姿を隠したとされる魔女か?』と。


 彼女はその質問に頷いて返しました。そして、今度は彼女が彼に訪ねました。『シュバルツ王の息子よ。そなたは、王となることを望むか?』


 彼はその質問に首を横に振って答えました。『否』と。『それでは、そなたは何を望む?』そう問われた彼は、こう答えました。『余は国の民の安寧を望む』と。



 彼女は、その答えに満足しました。彼の兄王子達に同じ問いかけをした時の返事は、『国王になることを望む。そして、国の更なる繁栄を望む』でした。もちろん、国の頂に立つ教育を受けた彼らにとっては、それは当然の答えで、決して不正解でもありませんでした。


 しかし、彼女は第3王子の答えが気に入りました。彼女が望むのも、国の繁栄よりも、そこに住まう民の安寧だったからです。



 彼女は彼を『生かす』ことに決めました。彼女には少し先の未来視ができました。少し先の未来で、王宮に蔓延する病魔を見ました。そして、3人の王子達こそが、その病魔の矛先でした。


【3人の王子のうち2人が、この病魔によって命を落とす】。これは、いくつか見える未来視でも、共通していることでした。この病魔から救う方法は、森の魔女しか知りません。その彼女をもってしても、1人を救うだけが限界なのです。



 3人のうち誰が生き残るかによって、未来は変わってくるようです。しかし、あまり先の未来は見えない為、誰を助けるべきなのかがわかりません。それを判断する為に、彼ら王子と直に接触することにしたのです。そして、彼女は決めました。第3王子を助けることを。



 第3王子でなく兄王子達でも、この帝国は繁栄したでしょう。しかし、第3王子でなくては数十年先の魔女の最期に、彼女の力と知恵を授けた子ども達の、支援や保護はできなかったでしょう。民の一人一人を考えることのできる彼であったからこそ、子ども達を支えることができたのです。



 彼は、『勇者』と呼ばれた男の子には学ぶ場を用意し、後見役も務めました。


 彼は、『賢者』と呼ばれた女の子には貴重な魔術書を用意し、研究の資材も提供しました。彼女が研究に没頭できるように、森の周りの警護もしていました。



『勇者』と呼ばれるようになった男の子も、『賢者』と呼ばれるようになった女の子も、盤石な支えがあったからこそ、最初の一歩を踏み出せたのです。


 民が『勇者』と『賢者』を讃えました。彼らは自分達は讃えられるような存在ではないと、讃えられるべきは力を授けてくれた魔女と、支えてくれた国王だと語りました。その話は世界中に広まり、いつしか国王は『賢王』と呼ばれる存在になったのです。



 もちろん彼自身は決して自分は『賢王』と呼ばれるような存在ではないと、ただの『平凡な王』だと言っていたのですがー・・・

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