第15話
「さぁ着いた。ようこそ、ここが俺たちの城だよ。」
先生に連れられて来たのは1階の特別教室近くの部屋だった。―――城というほど立派なとこじゃないと思うけど…。教育実習生専用の部屋だから教室にいるより居やすいんだろうなぁ。
「じゃあ、入ろうか。」
「は、はい。」
「連れて来たよー。」
先生はそう言って、ドアを開けた。
「おぅ、いらっしゃい。あー…。何さんだっけ?」
「あ!!女の子だ!!入っておいでーー!!」
「…ども。」
「あ、藤木です。よろしくお願いします。」
「そんなに固くならないで。ほら。」
そう言われて、私は先生たちに見られながら気まずい思いで教室に入った。
「藤木さんかー。ごめんね名前思い出せなくて。」
「あ、いえいえ。担当のクラスでもなければわからないですよね。」
名前を思い出せなかったのは高橋先生。そして、明るく声を掛けてくれた女の先生は…。
「でも高橋先生、体育教えてるんでしょ?それで名前思い出せないのは失礼だわ。って、あ!!こんにちは。私は1年担当の小泉美穂です。みんな美穂先生っていうから、藤木さんもそう呼んでね!」
気さくで話しやすそうな、可愛い人だと思った。生徒に懐かれてるのがよくわかる気がする。
「美穂せんせー!!そんな冷たいこと言わないでよー!!」
「名前で呼ばないでっ!…きもちわるいから。」
「気持ち悪いって言った?!ひどい…。」
「高橋は小泉にちょっかい出しすぎ。お前の構い方は確かにうんざりするものがあるから、気をつけろよ…。」
「…確かにな。」
そういえば、このあんまり話さない人は誰だろう。近くで見ると本当大きくて、迫力あるな。
「あ、藤木さん。この熊みたいに大きい人が、笠井先生だよ。たくさん話すやつではないけど、優しくてしっかりした考え方のできる人なんだ。」
「…どうも。笠井です。よろしく。」
ぶっきらぼうでそっけなく見えるけど、ちゃんと目を見て話してくれた笠井先生は、口が軽そうな高橋先生よりずっと好印象に思えた。この先生が川口先生のいう仲のいい人なんだろうな。
個性豊かな先生たち…。なんだか楽しい時間が始まりそうだ。