表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
My Story  作者: とらっく
最終章~『MYSTORY』 ~
18/20

第一話

初めて小説を書かせていただきます。

それ故、右も左も分かりません。

迷惑をかけてしまうこともあるかもしれませんが、よろしくお願いします。


注意 この小説には『妖怪』、『陰陽師』に対する自己解釈が多く含まれています。


それでも気にしない方はどうぞ、お楽しみください。



第一話














『で、終夜とはうまくやってんの?』

「ま、まあね」

『良かったな、幸せそうで』

「あー、久留間が拗ねてる」

『どうでもいいだろ』


黄金週間から、はや一ヶ月。


太陽がジリジリと迫って来てるみたいに、暑い。


まあ、部屋の中は風が吹いていて涼しいけど。


私の力で。


『そろそろ、切るぞ』

「うん。立川にもよろしく」


受話器を下ろす。


終夜の実家には、まだ二匹の妖怪が住んでいる。


河童と火車。

立川と久留間。


久留間とは、あの後、仲直りじゃないけど、友達になった。

時々、今みたいに電話が掛かってくる。


とっても、嬉しい。


私が初めてできた妖怪の友達。


立川くんは相変わらず、元気みたい。


ちょっぴり久留間と良い雰囲気になってる。


良かった、と思う。


さて、私たちはと言うと。


特に、変化はなかった。


強いてあげるなら、終夜が嘘を吐かなくなった。


彼から、氷香のことを聞いた。


彼女は、成仏していないって。


初めは怒って、喧嘩したけど。


氷香ちゃんとソウジンのお陰で仲直りが出来たし。


うん、上手く行ってる。


終夜は今学校だ。


そして、皆さんに報告する事がある。


明日。


明日!!


「デートなんです!!」


恋人の関係になってからの初デート!!


ヤッホー!!


「はッ!? 私、誰に向かって話しかけてたの?」


危ない、危ない。


こんなところを終夜に見られたら大変な事になる。


「あ、お風呂洗わないと」


鼻歌を連れて風呂場に向かった。


速く、早く明日よ来い!!















