第五話
初めて小説を書かせていただきます。
それ故、右も左も分かりません。
迷惑をかけてしまうこともあるかもしれませんが、よろしくお願いします。
注意 この小説には『妖怪』、『陰陽師』に対する自己解釈が多く含まれています。
それでも気にしない方はどうぞ、お楽しみください
第五話
もうすぐ、深夜を迎える。お月様が丸い。
そして私は眠い。明日は高校が休みで助かる。
「詩織さん、任務失敗ですか」
「青龍、何の様だ?」
声のしたほうを向けば、私の上司『青龍』がいた。
身長も見た目も年齢も、小学三年生だ。
その幼い顔にあまりに不釣合いな言動に初めは驚いた。
今は、慣れてしまった。
慣れとは恐ろしいな。
「あなたが、まさかね」
「そういうお前も反対してるわけじゃないだろ」
「黙秘権を行使します」
結局、私は許してしまった。
終夜と、その横を歩いていくであろう、烏天狗の異端児のことを。
これは現実逃避なのかもしれない。
彼らのことを思えば、この行動は間違ってるかも知れない。
「聞いておきたい事がある。妖怪とは、一体なんだ?」
「そんな事、誰にも分からないと思いますよ」
小さな肩をすくめて私の上司が笑った。
小さく、頼りのないその肩を。
「なんなら、『玄武』あたりに聞けば分かるかも知れませんが」
「いや、いい」
『玄武』などに情報を求めたら後々厄介なことになるだろう。
全く、筋肉と天才が結びつくとは恐ろしい。
「そうそう、」
そうそう、と言ったが明らかに話し始めのタイミングを計って、言ったに違いない。
なにが、「そうそう」だ。
元々考えてあったんだろうに。
「最近、ここらへんで奇怪な事件が発生していてですね」
「『妖怪』の仕業か?」
「恐らく」
『青龍』の顔が陰る。
「ここ最近、春にしては寒い日がありませんでしたか?」
「ああ、確かに……」
言われてみれば、最近肌寒いと感じる時はあった。
「はい、発生しそうです。『怪異』が」
「……」
「詩織さんにも動いてもらうつもりですので」
いきなり大事件か。
終夜、凪、乗り越えられるか?
くく、楽しみだな。
「いや、今回は私はパス」
「奇遇ですね。僕もです」
「おい、糞上司。働け」
「言葉遣いが悪い」
上司のくせして、働かないとは。
ん? お前も働いてないだろだと?
私はいいんだよ。問題ない。決して理不尽ではない。
「恐らく、かなり強力な妖怪です」
「結局、お前は何もしないのか」
「小学三年生が働いたら問題ですよ」
く、確かにそうだが。痛いところをつきやがる。
っていうか、小学三年生がこんな物騒な会話をするのか?
「詩織さん。気をつけてください。『五神』で変な動きがありますので」
「大丈夫。そんときは部下思いのミニマム上司が身を挺して守ってくれるだろうからな」
「もちろんです。無茶はしてもいいですが、無謀なことはしないで下さい」
……胸張って『もちろんです』何て言いやがるこの上司。
実力は私では遠く及ばない。
五神の一人、『言泡の青龍』こと立花春喜には。
まあ、そこが信頼できるんだが。
分かってる。
どっかの誰かさんと違って無茶はしても無謀なことはしない。
そうだろ、どっかの誰かさんよ?
「はくしゅん!! 噂でもしてるのかな?」
すっかり暮れた、暮れ過ぎた空を見てくしゃみが出る。
いや、僕のことを噂する人物なんてそうそう居ない。
結局、凪は殺されずにすんだ。
代わりに彼女の世話と教育を任されたのだけどね。
……うちの家計は火の車になっちゃうよ。
とにかく、凪が妖怪である事は隠さなければいけない。
って言っても、見た目は人間だし、唯一気をつけるのは『翼』だろう。
まあ、服の下に隠せるからいいと思うけど。
服といえば、姉さんが『妖怪に対する切れ味』だけを操っていたから、服に傷はついていなかった。
もし、ついていたら買い換えるなりしなければならなかったから、まあ、そこはよかった。
家計的にも、僕の眼のやり場的にも。
「終夜!!」
「え? グベボバ!!」
空を見上げて歩いていたら、腹に重たい衝撃が走った。
こんな所で死ぬわけにはいかない!!
