第36話
「沙良、…帰ろう?もうホームルームも終わったよ。」
「…うん。」
「ねえ。沙良。ずっと考え込んでいるみたいだけど、先生のこと…おせっかいかもしれないけど、沙良は本当にこのままでいいの?このまま終わって沙良は後悔しない?」
「………」
「叶わなくても自分が納得できることをして終わらせたら後悔しないで、こんなこともあったなって時が経てば思えるようになるけど…何もしないで終わったら、消化出来ないままで、つらいままの恋になってつらかった思い出になるよ…。特に先生は…学校に来なくなったら、もう会えないかもしれないんだよ。沙良は、それで、本当に納得できる?」
私が本当に思うこと…
いっぱいあるよ。
たくさんありすぎてわからないくらい…
「先生…」
「あ…まだ残ってたんだ。ボールペン忘れちゃってさ。…俺明日最終日だから藤木さんも佐藤さんも明日は遊びに来てくれたら嬉しいんだけど忙しいかな…?もし暇だったら、来てね。…それじゃあ、また明日。気をつけて帰って。」
―――先生。
本当にこのままでいいの
このまま終わっちゃっていいの?
それで私は後悔しない?
もしかしたらもう会えなくなってしまうかもしれないのに
先生を好きになったこと…
後悔してない
先生の特別な人がいるってわかってから苦しくてつらかったけど
楽しかったことも忘れてない
一緒に過ごした時間は少ないけど、かけがえのない特別な時間だったから
先生との時間は私にとっては甘くて中毒になるものだったから
飽きたりなんてしない…
もっと一緒にいたい
もっと見つめてほしい
もっと触れてほしい
そう思えた
だから…
「ごめん紫苑!!ちょっと…っ」
「いいよ、行っておいで。玄関で待ってるから…」
「ありがとうっ」
行かなきゃ
伝えなきゃ
今私が思ってること
このままで終わりたくなんてない
ぶつかってみなきゃ始まらない
「っ…はぁ、先生っ…!!」
「っ…!…藤木さん、どうしたの急いで…」
「あの………」
「うん…」
「あの…明日…聞いてもらいたいことがあるんです」
―――後悔はしない
―――この恋をしたってこと