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シャイターン・ルキフェール兄弟についての考察 7

(なんか・・・寒い。)



「ヘックシュ!」


 自分のくしゃみで目が覚めた。


 あー可愛くないくしゃみだわー。これだから彼氏にも振られるんだー私・・・ってのはいいとして・・・。


「んぎゃっっっっ!!!???」


 はい、叫びました!

 私が!!

 悲鳴も可愛くない、なんて言わないでっ!!!それどころじゃないんだから!


 だって、だって、だって。

 目が覚めたら、目の前に男がいたんだよ?いや、目の前って言うか、上に。私の上、だよ?

 男が眠る私に馬乗りになってたのよ!!

 驚くよね?誰だって驚くよねっ??

 可愛くない悲鳴あげちゃっても、仕方ないよねコレーーーっっ!?


「姫、起きたようですね?」


 男・・・サタンは私の悲鳴に驚いたようだったが、すぐに爽やかな笑みを浮かべて言った。


「あ・・・・・あ?」


 なにがなんだか・・・どういうこと??


 パニック状態で状況がつかめない。

 寝起きだしね、私。


 周囲を見渡すものの、辺りは暗くいまだ朝日は昇っていないようだ。

 つまり、夜なんです。はい。


(エリカよ、落ち着くが良い。)


(お局様!起きてたんですか?)


(そうじゃ。サタンの様子を見るために今まで寝たふりをしていたのじゃがな。そうそう、そなたは気がつかなんだようじゃが、近頃、妾は昼間は眠り、そなたが寝ている間に起きているようにしておるのじゃ。その方がいろいろと都合が良いように思えてな。昼間はそなた、夜は妾。これならば未熟な妾が2人分の働きをすることができる。どうじゃ?名案であろう?)


 どこか得意げな調子で言うお局様に、確かに、と私は納得してしまった。


(そっか、そうだったんだ。それで昼間は眠ってたんだね・・・じゃなくて!!)


 そう言う問題じゃない!

 いや、それはそれで名案かも知れないけど、今言いたいのはそんなことじゃなくてね!


(のんびり様子を見てる場合じゃないの!起きてたんなら、サタンを止めないと!!)


 そうこうしているうちに暗闇にも目が慣れてきた。さらさらとしたストレートのショートカットに尖ったあご先、バランスの取れた顔立ちと甘い表情。やはりどうみてもサタンだ。爽やかな笑みを浮かべてはいるが、サタンのしていることはまったく爽やかではなかった。

 12歳とは言え女性の、しかも上司であるお局様の寝室に忍び込んで、その身体に跨り服を・・・そう!なんとお局様の上衣は取り除かれてしまっていたのよ。もちろん、やったのは彼でしょうね。どうりで肌寒かったわけだ。


(なんで止めなかったの!?)


 起きていたということは、サタンが部屋に入ってきたことを知っていたということだ。彼が自分の上に乗り上げ、あげく服を取り去るのを黙って見ていたというのなのだ。


(ふむ・・・殺気は感じられなかったゆえ。)


 いやいやいや、そうじゃないでしょ!!!

 殺されなきゃいいってもんじゃないでしょ!?

 殺意は無いかも知れないけど、確実にそれ以外の目的がありますからーーー!!


 はあ、ビックリ。ほんと、ビックリーで、驚きーで、信じられないっ!!

 あのいかにも「王子様」って感じのサタンがまさか、どうしてこんな事を??


 昼間陰険メガネ・・・もとい、ルキフェールに「お局様の子作り計画」について話は聞いていたけれど、お局様はまだ12歳なんだし~ムニャムニャモニョモニョなんか先の話よね~と余裕をかましてたわけ。オトコ経験値の足りない私でも、お局様が成人するまで何年かかけて勉強すればいいよね~って。来るべき処女喪失に備えてアレコレ経験者に聞いておいたり、本とか?資料(あるのか?)もしくはエロ本とか呼ばれる本なんか読んだりして、お勉強してお局様と一緒に頑張っていこう!なんて前向きに目標を立てちゃったりして。


 な・の・に!どういうことーーっっっ???

