第三話
初めて小説を書かせていただきます。
それ故、右も左も分かりません。
迷惑をかけてしまうこともあるかもしれませんが、よろしくお願いします。
注意 この小説には『妖怪』、『陰陽師』に対する自己解釈が多く含まれています。
それでも気にしない方はどうぞ、お楽しみください
第三話
「はあ……」
誰にも届かないため息をつく。
結局、終夜と別れたのはいいけど、行く宛てもないので『私の居場所』に戻ってきた。
薄暗い蛍光灯が私を照らす。
外は少し寒いけど、心に比べたら暖かい。
知り合いなんて居ない。
『妖怪』、一生拭うことの出来ない呪いみたいなもの。
結局、私は孤独なの。闇の中から抜け出せない。
朝はやって来ない。夜が終わらない。闇は拭えない。
なんて考えてると、あることに気がついた。
「誰!?」
足音だ。静かな夜にコツコツと足音が響く。
自分を隠すつもりが無く、むしろ主張するかのように。
「陰陽師」
工場に侵入してきた、女性を睨みつける。
セーラー服を着ているのに、肌の露出が激しい。
スカートは膝頭の上あたりで、へそも見えそう。
くびれたウエストが見え隠れ。
……関係ないんだけど、美人でスタイル抜群で羨ましいな。
……は!? だ、大丈夫、私のほうが可愛い!!
「心の声が漏れてるけど、まあいい」
心の声? 何の事だろう?
「一応名乗っておくけど、私は長浜詩織」
体の調子を確かめるみたいに、肩にかけてあった竹刀でトントンと地面を叩く。
良く響くその音に、好感は持てない。
「それじゃ、妖怪退治の始まり」
やや、大きめな胸を張って誇らしげに言った。
……く、負けてる。
って、だから、それどころじゃない!!
「周りのことは気にしなくていいぞ」
竹刀女がニヤニヤと笑っている。それが無ければ綺麗で美人なのに。
って、そんな事を考えるんじゃない私。
「簡単に言えば、容赦はしないってことだ」
詩織とか言う竹刀女は、竹刀を先をこっちに向けてくる。
深呼吸して、言ったの。
さっきまでの雰囲気を全て消し去り、殺意に満ちた目で。
「殺してあげる」
私は大事なことに気付いていなかった。
『陰陽師』、妖怪退治、殺されなさい。
理性は吹っ飛び、本能がこう言う。
殺される!
「いい顔するじゃない」
背筋に冷たい何かが走る。
これは、不味い!!
「ッツ!」
私を中心に空に向かって突風が吹き荒れる。
これで宙に浮かせて落っことせば、終わり!
「フッ!」
へ? 気がつけば私の腕にに鋭い痛みがはしっていた。
竹刀女が軽く竹刀を振っただけで、風を乱され、私の腕に傷を入れた。
「次はないぞ」
痛みにより、少しずつ今の状況がどれだけ危険か分かった。
私は妖怪。目の前の女は、
「化、け物」
「酷いな。正真正銘の妖怪に言われたくない」
なりふり構わず逃げ出す。
適うわけが無い。
っていうか、命を賭けて戦った事なんて一回も無い。
「震えてるぞ、妖怪」
聞こえない。逃げなきゃ。
あ、足が震えてる。怖い。
逃げよう。何処へ? 何処かへ。
この竹刀女が来ない場所に。
怖い。怖い。
どうする。どうする!?
助けを、……何考えてんだろ、私。
「これで終わりだ」
背中に悪寒がまたも走った。
さっきよりもより冷たい、恐ろしい寒気が。
私は本能に従い、横っ飛びで工場の敷地に飛び出す。
だけど、無駄だった。
私の片翼が、背中に別れを告げる。
「ギャアアアアアアアアアアアアア!!」
「醜い悲鳴だな、妖怪」
醜い叫び声を上げて翼があった場所を手で押さえる。
「終夜は助けに来ない。 『無茶』が嫌いだからな」
そこには温かい液体の感触があり、翼の感触は無かった。
何でこのタイミングで『助けて』なんて言おうとしてんだろう。
さっき言ったとおり、終夜は来ない。
私が彼の手を振り払ってまで、拒絶したから。
「痛い!!」
「ん、『遺体』? もうすぐなれるぞ」
ケラケラと竹刀女が笑う。見下すように。
私の身体を見えない何かが切り裂いていくのが辛うじて分かった。
痛み以外何も無い世界になった。悲鳴なんてあげられる余裕は無い。
「おや、死んじゃった?」
「お、願い、があ、るの」
最後の力を振り絞って言葉を放つ。
どうせ助からないのなら、より良い殺し方をしてもらおう。
「お、願い、があ、るの」
でたよ、出ました。お決まりのパターンが。
どうせ、「命だけは!!」とか言うつもりなんでしょ。
……でも、それもいいかもしれない。ここで、『妖怪』にさらに絶望を与えてやるのも。
ブルブルと震えながら傷だらけの妖怪は見つめてくる。
「何?」
私の顔はニヤニヤしてるかも知れない。いや、している。
思わず、笑みがこぼれてしまった……。
これが私の選んだ道なんだから、後悔はしていない。
私の過去を公開する気も無い。
だが、一つだけ言って置けば。
『妖怪』は、嫌いだ。
「あ、のね、……」
は? 今なんて言った?
気付いた時には聞き返していた。
「この翼、を斬っ、て殺して、くれな、い?」
「なに? 『実はドMなんです』って言うオチか?」
『妖怪』は首を傾げた。いや、傾げられなかった。
もはやそんな体力は無いだろう。
思えば『妖怪』にドMなんて意味が分からないに決まっている。
「この、翼が、嫌、いだから」
『妖怪』の背中の白い翼が力なく立った。
片方は私が切り落とした。そのもう片方を『斬って殺してください』。
……。
「分かったわ。叶えてやる」
「あ、りが、とう」
……変わってる。殺されるのにありがとうって。
「安らかにねむれ」
私は、『少女』に敬意を称して最高の術を使うことにした。
竹刀が私の好きな薔薇色に染まっていく。
燃えるような情熱的で美しい赤。
妖魔を焦がす憎悪の紅蓮。
……愛しき者を焦がす、魔性の薔薇……。
おっと、危ない危ない。
過去を公開してしまうところだった。
次の瞬間、あることに気がついた。
竹刀が、無い。
頭がボーっとして、とっても眠たい。
でも、眠たいまま。
意識はまだある。
生きてる事だけ分かった。逆に、生きていることしか分からない。
「 、どう う もりだ?」
眼が霞んでいてよく見えない。
けど、体が宙に浮かんでる気がする。
「なる どね、『認 を操 力』か」
次の瞬間、止まっていた体が動き出した。
何処に向かっているかは分からないけど、安心していいと思う。
私の体に伝わるその温もりがあるから。