第1話 ラクシュミー海賊団
透き通るような青空の下、大海原がどこまでも広がっている。
カイラは甲板の上でグッと背伸びをした。頬を撫でる潮風が心地良い。カモメの鳴き声が耳に優しく響く。
(海の上はやっぱり落ち着くなあ)
特に船の仕事で得意なものがあるわけではなく、海賊団頭領であるラクシュミーのお世話係として乗せてもらっているだけなので、肩身が狭いところはあるが、それでも、カイラは船に乗るのが大好きだ。
何よりも、敬愛するラクシュミーの側にいられることが嬉しい。
生まれた時から奴隷として差別的待遇を受け続けてきた自分を、ある日颯爽と現れて救ってくれた、大海賊ラクシュミー。彼女のことを、カイラは「ラクシュミー姉様」と呼んで慕っており、ラクシュミーもまたカイラを実の妹のように可愛がってくれている。
鐘の鳴る音が聞こえる。昼食の準備が整ったのだ。
「ラクシュミー姉様を呼ばないと」
カイラは甲板を小走りで進んでゆき、船首の方にいるラクシュミーのもとへと向かった。
いた。甲板の上に、両手を枕代わりにして、仰向けに寝転がっている。目は開けているから、起きているようだ。
(ああ……今日も姉様は美しい)
しばらく立ち止まって、カイラは惚れ惚れとラクシュミーのことを眺めていた。
海賊団の頭領をやっているのが信じられないほど、ラクシュミーは整った容姿と、抜群の肢体を持っている。着飾ればどこかの国の姫君となっていてもおかしくない秀麗さだ。
胸の昂ぶりをなんとか抑えながら、カイラはラクシュミーの近くへと歩み寄った。
「姉様、何を見ているのですか?」
「空の海」
鈴が鳴るような高く愛らしい声で、ラクシュミーは答えた。
「空の……海、ですか?」
「見てみなよ。空にもああやって青い海原が広がってる。雲の島々もある。うちの夢は、いつかあそこで船を走らせることなんだ」
「お空で航海ですか。それって、とても素敵ですね」
カイラはクスクスと笑った。ラクシュミーの語ることは、いつだって壮大で面白い。馬鹿にする人も中にはいるが、それはその人の器が小さいだけだと、カイラは思っている。
それに、カイラは信じている。ラクシュミー姉様なら、ただの大法螺で終わらせない、と。いつか必ず、空に船を走らせる日が来るだろうと、心からそう思っている。
「ところで姉様。もうお昼の時間ですよ」
「みたいだね。今日の食事当番は、マヒとネハの二人だっけ?」
「ええ。あの子達で大丈夫か、ちょっと不安ですが……」
「平気っしょ。あの歳で、二人だけでずっと生き延びてきたんだから。ご飯を作ることくらいわけないって」
「ですね」




