第4話 海賊の戦い
降り立つやいなや、カーリーは二本の曲刀を振り回し、ラクシュミーに襲いかかってくる。ラクシュミーは後退しながら、相手の攻撃を防ぎ、いなしていく。
「はっ! どうしたどうした! 防いでいるだけじゃ、あたしは倒せないよ!」
「もちろん、わかってるよ」
ニコッと微笑んだラクシュミーは、突如、姿勢を低くして、カーリーの攻撃を掻い潜った。そして、相手の背後へと一気に回り込んだ。
「ちっ!」
カーリーは舌打ちし、後ろを振り向いたが、眼前にラクシュミーの剣が迫ってきたことで、反撃は間に合わなかった。二本の曲刀を交差させて防御する。
「次はうちの番だよ!」
猛然と連撃を仕掛けるラクシュミー。一本の剣と、二本の曲刀という、彼我の得物の数の差はあれど、そのようなことは関係なく、カーリーに反撃の機会を与えない。
気が付けば、カーリーは、船の端に追い込まれていた。
「まさか、ここまでとはね……やるじゃないか!」
予想外のラクシュミーの強さに、カーリーは思わず賞賛の言葉を送った。
「ますます燃えてきたよ!」
船の端で、もう後がない状況であるにもかかわらず、カーリーはラクシュミーの攻撃を全てしのいでゆく。さすが「遮るものなし」の異名を持つ海賊だ。鉄壁の強さを誇っている。
そうしている間に、ラクシュミーの周りに、敵の船員達が集結し始めていた。今はまだ、頭領の一騎打ちを邪魔してはならないと思っているのか、攻撃は仕掛けてこない。しかし、この取り囲まれている状況、いつ背後から攻めかかられてもおかしくはない。カーリーがいよいよ危ういとなれば、加勢に入ってくるだろう。
(うーん、一気にケリつけて、終わらせるつもりだったんだけどなあ)
ラクシュミーは内心苦笑している。作戦その一は失敗だ。
ならば、次は作戦その二だ。
突然、グラリと船が傾いた。船尾の方が少しずつ沈んでゆく。
「な、何ぃ⁉」
カーリーは驚きの声を上げた。
「よしっ! さすがマヒネハ!」
開戦当初、マヒとネハを海の中に飛び込ませたのにはわけがある。彼女らは泳ぎを大の得意としている。水の中に長く潜っていることも可能だ。その能力を生かして、敵母船の下へと潜り込ませて、船底に穴を開けさせたのだ。
「カーリー様、大変です! 船底から浸水しています!」
「急いで修復しな! この船を沈ませるわけにはいかないよ!」
船員に指示を出したカーリーは、ギロリと怒りの目をラクシュミーに向けてきた。
「随分と姑息な手を使うじゃないか!」
「だって、うち、海賊だもーん」
ベー、と舌を出して、ラクシュミーは相手を挑発する。
その直後、カーリーはなぜか意地の悪そうな笑みを浮かべた。
「そうかいそうかい。なら、こっちも海賊らしく、対抗させてもらうよ」
「どうゆうこと?」
「アディティ!」
カーリーは、部下の名前を呼んだ。
それに答える声が、ラクシュミーの船の方から聞こえてきた。
「まさか……!」
ラクシュミーは慌てて、カーリーを放って、自分の船の様子を見に行った。
嫌な予感は的中した。
自分の船の上に、敵が一人乗り込んでいる。
そして、その敵は、カイラを背後から捕まえて、彼女の首筋に剣を押し当てていた。
「ごめんなさい、姉様」
涙声で、カイラは謝ってきた。




