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女王を狙う将軍に目をつけられた下働きメイドですが、託宣の巫女により陰謀が暴かれて将軍は追放されました

掲載日:2026/03/21


女王を狙う将軍の要求を断った日から、私の給金は半分になった。


あきらかな嫌がらせ。


「でも、私は女王様にお味方します!!」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「今日もお疲れ様です」


私はそう言って、王宮の廊下を磨く。


ゴールド王国。


この国を治めるのは、女王ゴールデア陛下。


美しく、聡明で、そして誰よりも民を想う王。


私はその女王付き侍女様に仕える、ただのメイドにすぎない。


遠くからお姿を拝見するだけの存在。


それでも。


(あの方のために働けるなら、それでいい)


そう思えるほど、女王は眩しかった。


「また縁談ですか」


侍女様がため息をつく。


「ええ。今度は西方の王族からよ」


女王陛下は苦笑する。


その美貌と才覚、そして地位ゆえに、求婚は絶えない。


国内の有力貴族から、他国の王族まで。


だが――


「すべてお断りになっているのですよね」


「ええ。今はまだ、その時ではないわ」


静かで、迷いのない声だった。


その日、王宮は一層の熱気に包まれていた。


「また、クラレット王太子殿下がやってくれたぞ!」


「激戦地域の魔物を単独で壊滅だ!」


赤髪の王太子、クラレット。


人族最強とも名高い剣士。


その活躍は、国民の心を強く掴んでいた。


血のつながりこそないが、かつて王家に大きな混乱をもたらした一件の後、女王ゴールデアの養子として迎えられた王太子でもある。


そして。


女王陛下を支持する“女王派”は、ますます勢いを増していく。


だが、その裏で。


静かに焦りを募らせている者がいた。


ゴメス将軍。


六武威という伝説的英雄にも靡かず、貴族派をまとめる筆頭。


そして――


女王陛下の伴侶の座に、最も近い男。


(……あの人、苦手)


廊下ですれ違うたび、感じる。


ねっとりとした視線。


まるで、品定めでもするかのような。


「おい」


ある日、呼び止められた。


「お前、女王付きの侍女のところにいるメイドだな」


「は、はい……」


嫌な予感がした。


「最近の陛下の様子を教えろ」


「え……?」


「誰と会っている。何を考えている」


低い声。


逆らえば、どうなるか分からない。


「……分かりません。私は、そのような立場では」


「ちっ。使えないクズが」


顔が歪む。


「なら、分かるようになれ」


「ひっ」


背筋が凍った。


それから。


ささいなミスで叱責されるようになった。


なぜか私の給金が減らされた。


明らかな嫌がらせ。


それでも。


(言えない……)


女王陛下に迷惑をかけたくなかった。


そんなある日。


私は、聞いてしまった。


王宮の奥。


人のいない場所で。


「時間の問題だ」


ゴメス将軍の声。


「いずれあの女王は、俺のものになる」


心臓が止まりそうになる。


「伴侶の地位に俺がつけば、国は実質俺のものだ」


別の男が笑う。


「従わなければ?」


「その時は――排除するまでだ」


頭が真っ白になった。


足が動かない。


(……そんな……)


その夜。


私は震えながら、侍女様にすべてを話した。


そして――


女王陛下の前に立っていた。


「……そう」


たった一言。


だが、その瞳は静かに燃えていた。


「よく、話してくれました」


優しい声。


それなのに。


空気が張り詰める。


「明日、すべてを明らかにします」


翌日。


王宮の大広間。


大臣、貴族、将軍、そして赤髪の王太子クラレット。


すべてが集められていた。


その中央に、ゴメス将軍。


訝し気な表情だが、余裕のある笑みを浮かべている。


「これはどういうことですかな、陛下」


女王は、静かに告げた。


「託宣の巫女様をお呼びしています」


ざわめきが走る。


――託宣の巫女。


ゴールド王国建国以前から生きるという伝説の存在。


エルフ族ともいわれているがその正体は誰も知らず、このゴールド王国をずっと守ってきた。


ゆえに、その言葉は絶対。


王ですら、頭を垂れる存在。


やがて。


静寂の中、ベールをかぶり、顔が判然としない女性が現れた。


誰もが、無意識に膝をつく。


その存在感は圧倒的だった。


私も、自然と頭を下げていた。


託宣の巫女は、静かに口を開く。


「王の要請により、参りました」


その声は、思いのほか優しい。


チラリとゴメス将軍のほうに目を向け


「ほう、この者ですか」


空気が凍る。


そして。


「あなたの考えは王位の簒奪を意味しますよ」


たったの一言で、すべてが崩れた。


ざわめきが爆発する。


ゴメス将軍の顔から血の気が引く。


「女王ゴールデアをどう思っているのですか?・・・・なるほど、伴侶の座につけば従わせると、そして従わなければ排除」


ゴメス将軍は口をパクパクしている。


「う、うおおおおお。だから、どうした!!この国には、わしが必要だ。わしのこの武力がな!!」


そう言ってゴメス将軍は剣を抜いた。


ゴメス将軍は数々の武勲を上げ続けてきた歴戦の将軍だ。


この王宮内に騎士もいるがとても太刀打ちできる者はいない。


「女王、その座を俺に明け渡せ!!さもないと、」


そう言いながら、ゴメス将軍は女王に襲い掛かる


必死で止めた護衛騎士を3人斬ったところで、王太子クラレットが前に出た。


「どけえええ。このひょろひょろの若造がああああ!!!」


剣が振り下ろされるその瞬間――

次の瞬間、首が飛んだ。


王太子クラレットはすでに、剣をおさめ、ケガをした護衛騎士たちに回復魔法をかけている。


そこには、圧倒的な実力差があった。



静寂が大広間を支配する。


女王陛下は、ゆっくりと口を開いた。


「この国は、力ではなく、正しさで守られるものです」


ゴメス将軍の行為は、貴族派の威信も大きく削れたことを意味するのだ。


後日。


私は、中庭にいた。


「大丈夫?」


振り返ると、女王陛下がいた。


「は、はい……」


声が震える。


「怖かったでしょう」


その言葉に、涙が出そうになる。


「でも、あなたは逃げなかった」


優しく微笑む。


「家族へ渡す給金のほうも元通りにしておきましたよ」


「え?」


「従わない女官たちを貴族派の手を使って、給金を減らし従わせる、あの男はそうしてこの王城内で自分の手下を増やしていたのです」


「よく頑張りましたね」


その一言で、胸がいっぱいになる。


「これからは、私のそばで働きなさい」


「え……?」


「あなたのように権力に屈しない人が必要なのです」


信じられなかった。


だけど。


「……はい!」


私は、深く頭を下げた。


もう、ただ見ているだけじゃない。


私は。


この方のために、働くのだ。


この作品に登場する女王ゴールデアと王太子クラレットは、シリーズ本編第2作目「僕に仕えるメイドは世界最強の英雄です2」に登場します。

興味が湧いていただければ、ぜひご一読ください。

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