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その日まで  作者: 美玲
38/43

第38話

―――はぁっはぁっはぁっ


あ、鞄置いてきちゃった…!!

どうしよう…

私だってわかっちゃうよっ


でも、無理だった…

あれ以上聞いてられなくて


先生の本音がただ怖かった


気持ち伝えるって決めたのに

結局、こうなっちゃった…



「藤木さんっ……!はぁっ…」



「え…先生?」



嫌だ!!先生に顔なんて合わせられないっ!!



「ちょっ、藤木さん!どうしてっ、!っくそっ」



―――はぁっどうして追いかけてくるの?


私のことなんかなんとも思ってないはずなのに

どうせ恋愛対象になんてなれないのに


どうして追いかけるの?

期待なんてさせないでよ



無理なら、かまわないで




「っはぁ、逃げんな!!」



「っ!!…先生。どうして…」



先生に手首をつかまれてしまった。

逃げようにも、ちょうどここは階段下で誰もいないし、何より先生の力が強くて逃げられない。



―――どうして…



「どうしてじゃない!!なんで逃げるんだ!!この間からそうだった。ずっと俺を避けてるだろ。今日で最後だから、何か言うかと思っていたけど…。結局何も言わないで逃げるのか?!」



なんで?

どうして、そんな目で私を見るの?

私なんて、あなたの目に映ってないんでしょ?


あなたはいつも誰を見てるの


ねえ…これ以上期待させないで


私があなたの隣にいる日なんて来ないんでしょ?


だったら、そんな優しさなんていらないっ


中途半端なものなんて欲しくないっ



「じゃあ、先生の私に対する態度はなんなんですかっ!!私って先生にとっての何?!ただの生徒の一人なんじゃないの?!なんとも思ってないのに、思わせぶりな態度するのやめてよっ!!からかわないで…。私は真剣なの…!!」



もう限界だった

先生の顔を見て、さっきのことを言われたらどんどん気持ちがあふれてきて、止められなかった。


だから、もう顔を合わせたくないと思って

先生の手を振り切って、走ろうとした。



「…っ?!」



「聞けよっ。俺の話っ、逃げんなっ!!」



いつもとは違う、荒い口調で先生は私を後ろから抱き締めた



「先生?!なっんで…」



「俺がなんとも思ってないっていつ言った…?」



「え…?」



「そんな風に決めつけるなよ!!俺はお前を生徒の一人だなんて思ってない!俺だって認めたくなかった、生徒を好きになるなんて…でも自分じゃどうしようもないくらい、お前を好きになってたんだよ!!」



え…どういうこと…

頭がぐらぐらする…


私が好きって…

だって、あなたの隣はもう…



「…彼女がいるのかって聞かれたことがあったよな。あの時、というかこの間まで彼女はいたよ。でも、気づいたときにはお前に惹かれてて自分の気持ちがわからなくなったんだ。…お前は生徒で、俺は教師ではないが実習生だからな。だけど、日に日に藤木さんのことが好きになって、結局、認めるしかなった。彼女には本当の気持ちを伝えて別れたんだよ。」



そう…だったんだ。

あの人はやっぱり彼女で…


でも今は



「好きだとわかってからは本当に悩んだよ。先生たちにも最初からきつく言われてたし。生徒とは深くかかわるなって…。この気持ちも言うつもりはなかったしな。けど、藤木さんが俺を避けているのに他の男と話すのを見て、腹が立つのを抑えられなかった。今もそうだ…。俺から逃げるのが嫌で、何も考えないで追いかけてたよ。」



「………。」



「…俺は沙良が好きだよ。自分の立場を忘れるくらい。どうしようもなく愛おしいんだ。ずっと隣にいてほしい。」



「っ…。」



先生は私を、私だけを見つめてそう言ってくれた。

ずっと望んでいた言葉を。


胸がはりさけそうなくらい痛い。

でもその痛みはとても甘く、私の心を溶かしていく。


言わなきゃ。

私が言いたかった言葉を。


先生に伝えたかったことを。



「私も…先生のことが好きです。っ大好きなんです。話したときからずっと好きでした。私の中から先生が全然消えなくて、どんどん好きの気持ちが大きくなって…。この気持ちを伝えたい、隣にいたい、他の人を見ないでほしいってそう…思っ…てました。」



いろんな感情でぼろぼろ涙がこぼれる私を、先生は目じりを下げて甘く笑いながらゆるく抱きしめた。



「…俺さ、就職先がもう決まってて教師になることはないんだ。けど、実習生って立場だったから沙良が卒業するまでは堂々と外を歩くことも出来ないし、他の恋人がすることもしてやれない。…それでもいいか?俺はお前と離れたくないんだ。」



「ううん…。私は先生が好きだと思ってくれるだけで十分幸せです。先生が私を好きになってくれる日がくるなんて思ってなかったから…。だから、気持ちが通じ合っただけでも嬉しいんです。」



「…沙良。好きだよ。」



「…はい。」







奇跡は起きた


私が先生の特別になれる日がくるなんて思いもしなかった


気持ちを伝えるだけで十分だと思っていたから


…もちろん、叶わなかったらつらかったと思う


けど、好きになった気持ちを大切にしたかったから


あなたに愛を乞うことができた私はもう下を見ないよ


私だけを見てくれるその瞳を見つめていたいから


あなたの隣にずっといたい





あなたが私を望み続けるその日まで



その日まで、私は愛を伝え続けよう




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