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My Story  作者: とらっく
第三章~切っても伐っても斬っても~
13/20

第三話

初めて小説を書かせていただきます。

それ故、右も左も分かりません。

迷惑をかけてしまうこともあるかもしれませんが、よろしくお願いします。


注意 この小説には『妖怪』、『陰陽師』に対する自己解釈が多く含まれています。


それでも気にしない方はどうぞ、お楽しみください

第三話









「はあ、はあ!!」


凪のいる場所に近づくたび、金属と金属がぶつかる音が聞こえた。


「凪!!」


住宅街から離れた、山のふもとに彼女は居た。


街灯も殆どないこんな道に腰をつけて座っていた。


後ろには、切り裂かれた街灯がバチバチと光っている。


そして。


「姉さん!?」


鋏を竹刀で弾き返す長浜詩織、姉さんが居た。


姉さんとは、僕がマンションに戻るときに別れた。


それが、どうして?


「終夜!」


凪が僕に気付いた。


つまり。


「ボケッとするな!!」


波佐見も僕に気付いた。


波佐見本来の足を使い、その速度で走ってくる。


僕に向かって。


いや、僕の関係に向かって。


「来い!!」


次の瞬間、簡単に距離を詰められ、僕の首に開いた鋏が突きつけられた。


その後。


「終夜!!」


金属音が。


僕の首を切り裂く音が。


聞こえてくる事はなかった。


「分かってるよね、波佐見後輩」

「……」


返事はない。


だったら、こうするまでだ。


僕は、波佐見に思いっきり。


引っ叩いた。


「終夜!!」

「ふざけるなよ、どうして、僕一人を襲わなかった?」

「ッツ!」


僕の心は、怒っている。


何に?


「何故、ねえさんやソウジンを巻き込んだ!!!」

「ッツ!!!」


鋏に力が入ったのが分かった


雨合羽の奥から、二つの眼が僕を睨みつける。


「分かってるよね、こんなことしても、どうしようもならないって」


分かってるからこそ。


雨合羽を着ている。

自分の正体を隠していた。


「誰かと親しくなりたいんだよね? だったら、僕が」

「……ふざけんな」


雨合羽の奥から絞り出すような声が聞こえた。


何も分かっちゃいない、と。


「うざいうざいうざいうざいうざい!!!!」


呪文のように、唱える。


その言葉を。


「何が僕がなってやる、だ!! いらねえよ! そんなもん!!!」


そんなもん、と。


確かにそう言った。


「友達なんかいらないんだよ!! 私は孤独なんだ! 私の縁を全部ぶった切ってやる!!」


そうか。

そういうことか。


波佐見が斬ろうとしたのは、僕の縁じゃない。


波佐見の縁だ。


だから、波佐見さん、波佐見の父親が斬られた。


「みんな、勝手に縁を作りやがる!! 父さんが、私の許可も取らずに勝手に新しい縁を作ろうとしてるんだよ!!!」


波佐見の母親はつい最近亡くなった。


有名人のお母さんが死んだ、という興味深いニュースは学校中を駆け巡った。


新しい、縁。

つまり。


「母さんを見捨てて新しい女と!!」


そんな縁、いらない。


そう、言った。


母さんの縁しかいらないと。


「だから、私は全て切り裂いてやる」


私の関係を。

私と繋がる関係を。


「ふ、あはははは」


笑ってしまった。


だって。


「お前、馬鹿だな」

「ああん?」


馬鹿で。


無茶苦茶だ。


「じゃあ、一つ聞くけど」


お前の。


お前の縁の糸は。


「そんな簡単に斬れてしまうの?」

「ッツ!!」

「その程度の、縁なのか?」


お前の母さんの縁も。


言い終わる前に、いや、いい始める前に波佐見が激高した。


「んなわけねえだろ!! そんな簡単に斬れねえよ!!」

「分かってるじゃん。斬れないって」

「……」

「お前の父さんも、そんな風に考えてたんじゃないのか?」


お前と、お前の母さんを信じていたからこそ。


安心して、新しく家庭を築こうとしたんじゃないのか。


決して切れることのない、糸で繋がっているから。


「それこそ、あの糞親父が私と母さんに甘えてるだけじゃねえか」

「違うよね。君が甘えてるんだ。君のお母さんに」

「ちげえよ」


何時までも、母さんに甘えてるから。


波佐見の母さん、成仏できないじゃないか。


「何でお前がそんな事分かるんだ!!」

「分かるさ、そうですよね? 波佐見、訂那さん」


はさみ、ていな。


波佐見計斗の母親。


「凪、ちょっと体に負担が掛かるけど我慢して」

「え?」

「こんにちは、波佐見、訂那さん」


次の瞬間、僕の横に居た。


波佐見、訂那さんが。


「こんにちは。雑賀終夜さん」

「かあ、さん?」

「え、うそ、どういうこと!!」


凪が眼を擦っている。


でも、結果は変わらない。


月の光に照らされて、影の無い波佐見計那が、娘に声をかけた。


僕の『認識を操る力』で極限まで存在を認識しやすくした幽霊。


「こっちにいらっしゃい、計斗」

「かあ、さん!!」


波佐見が、母親に飛びつこうとした。


しただけだった。


一歩踏み出しただけで、止まってしまった。


自分の両手の鋏を見て。

首を振った。


「ごめんなさい。私はもう、」

「何を言ってるのよ」


そう言って、計那さんは、フワフワと娘に近づいた。


「いい、計斗とはなす時間は殆ど無いの」

「うん」

「しっかり、聞いて」

「分かりました」


此処から先に、何があったかは言わないでおく。


だって、此処から先は。


僕の物語じゃないからね?


それでも、どうしても聞きたいなら。


これだけ言っておくよ。


斬っても、切っても、伐っても。


きれない者はだーれだ?















「終夜先輩、おはようございます!」

「おはよう、元気だね、波佐見後輩」


曲がり角から現れた、眼鏡の後輩に挨拶をかえす。


敬語を覚えた後輩。

嫉妬するのではなく、尊敬の目で僕を見るようになった後輩。


僕、尊敬されても困るんだけど……。


学校指定のセーラー服に身を包んでいる。


雨合羽も、鋏も無い。


無事、この話は決着がついたみたい。


波佐見のお父さんは今入院中。

でも、あと二日で退院できるそうだ。


「そうですね、私も新しい繋がりを持ってみようと思います」


詳しいことは分からない。


何度も言うけど、これは波佐見の物語だ。


僕が語るべきじゃない。


でも。

彼女は良い方向に進んだみたい。

いや、鋏の神さまも。


一人と一つで一緒に。


「もうすぐ『黄金週間』ですね」

「普通に言って、普通に」


黄金週間、ゴールデンウィーク。


「何か用事はありますか?」

「……」


ある。


とてつもない、大きな用事が。


「もしよかったら散髪しに来てください」

「え、ああ、悪いね。用事があるんだよ」

「ええー折角私が仕立ててあげようと思ったんですけど」

「ごめん」

「何の用事ですか?」


もしかして、凪さんとデートですか?


「違う」


ええー、違うんですか。


「里帰りさ」


超田舎の。


電車も車も通らない。


山奥の実家へ。
















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