第20話
「じゃあ行こっか。まだケーキセットやってる時間だもんね。う~ん楽しみ!!何食べようかなぁ。チーズケーキもいいし、イチゴタルトもいいし…うぅ~ん。」
「ふはっ。沙良ったら食べる気満々ね。でもまぁ。私も楽しみだけど。ボヌールはタルトがおいしいからなぁ。」
「ね!行くよー!!」
「はいはい。こっち見てないで前向いて歩きなさいよー。沙良はたまに転ぶから、気を付けなよって、あ…!!」
「うん。気をつける…ん゛っ?!」
ケーキを食べることに嬉しくなって、私は後ろ向きで紫苑と話していた。後ろ向きで歩くなんて、運動神経のよくない私は危険がたっぷりだというのに…
そう、前を向いていないから、誰がこっちに向かって歩いていたか私は気付かなかったのだ。紫苑の顔を見ればなんとなくわかったはずなのに…。
「おっと…ちゃんと前向いて歩かないと危ないよ、君。」
「す、すみません!!」
前方不注意のために誰かにぶつかってしまった。本当もうしわけない。―――というか、この人、なんか落ち着くにおいしてる。それに、背も高い…鼻が当たったところが肩より下だし…。誰かな、そう思って上を向いた。