 その日のうちに決意を試されるなんて、聞いてませんから!!ルキフェーーーールぅうううう!

 「会わせてやる」ってこういう意味ですかぁあああああ!!???

 メガネで賢そうだからイコール常識があるだろう、なんて先入観間違ってましたぁ。はい。そうですね。常識のないメガネなんかゴロゴロいますよね、そうですね。ぐふっ!

 っていう以前に、お局様まだ幼体ですからっ!!妊娠できる身体じゃないんですからね!


 こんなことをするサタンも悪いけど、お局様もお局様だ。

 自分の貞操の危機なのにぼんやり指をくわえて見ているなんて、ありえませんから!


 私は言い含めるようにお局様に注意をする。


(だめだめ!お局様、危機感なさ過ぎだよ!こういうときはすぐに私を起こして!)


(じゃが、実際サタンはまだ妾を傷つけてはおらぬし。それにそなたはすでに寝ていたゆえ、起こすのに忍びなく・・・。)


(こういう時にそんなこと気にしなくて良いの!これは一大事なの!お局様の危機だったんだからね!)


(すまぬ。怒らせたか・・・。)


 しゅん、としてしまったお局様の気持ちは伝わってきたけれど、まだまだ言い足り無かった。

 でも、そもそも幼いお局様には『男が夜寝室に忍んでくる』という今の状況がどういうことなのか理解できなかったのかも知れない、と思い直す。

 だったら、今私がすることは、お局様に貞操観念についてを言い聞かせる事じゃない。

 この状況を打破することだ!


「何をしてるんですか?サタン。どうしてここに?」


「ん?」


 私が尋ねると、サタンは笑って私の頬を撫でた。


「何、って夜這いだよ?姫を思う気持ちが止められなかったんだ。」


 お局様の意志を無視して組み敷いた、という罪悪感はかけらもなさそうな表情でサタンは答えた。開き直っていると言うよりむしろ、当然といった様子だ。


(夜這い、ってそんなストレートな!ああ、しかも、サタンが・・・あの麗しの王子様がっ!?)


 爽やかな微笑みと、甘い言葉。あの日私に触れた指先はとても優しかったはずなのに、これはどういうことなのか。

 腰の上に座られてしまって、私は起き上がることもできない。強引をすっぱ抜けて強姦でしょうが!!コレ!!!

 それをしているのは、間違いなく目の前のサタンなのに、それでも私は信じたくない気持ちでいっぱいだった。


 パチパチと瞬きする私を見つめ、サタンは微笑む。


「いつ目を覚ましてくれるのかって、ドキドキして待っていたんだよ?」


「なっ・・・。」


 殺し文句に絶句する私を愛おしげに見つめて、彼は私の頬に当てていた手をするりと首に滑らせた。

 そのまま鎖骨を撫で、胸へと・・・。


「ふ、あっ!?」


 変な声が出た!


 そう思った。

 いや、だからね?甘い囁きーとか、愛おしげな眼差しーとか慣れてないわけですますよーーーうぶぶ。抵抗とか考える以前に脳が状況判断処理に追いつかなくて・・・つまり、戸惑っている間に彼はどんどんしたいようにしちゃっているわけで・・・。


 彼に触られて、ぞわぞわと背筋が震えていく。


 硬直して動けない私を見下ろして、彼は嬉しそうに微笑む。


「可愛いね。感じてくれたの?」


「わ、私・・・んあっ!」


 胸を通り過ぎてお腹を撫でてていた手が、再び胸へと戻ってきた。その指が胸の頂をかすめると、電流が走ったかのように感じてしまう。


(なに・・・これ・・・?)


 わけのわからない感覚・・・。

 いや、わからないというよりも・・・わかりたくない。

 初めての経験が、感覚が・・・恥ずかしすぎて。


(ど、どうしよう・・・。)


(エリカ?)


