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My Story  作者: とらっく
第二章 ~絶対零度に閉ざされし記憶~
6/20

第一話

初めて小説を書かせていただきます。

それ故、右も左も分かりません。

迷惑をかけてしまうこともあるかもしれませんが、よろしくお願いします。


注意 この小説には『妖怪』、『陰陽師』に対する自己解釈が多く含まれています。


それでも気にしない方はどうぞ、お楽しみください



第一話









「う、ううん」


眩しい。


久しぶりだな、フカフカのお布団で寝るのって。


……。


「そうだったー!!」


皆さん、毎度おなじみになると嬉しい凪です。


私は何故か、いや、なぜかは分かるんだけど、終夜の家というかマンションに泊まることになりました。

いや、泊まるじゃなくて暮らすかな?


終夜曰く、こんな田舎でもマンションはある、だそう。


「朝からテンションがすごいね。凪」

「お腹空いたよ、終夜」


布団を干していた終夜が眠そうな顔をしている。


彼は地べたに布団を敷いて寝てくれた。


ベットで寝かしてもらっておいてあれなんだけど、そわそわしてあんまり眠れなかった。

匂いというかなんと言うか、その、終夜の寝ていた場所に寝るっていうのが。


そもそも、男の子の部屋に泊まることって大丈夫なのかな?


「凪? 起きてる?」

「ほえ? お、起きてる! ばっちり」


あ、危ない危ない。

何が?


「で、今日は凪をを散歩に連れてくつもりなんだけど」

「ここらへんのことは少しなら知ってるよ?」


食べ物を探して神社に祭られてる餅とか食ったし。


やっぱり、人間を食べるのは……やだからね。


それはもう、何でも食ったよ。



人間以外なら。


「散歩というか、食べ歩きかな?」

「食べ歩き?」

「美味しいもの、食わしてあげるよ。食ったこと無いだろ?」


何で、終夜は私にこんなに尽くしてくれるのかな?

とっても、嬉しいけど何だかもやもやする。

会って、二日三日の人、じゃなくて、妖怪にこんなに優しくする?

聞いてみよう。


「ねえ、しゅう」

「あ、凪、急いで着替えて朝ごはん食べといて!」

「え、う、うん」

「ちょっと、出かけてくる」


終夜がドタドタと玄関に向かって走っていった。

……聞きそびれた。


「ま、着替えよっと」


今着ている、終夜の男用のシャツを脱ぐ。

はっ! こ、これは新品だからね? 終屋は着てないよ!


下にはいてるのはジャージ。


嬉しくもなく、あの忌々しい女から貰った。

……きっとわざとだ。


サイズが合わない。裾を折らないと、引きずっちゃう。

あの女の高笑いが聞こえてくる気がした。


ぐぬぬぬぬぬぬ。


「ふん、足の長さなんて関係ないもん」


誰が聞いてるわけじゃないけど、口に出してしまう。

白いブラウスを羽織ってボタンをしめる。

短めの灰色のスカートに足を通す。


「よし、ごはん」


私は小さなテーブルの前に座った。















「ごめん、凪!」

「おそーーい!!」


靴を揃えることなく、玄関から部屋に入る。

そこには、凪が頬を膨らませて怒っている様子。


これでも、急いできたんだけどね。


なんて言ったらどうなるか分からないから、口をつぐんでおくよ。

決して保身の為じゃなくて、凪のことを思ってのことだよ?


「ご飯冷めちゃったじゃん!」

「ごめん、って食べてないの?」


そこには、僕が出て行ったときと全く変わらない朝ごはんが並んでいる。

ご飯に味噌汁に目玉焼きという、定番中の定番の朝ごはんだった。


朝食は和食に限るよね。


違うのは、もうすっかり冷めて湯気が出ていない。

そして、凪は自分の朝ごはんに手をつけていない。


「先に食べてて良かったのに」

「一緒に、食べたかったの」


そうか、凪は今まで一人だったんだ。

だれかと、一緒に朝ごはんを食べた事なんてないはず。


だから、待っててくれたのかな? 


お兄さん、嬉しくて泣いちゃいそうだよ。


「それに、そう教わったから。『決して自分ひとりで食すな』って」

「え、誰から?」

「……父上から」


凪のお父さん? 僕はそのまま疑問を吐き出した。


「今、お父さんは?」

「……お空の上」


そして、後悔した。

そういうことか。悪い事を聞いちゃったかな。


「お母さんは分からない。私が気付いた時にはもう」

「ごめん、変な事聞いて」

「……いいよ。ほら、早く食べようよ」


ごめん。

いいってば。















「ご馳走さま!」

「お粗末さまでした」


はあ、美味しかった。


でも、それを終夜に言うのはやめとこ。


女の子として、男の子にご飯を作ってもらい、それが自分より上手で美味しいなんて。

凹む。


いくら今まで料理が出来る環境じゃなかったとしても。


「さて、出かける前に勉強会」

「何を勉強するの?」

「まず、僕と凪は今契約状態なんだ」

「契約状態?」


何、それ?

