第23話
「んんー!!やっぱりボヌールのケーキは美味しいな~。この濃厚なチーズケーキとコーヒーとの相性もばっちり。」
「うん、こっちのイチゴタルトも美味しいよ~!!タルト生地がさっくりしてて、イチゴが甘酸っぱくってバランスがいい!」
私たちはケーキを食べることに専念して、話したいことはとりあえず後にした。こんなに美味しいものを食べているときに他のことで悩みたくないし、甘いものが頭にまわってからの方が頭の回転も早い気がしたから。
「「ごちそうさまでした!!」」
「美味しかったね。たまに食べるから余計に美味しいんだろうなぁ。」
食べ終わったし、そろそろ話さなきゃ。そうじゃなきゃ何のためにここに来たのかわからないし…。でも、どこから話せばいいの…
「ん、そうだね。………。」
「沙良………。…最初から話してみて?」
最初から…最初からって、先生が来てからか…
先生が来てからもう1週間以上。なんかあっという間の1週間だったな。いつもなら毎日毎日同じことの繰り返しで1週間が長く感じてたから…
気持ちひとつでこんなにも日常が変わるのを忘れてた…
「あのね………」
紫苑に、先生とのことを話しながら、私も気持ちの整理をしよう。自分の気持ちに嘘をつかないで、素直にならなきゃ。一過性のものかもしれないし、私の勘違いかもしれない。それでも、そうだとしても…
―――わたしのこころをくろく塗りつぶすのはきっとだめなことだから。
―――まっしろなままじゃくても、これ以上色はつけないよ。