第16話
「立ってないでこっち座りなよー!」
「そうだな。はい藤木さんはここ。」
そう言って、川口先生は私の手を引いた。
「は、はい。」
手を引かれると思っていなかったので、一気に手の方に集中してしまった。―――先生の手…。大きい手だ。普通の大きさの私の手がすごく小さく感じる…。大きいんだけど、指は長くて綺麗でつい見入ってしまった。
「ん?あ、ごめん手つかんだままだったね。」
―――え…。もう…?
そう思ってしまうと、手が離れそうになった瞬間、先生の手をぎゅっとしてしまった。
「゛?!」「?!」
「なになに?二人で仲良く手つないで~。いいねぇ。美穂先生も俺と手つなごうよー。」
「………。いやです。ったく。」
高橋先生に声をかけられて、はっとした。―――私何やってるの?!なんで先生の手つかんでるの?!
「すっすみません!!」
「いやいやっ!…全然気にしてないから。」
「………。」
どうしよう…。すごく気まずい。なんか変な空気になっちゃったし、笠井先生はこっちじっと見てるし…。
「えっと。あの…。」
「………。」
微妙な空気の流れる3人をよそに美穂先生と高橋先生がまだ文句を言いあっていた。
「もう。高橋先生はほんと合わないわ…。あっそうそう、山口先生と杉内先生は今日、部活とか授業関連でこっち来れないんだって。」
「…あぁ。そういえば、2人がいなかったな。」
「そうなのか…。まぁ、2人はまた今度紹介するね藤木さん?」
「は、い。」
そっか。どうやら今日は先生4人だけらしい。…でも一気に紹介されるよりはいいかもしれない。もしこれで2人が個性が強い人たちだったら、精神的に疲れる気がするから…。