第3話 カーリー海賊団
風が出てきた。追い風だ。
これで正面から会敵出来れば理想的だ、とラクシュミーが考えていたところで、物見台から鐘を鳴らす音が聞こえてきた。
「見えました! 三隻! カーリー海賊団です!」
先ほどから船影は見えていたが、旗印まではわからなかった。肉眼で確認できる距離まで近付いたことで、相手がカーリー海賊団であるとわかった。
いよいよだ、とラクシュミーは剣の束を握り締めた。
決戦の時が来た。
「全速前進! あいつらの船の間に入り込むよ!」
「姉様、でも、それでは、挟み撃ちにされてしまいます」
「いいんだって、カイラ。うちに任せな」
ラクシュミーはニッと笑った。自信に満ちた笑顔だ。
やがて、ラクシュミー海賊団の船は、カーリー海賊団の船と船の間に滑り込んでいった。
たちまち、左右から矢が雨のように飛んでくる。ラクシュミー海賊団の船員達は、盾を構えて、ひたすら防御に徹している。
矢による攻撃が尽きたところで、ラクシュミーは指示を出した。
「マヒ! ネハ! 頼んだよ!」
マヒとネハの双子の姉妹は、すでに水着姿になって待機していた。その両手には、ハンマーや木挽き鋸、ノミ等の木を削るための工具が握られている。
「りょーかいです!」
「です!」
二人は揃って返事をし、海の中へと飛びこんだ。
それと同時に、ラクシュミーは三隻ある敵船の内、真ん中の一隻へと飛び移った。恐るべき跳躍力だ。まさか板もかけずに乗り込んでくるとは思っていなかったか、カーリー海賊団の船員達は、一瞬怯んでしまった。
「姉様⁉」
「もう一隻のほうは頼んだよ、カイラ!」
「え? あ! は、はい! わかりました!」
指示を受けたカイラは、もう一方の船に対抗すべく、ラクシュミーに代わって指揮を執り始めた。
「さーて、久々に大暴れしちゃおっかな」
剣を構えたラクシュミーは、嬉しそうな声を発する。
カーリー海賊団の船員達が雄叫びを上げて襲いかかってきた。やはりこちらの船も、構成員は若い女子ばかりだ。
ラクシュミーは豪快に剣を一薙ぎした。風を切り裂く音が聞こえるほどの勢いだ。敵の船員達は、ある者は驚いて後退し、ある者は持っていた剣をはたき落とされてしまった。
「あっははは! たーのしーい!」
無双の時間が始まった。ラクシュミーは敵船の中を縦横無尽に駆け回り、次々と、敵船員を無力化していく。全員、斬って捨てるまでもない。剣をはたき落とすか、急所に蹴りを入れて昏倒させるかで、生かしたまま倒してゆく。
「あんた、いつから、そんな生ぬるい戦い方するようになったんだい」
貫禄のある女の声が、頭上から降ってきた。
ラクシュミーが見上げると、物見台に、一人の女が立っている。
いつでも海に入れるよう常に水着姿の軽装なラクシュミーとは対極的に、相手の女は、金銀赤白の刺繍をちりばめた豪奢な衣に身を包み、全身に高価な宝飾品をまとっている。
あれこそが、派手好きで有名なカーリー海賊団の頭領、カーリーである。
「そんなところにいないで、降りてきなよー!」
「言われなくてもそうするさ」
物見台から飛び降りたカーリーは、ラクシュミーの目の前に着地した。




