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その日まで  作者: 美玲
32/43

第32話

勇気を出さなきゃ…。

何も始まらない。この気持ちを大事にするって、決めたじゃない。だから。



「せ、先生ってどんな人がタイプなんですか?」



「え、あー…。んん…と、特にこれといってないけど、一緒に居て楽しくなれる人かな。楽しいことを楽しいと思える人、前向きな人、頑張ってる人とかかな…。って、結構真面目に答えちゃったよ。ははっ」



それって、あの人のことを言ってるのかな…。

でも、頑張らなきゃ。本当に聞きたいことは…。



「そうなんですかー。それって具体的?な気もするんですけど。…先生って、そういえば彼女いるんですか?…美穂先生にも、前聞かれててはっきり言ってませんでしたけど…」



「え…、あぁ。さぁ、どうかな?…家には、スズっていう可愛い子がいるんだけど、その子のことかな?」



一瞬の間の後、先生は私から目をそらして言った。

先生は私と同じで人と話すとき、まっすぐ目を見てきちんと話す。なのに、今は私から目をそらした。そしてほんのわずかな沈黙。


それがすべてを物語っていた。

先生の口から真実を聞かずとも、あの反応でわかってしまった。




あの人は、先生の彼女…大事な人なのだと。




私が先生の隣にいれる日なんて来ないのだ。

優しく見つめられて、甘やかされて、愛を乞われるなんて、私が思い描いた幻想であって、ただの高校生の夢でしかないのだ。




恋の甘い痛みは、蓋を開ければ、甘くなんてない、ただの痛みでしかなかった。

私を暗い闇に落とすだけの。


どんどん黒い感情が出てきて、顔が歪んでいくのがわかる。

それでも、普通でいなければいけない。

先生に悟られてはいけないのだ。私の恋心は。



きっと、先生を困らせるだけのものだから。

だから、私は…




「なーに言ってるんですか!!それって、先生の飼ってるペットの猫の名前じゃないですかー。ごまかさないで下さいよ、もう!!」



「うわ~ばれた?いけると思ったんだけどなぁ。」



「先生が前にスズちゃん飼ってるって言ったんですよ?忘れたんですか?」



「あれ、そうだったか?ははっ。いくら天然の藤木さんでも誤魔化せなかったか~。」



「ちょっ、私を何だと思ってるんですか?!」



「いや、だってさぁ。お、おい、そんな怒るなよ」




きっと、先生のそばにいて今まで通りに笑うことなんてできない。

真実をはっきり伝えてもらえない、先生を困らせるだけの子供なんだとしたら…。




―――私はただの生徒に戻るだけ、これ以上、深入りなんてしないから







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