「やっと、終わった、ぜ」

「やっとって、殆ど寝てただろ」


教室の扉を誰よりも早く開け、廊下に飛び出す吸血鬼。


ソウジン。


「ふぅ、明日から休みだぜ」


嬉しそうにガッツポーズをするソウジン。


周りの女子がクスクスと笑っている。


彼には、恥が無い。


どこかに忘れてきてしまったに違いない。


「明日、何か予定あるのか?」

「あるんだな、これが」


聞いて驚くなよ、と人差し指を立てて。


囁いた。


「妹が、遊びにくるんだい」

「妹? 居たのかよ!?」


初耳だ。


ソウジンの妹、想像がつかない。


茶髪で、大きな眼に……。


「ふふ、凪と同レベルだぞ」

「それは可愛いといえるの?」

「お前、彼女を可愛いと思ってないのかい!?」

「いや……そりゃ、まあ、あれだけど」

「こ、こいつ! 僕に対する当て付けか! そうなんだな!!」


彼女いない暦十四年のソウジンが僕を揺らす。


首が痛い、首が。


「で、それだけなの?」

「それだけだと!? て、てめえ、妹が遊びに来るのをそれだけだと!? ぶっ殺すぞ!!」

「声がでかい、周りの目を気にして」

「前言を挽回しろ!!」

「挽回しちゃうの!?」

「切開しろ!!」

「手術ですか!?」


撤回だよ、撤回。


切開してどうする。


「まあ、そういう訳だ。明日は可愛い妹と、むふふふふふ」

「このままだと、お前、シスコンになるよ?」

「シスコン万歳!!」

「死すコン」

「漢字が違うだろ!」


まあ、どうやら僕も恥を何処かに置いてきてしまったらしい。


「終夜先輩……」


呆れ顔の後輩が横に並んできた。


眼鏡を外して、コンタクトに変えた波佐見、計斗。


相変らず、胸ポケットには銀色の鋏。


「おお、計斗久しぶりだい」

「黙れシスコン、おっと、間違えました。宗冶さん、久しぶりですね」

「で、どうかしたの?」

「ちょっと、お話をしようと思って」


そう言って微笑みながら、全学年共同の靴箱に向かって歩いていく。


あの事件から、なんだか大人に近づいた計斗。


ただ単に敬語を使うようになっただけかもしれないけど。


ソウジンが悲しんでいた。


ロリシスコン。


二つも属性を持っている。


「妹って家宝だよな!!」

「最近、客足が遠退いてるんです」

「え、でも、またなんで?」

「そうだよな、そう思うよな!」


スルーされている事にも気づかない可哀想なシスコンは一人で大笑いをしている。


周りから冷ややかな視線にめげずに。


「良かったら終夜さん宣伝してくださいよ」

「別にいいけど、うん、いいよ」

「ありがとうございます」

「早く明日来い!!」

「それでは、私はこれで」

「じゃ、さよなら」


三つ編みを揺らしながら、同学年の輪に入っていく計斗をみて。


変わったな、って。


実感しつつ。


「お互い、明日は大事な日になりそうだぜい」

「ああ、初逮捕の記念日だね」

「『俺』が心の中でキレてるんだけど」

「一人と一匹揃ってシスコンなんだね」


僕らは、変わらないと。


一生、変われないと。


ちょっとだけ、鬱になったりしてみた。


まだ、太陽は沈まない。

未練がましく、僕らの影を作っていた。















「ただいま」

「おかえり」


風呂場のほうから返事が返ってきた。


これも、小さいけど変化してるのかなって。


希望的な見方をしてみる。


「ね、ねえ、明日、大丈夫だよね?」

「明日? ああ、うん。平気だよ」

「終夜は何処に連れてってくれるの?」

「秘密だよ、そのほうがいいでしょ?」

「うーん、五分五分ってとこかな」

「絶対楽しい所に連れてくから」


じゃあ、安心って声と共にシャワーが流れ出す音が聞こえてきた。


「後どれくらい?」

「もうちょっとかな」

「じゃあ、料理作ってるよ」


返事の変わりに鼻歌が返ってきた。


それが、嬉しくって料理に気合を込めて作るとしようかな。


小さなキッチンに収まりきらない量の調理器具を準備しながら考えた。


明日の計画と共に。


「終夜お兄ちゃん、顔がすごいことになってます」

「うわあ!? 居たなら初めから声を掛けてくれれば良いのに」

「……ふん、そんなに嫌らしい笑みを浮かべてると凪さんから嫌われます」

「嫌らしい笑みを浮かべていた!? この僕が!?」

「『精々』明日のでーと楽しんでくださいね」

「ああ、『清々』楽しむよ」

「うわ、何て都合のいい耳」


キッチンの向こう側で見た目小学五年生にため息を吐かれる中学三年生が居た。


僕だけど。


そして、幽霊にだけど。


「お邪魔虫は退散します」

「お邪魔って、何言って」

「いい? 終夜お兄ちゃん」


窓に向かってフワフワと移動しながら。


顔だけこちらに覗かせて。


「私は、幽霊。実体がありません」

「……」

「想い出も、ありません」


それでも、と。


微笑みながら。

ほんの僅かに笑って。


「これが、私の望んだ結果です」


お邪魔虫。


邪魔。


迷惑虫。


「終夜お兄ちゃんが私を見れるのは普通じゃないんです」


普通じゃない。


僕の心がささくれた。


「終夜お兄ちゃんにとって、私はお邪魔虫なんです」

「そんなことは」

「そう、思ってないですよね」


そこが、普通じゃないんです。


それだけ、言って窓を通り抜けて行った。


最後に。


「ちょっと、意地悪いこと言っちゃいました」


ごめんなさい、と。


誤りながら。

謝りながら。


幽霊は消えて行った。


僕の浮かれた心を持ち去って。


「終夜、終わったよ」

「……」

「終夜?」

「え、ああ。ごめん、何?」


僕が無心になっていたのに気付いたのは、それから五分後。















「普通じゃ、ない」


普通じゃない。


それは、認める。


僕は、普通じゃない。


だけど。


だけど!