そのまま地面に倒れる。
舗装されていない道の砂利が背中に食い込む。
「な、凪?」
「終夜の馬鹿!!」
「おい、なんだよ」
僕の腹に顔を埋める少女は凪だ。
でも、声色が変だ。なんか、泣いてるみたい。
「紅鬼さんから聞いたよ。全部」
「ソウジンめ、余計な事を」
あの弱虫。逃げたと思ったらそういうことか。
後片付けはしっかりしたんだろうけど。
「なんで、終夜は、私を助けてくれたの?」
「……からさ」
どうしようかな。何て答えよう……。
ええい、背に腹は換えられない。
「え?」
「妖怪と人間が仲良くなって欲しいからさ」
「そう、なんだ。……私のためじゃなくて……」
そうさ。このままでは、いつか大きな戦争が起きてしまう。
『陰陽師』と『妖怪』の。
そんな事になったら、僕は悲しい。
僕にしか止められない。だからさ。いや、僕じゃなきゃ止められないわけじゃないね。
きっとどこかの誰かも止めようとするだろう。それでも、さ。
僕もその一人として働きたいんだ。
……。
……。
……。
……何で、泣きそうなんだよ、凪。
最後の方が聞き取れなかったけど、僕悪い事いいましたっけ?
……はあ。白状しよっか。
僕が拝みたいのは泣き顔じゃなくて笑い顔だからね。
「嘘だよ」
「え、え?」
そんなこという奴はどっかの漫画の主人公だけさ。
生憎、僕は脇役だ。
僕はそんな面倒くさい事は超ごめんだね。
喜んでどっかの誰かさんにお任せします。
『何で』かって、決まってる。
初めて会ったときから、君を見たときから、僕は、
(「やったー!!」)
抱きつかれてから僕は、君、凪のことが……。
「凪が『気に入ったから』だよ」
「ッ!! う、嬉しくないよ!! だって、そんな事言って、ぐすっ」
なんだか、あの言葉を言うのに抵抗があるんだよね。
あの、恋愛ドラマのクライマックスに出てくる二文字を言うのはさ。
「……あ、ははは。ぐす、あ、ははは、はは」
「ちょっと!? 何で泣くの?」
「ご、ごめん。初めてだからだよ。私を必要としてくれる人に出会うのが」
まあ、そうだろうね。
なんて、自惚れた事は言えない。
きっといた筈だ。凪を必要とする人や妖怪は。
『たまたま』、僕が彼女を助けただけで、僕以外の誰でも良かったんだ。
僕じゃなくても、良かったのか?
「おやおや、モテル男は辛いね、シュウ」
「でたね、『真っ先に逃げる正義の味方』」
何が正義の味方だ。全く。
正義の味方の癖して。
「ったく、『後片付け』大変だったんだから」
そう、彼の本当の活躍の場は『悪者』の前ではないんだよ。
むしろ、『正義の味方』の後ろで真価を発揮するのさ。
「お前か、凪に言ったのは」
「どうだろうかね?」
「お前だな。お前だ。お前しかいないね」
ま、いいや。
とにかく、今日は疲れた。
眠い。
「帰ろうか」
「うん」
「ちょ、僕の頑張りは無視ですかい!!」
『無茶』か。
何時からだろうかな。しなくなったのは、さ。
ま、無茶も悪くないかもね。
(うおおおおおおおおおお!!)
「ッツ!! ……『無茶』は嫌いだ」
「終夜?」
『無茶』は嫌いだ。
自己満足の塊だ。
僕には、『無茶』をする資格がない。
その所為で、僕は、一人の女の子に……。
「なんでもないよ」
そうだ、なんでもないんだ。
なんでも、ないんだ……。
あいさつ
ええっと、読者の皆様。
まずはお礼を言わしてください。
このような拙い文章にアクセスしていただき、誠にありがとうございます。
日々、アクセス数の数を見るたび、喜びが爆発してします。
そのお陰で無事、第一章をここに終わらせることが出来ました。
途中、変換ミスなどがありまして、ちょくちょく変更させていただきました。
もし、私が気付いてない所におかしな部分があるかも知れません。
これからも気をつけていこうと思います。
これからも、よろしくおねがいします。
もし、感想等がありましたら、書いていただけると嬉しいです。