契約?


「凪の怪我を治すために、僕と凪は契約をしたんだけど、それについて言っておくよ」

「よくわからないけど、まあ聞くよ」


本当は、よくどころかさっぱりだけど。


「僕と凪は体力を共有してるんだ」

「共有?」

「そう、つまり、凪が馬鹿みたいに力を使えば、僕は倒れてしまう。逆もしかり」


ってことは、私が暴れると、その負担は終夜にも覆いかぶさるってこと?

逆もそう。


「つまり、力を使う時はやたら使わないようにしてね」

「分かった」

「じゃあ、おしまいだ」


分からなかったけど、終夜に言いたいことがあるんだ。


「まだニ分しかやってないよ」

「面倒くさい」


こいつ、一発ぶん殴ろうかな。

誰が、勉強を教えてやるって言ったけ?


「まあ、出かけようよ」

「話を逸らすなー!」


まあ、私も勉強よりどっか行きたい。

これ以上突っ込むのは控えておこうかな。


ニュース番組のキャスターが映ったテレビを消す。

このとき、私は気付かなかった。


「暖かく、過ごしやすい春らしい一日となるでしょう」


ニュースキャスターの言葉など気にも留めなかった。















「バナナとパイナップル下さい」

「かしこまりました。暫くお待ちください」


終夜が屋根がついていて、お店みたくなってる車からもどってきた。

結構朝早いのに、お店をやっていてビックリした。


「クレープ食べた事ある?」

「知ってるけど、ない」

「じゃあ、楽しみにしてて」


ぽかぽかと暖かい日の下、終夜が私の向かい側の席に着く。白い、テーブルを挟んで向かい合う。

黒の長ズボンに黄色のパーカーを着ている。

……終夜の顔、意外と綺麗なんだなあ……。

って、何考えてるのよ私! 


「ん? どうかした?」

「なーんでもない」

「お客様、お待たせしました。どうぞお召し上がり下さい」


終夜が追求する間もなく、一人のお兄さんがクレープを持ってきた。

全然待っていないけど、『お待たせしました』なんだね。

美味しそうな匂いがプンプンする。

早く食べたいけど、いただきますをしなきゃだよね。


「いただきます!!」

「いただきます」


うーん、これは美味しい!!

クレープって言うのか、これ。


「おいしい?」

「おいしい」


一言と会話が終了しちゃった。

話す事が無い、っていうか、何を話せばいいのか分からない。


……な、何か言わなきゃ!


「ね、ねえ、終夜」

「何?」

「終夜の両親はどういう人?」


さっき気になっていたことを聞いてみた。


終夜は一人暮らしだそうだ。


私の両親はもういないけど、終夜の両親はどうなんだろう?


素直に聞いただけだった。

思った事を口にしただけ。

だけど、返答は。


「いるけど、いない」

「いるけど、いない?」

「うん、いるけど、いない」


いるけど、いない?

どういう意味?


「僕は母さんと父さんに会えないんだ」

「なんで?」

「いまごろ、牢屋の中だから」

「ッツ!! ど、どうして?」


牢屋、それぐらいは分かる。


罪を犯した人間が収容される施設。


後悔した。

なんで、そんな事聞いたんだろう。


ここで引き下がれば良かったのに。


「僕の罪を肩代わりしてるから」

「え?」

「僕の所為なんだ、お母さんと父さんが牢屋にいるのは」


……ごめん。

気にしてないよ。















「さて、次は何処にいこっか?」

「え、えーと」


あのあと、何も聞けなかった。


だって、さ。

終夜の心を傷つけちゃうかも知れないし。


「……凪」

「な、なに?」


終夜がため息をつくように言った。

思わず、体が硬くなっちゃう。


眼もあわせにくい。


「僕の眼を見て」

「う、うん」


終夜の眼をしっかり見る。

互いに見詰め合う。


「さっきのことは気にしてないから、忘れてくれる?」

「う、うん」

「僕は凪にいろんなことを聞きたい。だから、それが迷惑だと思うなら正直に言って」

「そんなことないよ! うれしいくらいだよ!」


言ってしまった。

でも、私の本音だ。


「なら、僕も同じ。凪が聞いてきても迷惑だ何て思わないし、うれしいぐらいだよ」


怖かった。

終夜に嫌われるのが。


私を必要としてくれた人に見捨てられるのが。


「だから、変に気を使う必要はないし、僕も凪に対して変に気を使わないよ?」

「分かった」


心の中だけで言っておく。


ありがと、って。


私に『気を使って』、言ってくれてるんでしょ。


「で、何処行く?」

「何処でも」

「じゃあ、何処でも行こう」


何処でもいいよ。

終夜の話が聞けるなら。


まだ、今日は終わらない。















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