(お、お局様、どうしよう、私変かも!)


(落ち着くのじゃ、エリカ。)



「震えてるね・・・怯えた子猫みたいに。」


「うぁ ・・・んん・・・。」


 サタンは私の身体に指を滑らせ、肌の感触を楽しんでいる。


(お、つ・・ぼねさまっ、どどど、どうしよう!)


(だから、落ち着くのじゃ。まずはそれからじゃ。)


(お、落ち着けないよ!無理!)



「うん?大丈夫だよ。怖い事なんてしないから。」


「だ、だって・・・ひぅ!?」


 サタンの指が胸の先端をかすめるたびに、身体に電流が走って、思考を邪魔されてしまう。


(どうしよう!どうしよう!)


(エリカ、大丈夫じゃ。サタンも怖いことはしないと言っておるし。)


(だ、だから、それは!)


 言い訳というか、口から出任せというか、いいくるめてなんとかしちゃおうぜ!っていう魂胆見え見えのぉーーーー!

 お局様にそう伝えたいのに、サタンが触れてくる動きが邪魔をする。


「あ、んっ!・・・はっ。」


「ここ・・・?」


 さまよっていたサタンの指が、わずかに尖った胸を確かめるように撫でた。


「あっ・・・や・・・やだ!」


「可愛い・・・ね。」


 サタンは確かめるように、そこを指先でこする。


「あっ・・・あっ・・・サ、サタ・・・ンっ。」


「困ったな・・・可愛すぎるよ、姫?」


「こ、困るなら・・・うぁっ!・・・や、やめ・・・あ・・・あ。」



(ふむ・・・おかしな心地じゃ・・・いや、感覚・・・か?なんともむずがゆいような・・・。しびれるような。うーむ。このような感覚は初めてじゃ。)


(お、お局様!そんな、分析してる場合じゃ!)



「やめてあげたいけど・・・やめられないよ。だって、姫が素直に感じてくれるから嬉しくて・・・ね?」


「んん・・・っふ・・・や、やだ・・・あぅ。」


 指先で執拗に乳首をこねるように嬲られれば、肌が泡立ち力が全く入らなくなった。抵抗しようにも、指で自分に跨るサタンの膝をひっかくようにするのが精一杯だ。


「や・・・も・・・やだぁ・・・サタ、ン・・・やめて・・っく。」


「ごめんね。でも、もっと見たいんだ・・・俺の可愛い子猫ちゃんが感じてるところ。」


「ち、ちがう!感じて・・・なんかっ・・・ふあぅ!」



(む?子猫じゃと・・・?こやつ先日は確か妾を小鳥と言っていたのではなかったか?のう?エリカよ。)


(そ、そんなことどうでもいいの!小鳥でも子猫でも、子豚でもっ!)


 あ・・・やっぱり、子豚は嫌だな。別にそこまで太ってないし・・・たぶん。平均体重だと思うし。ああ、でもモデル体型じゃないし、お子様体型だから凹凸なくて、子豚とか言われちゃっても仕方ないのか?でも子豚はいやん!

 って、そんな場合じゃない!!


 危機なの!

 お局様の貞操の危機なのよーー!?と、同時に私の危機でもあるのよ!!


 っていうか、サタンってば何してくれちゃってるわけ??

 夜這い、ってお局様は12歳よ!?

 ありえなくない??

 普通ありえないよね?だって、サタンはどう見ても成人男性だし、王子様って感じの爽やかな超美形なんだよ?きっとモテモテだよ?とても女に不自由とかしてなさそうなんだよ?

 なのになんでわざわざ12歳のお局様に手を出し・・・ってことは・・・ん?

 つまり、アレ・・・なのかしら。

 成人女性よりも幼女の方が好き、ってやつ?

 ロリで始まってコンで終わるアレ、ってことなの??

 マジで!?


 と、そこで再び昼間のルキフェールの話を思い出す。話の中で彼が言っていた、とっても重要なキーワードを。

 彼が「魔界人はすべて性欲を無くした」と言っていたことを!


