第6話 宋国からの刺客
「なんだい、あんたは。邪魔する気かい」
カーリーは、ラクシュミーの方に曲刀を突きつけつつ、もう一方の手に持つ曲刀を、乱入者・高俅へと向けた。
刃を向けられても、高俅は平然とした様子でいる。
「そうカッカしなさんなって。すぐに済むからさ」
トン、と足音が聞こえた。
次の瞬間、離れていた距離をあっという間に詰め、高俅はカーリーの懐へと潜り込んでいた。
「な⁉」
その速さに驚きつつも、カーリーはすかさず反撃に出ようとしたが、間に合わなかった。カーリーの曲刀が振り下ろされるよりも先に、高俅の蹴りが、彼女のみぞおちへと叩き込まれた。
「がっ……!」
カーリーは呻き、前のめりに倒れそうになる。
そこへ、さらに高俅は追い打ちで、彼女の後頭部へと踵落としをお見舞いした。頭部に激しい衝撃を受けたカーリーは、白目を剥いて倒れ伏した。
「カーリー様!」
「おのれ、異国人が!」
カーリー海賊団の船員達が、一斉に高俅へと襲いかかる。
だが、あのカーリーを一瞬で倒した男を相手にして、敵うはずもない。次々と蹴り飛ばされ、ある者は甲板に転がり、ある者は海へと落ちていく。
ある程度船員達を掃討したところで、高俅は、今度はラクシュミーへと目を向けてきた。
カーリーが倒れたお陰で、すでに自由になっているラクシュミーは、先ほど落とした剣を拾い上げて、高俅と相対して構えた。
「うちらの戦いに割って入ってきて、何が目的なの?」
「そいつは話せば長くなるんだが、簡単に言えば、おたくらを連れ去りに来たんだよ」
「連れ去る?」
「宋、って国を知ってるか? 俺はそこからやって来た。皇帝陛下の命令でな。俺は本来こんな現場に出張るガラじゃないんだがな、大役ゆえに失敗は許されない。重要な任務なんだよ、これは」
「うちらを連れ去って、どうしようってゆうの?」
「そいつは、宋に着いてからゆっくり説明してやるよ」
ニッと高俅は笑った。
トン、と足音。
敵の攻撃が来ることを読んだラクシュミーは、咄嗟に自分の正中線を守るように、剣を縦に構えた。
一気に距離を詰めてきた高俅の蹴りが、剣へと叩き込まれた。
あまりの衝撃の強さに、ラクシュミーは体ごと弾き飛ばされた。船の縁から宙へと飛び出し、そのまま海へと落下する。
着水と同時に、潜水していたマヒとネハが、顔を出してきた。
「船長、大丈夫⁉」
「カーリーにやられたの⁉」
「違うんだ、急に――」
この突然の異変を説明しようと、ラクシュミーが口を開いた、その時。
「姉様、危ない!」
上からカイラの声が飛んできた。
ハッとなり、頭上を見上げると、高俅が衣をはためかせて落下してくる。
「逃がさないぜ」
それが、意識がある内に聞いた、最後の高俅の言葉だった。
頭頂部に強い衝撃が走った。
直後、ラクシュミーは気を失ってしまった。




