第28話
「ただいまー」
「あ、おかえり。今日も遅かったね。最近なにかあるの?いつもより帰ってくるの遅いし、あんたの機嫌良かったり悪かったりで、まちまちじゃない。」
げっ…。お母さんてば、するどいな。確かに最近帰ってくるのは先生と話してるからいつもより遅いけど、気分は良くても悪くても、家では普通にしてたつもりなんだけど…。見てるもんだな親って。
「あ~うん。いろいろあってさ、紫苑とかと学校残ってるんだ。」
「ふ~ん。そう。ならいいんだけど。お風呂入ってきなさいね。」
「はーい。」
あ、危なかった…。もっと聞かれると思ったから。―――お母さんとは仲が良くて、なんでも話すけど、今回のことはまだ言えないな。相手が相手だし…。とりあえずは、黙っておこう。
―――ちゃぽん。
―――はぁ。お風呂ってなんでこんなに気持ちいいんだろう。今日はひのきの入浴剤か…。いい匂い。肩までつかっちゃえ。
お風呂で私は、一日のことを振り返ったり考え事をすることが多い。多分リラックスしてくるからっていうのもあるけど、お風呂につかっているときって、することが何もないからだろうな。
今日も楽しかった…。緊張してたけど、残りの二人の先生はどっちも優しい先生だったし。―――女の先生は、山口さやか先生で、細くって背の高い美人な先生だった。見た目はクールなんだけど、話し出すと、くるくる表情が変わって、笑顔の絶えない可愛い明るい先生だった。もう一人の男の先生は、杉内先生と言って、この先生も細くて背の高い先生だった。川口先生も細いけど、がりがりってわけじゃなくて、骨格とかはしっかりしてるバランスの取れた体だけど、杉内先生は本当に細くって、すぐ骨折しそうな感じだった。中身も、優しくて、あんまり多くは語らない、悪く言えば気の弱そうな人だった。高橋先生とかにいじられたりして、でもさやか先生が杉内先生をかばってて、その光景はちょっとほほえましいものだった。…もしかしたら、さやか先生は杉内先生のことが気になってるのかもしれない。
先生同士でも恋愛したりするのかな。いいな、それもすごく素敵。高橋先生は美穂先生と付き合うのは無理だと思うけど…。さやか先生たちは、うまくいってほしいかも。だって、二人の雰囲気がすごく素敵だったんだもん。杉内先生は、さやか先生が話していると、うんうん、って聞いてて、ほんわかしてた。私もああなりたいな、って思ってしまった。…顔に出てないといいけど。お母さんにも言われたように、私は顔に出やすいのかもしれない…。
―――ぶくぶく。
うう。最近恋愛脳になってるなぁ。人を見てもそう感じるようになってるんだから。
先生と話すのは楽しくって、帰りたくなくなるんだよね。楽しい時は時間が経つのが本当早いと思う。明日はもっと先生のこと聞けるかな?
大学のこととか教えてもらうのも新鮮で楽しいんだよね。
「さーらー。まだ入ってるのー?そろそろご飯よ~。」
「あ、はーい!!今出るよー。」
そういえば…。肝心なことを聞いてない。
先生って、―――彼女いるのかな…。
………って、早く出なきゃお母さんに怒られる!!
このとき考えたことは思わぬところから答えを知ることとなるのだが、それを私はまだ知らなかった。のちに私を苦しめることとなるのに。
―――事実はすぐ目の前まで来ていた