「決して、特別じゃあないんだ」


普通でもなくて、特別でもない。


じゃあ。


「僕は、何だよ?」


答えは返ってこない。


あたり前さ。


僕は、答えを知っているんだから。


僕しか、知らないんだから。

僕と、あの子しか。


あの子。


僕を恐れ、怖れ、畏れた女の子。


僕は、恐い。

あの眼が。


あの眼で見られるのが。


体が、震えてきた。


「終夜、起きてる?」


ベットの上から言葉が飛んできた。


言ってなかったけど、相変らず僕は床の上で寝ている。

まさかとは思うけど、僕と凪は一緒にベットで寝てるなんて思ってないよね?


色々と、危険なんだ。


主に僕の理性の方が。


「終夜?」

「お、起きてるよ」

「……ねえ、終夜」


普段より優しい声だった。


それだからこそ、体がさらに震えてしまった。


全部、聞かれてた?


「一緒に、寝てくれない?」

「……」

「私、なんだか眠れなくて」


ベットの上に顔を向ければ、困ったように笑う凪と眼が合った。


「それこそ、眠れなくなると思うけど?」


もちろん、僕の本能も眠れなくなると思うけど。


ん、男としてのだよ?


「うーん、そうかなあ?」

「それに……」


まあ、察して欲しい。


これでも、僕は男だ。


色々、不味い気がする。


中学生にして、女の子と一緒に寝るとか。

同じベットの上で。


「じゃあ、私が終夜の隣に行ってもいい?」


それはそれで、申し訳ない。


「じゃあ、お互い寝惚けてたってことでどう?」


意地悪そうな顔で笑った。

僕の心、筒抜けだ。


僕の心はスッカスッカだ。


「じゃあ、いいの?」

「いいよ」


遂に、一線を越えてしまった。


このままだとソウジンをシスコンなんて言えない。


隣に凪を感じながら苦笑した。


何時の間にか、震えは止まっていた。


僕の思考も、止まっていた。















(「ば、化け物!! 人殺し!!」)



「終夜ッ!!」

「僕はッ!!」


え?


「終夜、終夜ぁぁぁぁぁぁ!!」

「な、凪?」


何で、僕はベットの上で押し倒されて。


凪が泣いている?


僕の小さな胸で。


頼りようのない、胸で。


「凪、どうしたの?」

「だって、終夜、暴れだすから」

「あ、暴れる!?」

「うん、いきなり、自分の頭を掻き毟りだすから」


必死で、取り押さえてたの。


そう言う凪の唇からは赤い滴が垂れていた。


「ああ、これは……」

「ごめん……本当にごめん」

「いいよ、それよりも、大丈夫?」

「大丈夫、って言いたいけど」


とてもじゃないけど、大丈夫じゃあない。


体が重たいし、頭も悲鳴を上げてる。


「ねえ、終夜何があったの?」

「……うーん、覚えていないよ」

「そっか」

「ごめん」

「『思い出したら』、また教えて」

「……ごめん」


ああ、凪も変わった。


こんなにも、変わっているのに。


僕は。


僕はッ!!


一生、過去から逃げれない。


だって、あの過去が今の僕を作っているんだ。


変われるはずがない。


だって、過去は何があっても変わらないから。


「今日は、ゆっくりしてよ」

「いや、むしろ、ゆっくりしてると」

「思い出しちゃいそうなの?」

「うん」

「そっか、うん、じゃあ、」


デート、しよっか。
















評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