(そ・・・そうよ、そうなのよ!な、な~んだぁもう、だったら大丈夫だよ、お局様。)


(む?大丈夫とは?)


(貞操の危機、なんかないってこと!)


(てーそー、とはなんじゃ?シーソーなら知っておるが。)


 あっはっは!シーソーね!子供の頃あれ好きだったなぁ・・・って遠い目しちゃった、きゃは!

 いやもう、安心したら許せちゃうね~それも。じゃあ、このさいテーソーはシーソーの親戚だ、ってことで。


 私はルキフェールの話を思い出したことで、サタンの言葉を真に受けた自分の過剰反応に笑い出したくなった。

 心配しすぎだったのだ。

 出生率がゼロになるほどの状態なのだから・・・つまり「できない」ということなのだ。

 性的欲求がないのだから、夜這い、だなんて冗談だったのだ。だから、彼に悪気がなさそうなのも当たり前なのだ。


(なーんだ、私ってば自意識過剰!はずかしーー。)


 そう思えば、サタンの夜中の訪問も可愛い悪戯のように思えてくる。

 私だって彼に会いたいとは思っていたし、これくらいの冗談を許せないほど子供じゃない。身体は子供でも、心はれっきとした大人の女なのだ。からかうつもりの行為なら笑い飛ばせば良いだけだ。


「もう!サタン、驚かせないでください。せっかく気持ちよく眠っていたのに。」


 それまでの様子から一変して、淀みなくなく話し出した私に、サタンは少し驚いたようだった。しかし、すぐに気を取り直して笑みを浮かべる。


「うん?ごめんね。思い立ったらすぐにでも姫に会いたくなって・・・本当は顔を見たら部屋に戻るつもりだったんだけど、顔を見たら今度は声が聞きたくなってしまったんだ。」


「なら、起こしてくれれば良かったのに。」


「そう?起こしても良かったの?もしかして、姫も・・・俺に会いたいと思ってくれていた?」


 サタンはそう言って、期待を含んだエメラルドの瞳で私を見つめてくる。

 そんな目で見られたら、否定なんてできないわけで・・・。


「うん、私も会いたかったですよ。明日になれば会えるってルキフェールが言ってたから、楽しみにしてたんです。」


 素直に打ち明けると、彼はとても綺麗に笑った。

 その笑顔があまりに素敵すぎて、目眩をおこしそうになるくらいだ。

 うーん、美形の笑顔ってキョーレツ!


 サタンは私の胸においていた手を離して、私のこめかみ辺りの髪を撫でた。


「じゃあ、俺たちは両思いなんだね?」


「え?・・・あ・・・そう?・・・です、ね。」


 両思い・・・とはちょっと違う気もしたが、お互いに会いたいと思っていたことは本当だったから似たようなものだろう。

 何より、嬉しそうにしているサタンに水を差したくなかった。もう少し、この笑顔を見ていたい。そう思う。

 それに、うっかり有らぬ疑いをかけてしまった罪悪感もある。


「そんなに見つめられたら、姫への気持ちを止められなくなりそうだよ?」


「あ、そんなに見てました?えっと・・・へへ。」


 つい彼の笑顔を凝視しすぎてしまったらしい。なんだか今の彼からは王子オーラが眩しいほど出ていて、目をそらせなかったのだ。いや、眩しいって言っても実際は夜だから相手の姿もくっきりは見えていないのだけど。

 だって、仕方ないじゃんか!人生でお目にかかったことがないくらいの超イケメンの全開笑顔だよ?しかも、それが私だけに向けられてるんだよ??

 この状況で見とれるな、って方が無理な話なのよっ!


 サタンは照れる私を見て目を細めると、ぐいと顔を私に近づけた。


 そして、緊張から解放されすっかり油断しきった私に、耳を疑うような発言をかましてくれた。






「ふふ・・・ほんと、可愛いね。なんだか姫が可愛すぎて、久しぶりに・・・したくなっちゃったかも。」

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