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マチアプヒーリング

作者: 玄米茶
掲載日:2025/12/19

マッチングアプリで出会った彼女とはすんなり会えた。居酒屋で食事をし、広島に旅行に行くことまでその日に決まった。会話のフィーリングも合うし、音楽が趣味というのも同じだ。





彼女は保育士をしていて、職場での不満を漏らしていた。「子どもは好きなんですけど、事務処理とか人間関係がややこしくて」と。





そんな話を聞きながら、ホテルは彼女が手配し、車は僕が出すことに決まった。





マッチングアプリで初めて会えた異性。


その嬉しさは計り知れない。だが、彼女はふくよかだった。悪く言えば巨漢だった。





居酒屋の前で待ち合わせた時、彼女はそこに立っていた。黒のジャンパーに黒のジャージのようなズボン。化粧っ気もなく、体格はふくよかだった。





僕は彼女に対して性的魅力を抱こうと努力した。彼女が居酒屋で愚痴をこぼしている最中に彼女の瞳、唇、胸に目をやり、セックスができそうか、すなわち興奮できそうか判断していた。頑張れば旅行先のホテルでその気になれるかもしれない。その時はそう感じていた。





「また明後日」と言って僕らは別れた。アプリで車を予約して、その日までにさらに身体を絞った。朝からランニングを1時間ほどこなし、お風呂上がりには美肌パックをして、当日に備えた。





洋服はZARAの黒ジャンパーに黒のパンツを合わせ、シンプルイズベストに努めた。





待ち合わせ場所はJR沿線の駅の南口。


「よく路上ライブしてるところあたりに着きました」と彼女からラインがあった。


「すぐ近くのファミマの前にいるよ」と返信した。





彼女がスーツケースを転がしながら車の前まで現れた。


少しばかりか期待していた。多少は痩せているだろう。化粧っ気が生じ始めているだろう、服装に気を遣い始めているだろう、そのどれでもいい、僕は期待していた。


しかし、彼女は以前よりむしろ太っていた。そして、同じ黒のジャンパーに黒のジャージのようなズボンをはいて、化粧っ気も全くなかった。そしてこちらを見て少しニコッと笑っているのが不快に感じた。





彼女が後部座席のドアを開け、スーツケースを入れた。そして、助手席に座った。





「お仕事お疲れ様」と僕は声をかけた。





「今日は定時で上がりました。そうしたら同僚に嫌な顔をされました」とつぶやいた。





同情心は抱けない。僕はナビを入れて車を発信させた。高速に入ると彼女はいびきをかきながら眠り始めた。彼女の肩幅が広いことに気づく。





真正面を向いていても僕の左目まで入ってきそうなほどに隣に座る彼女の横幅が広かった。


そして、暖房をオフにしているのに、とても暑く、汗が滲んできて僕は窓を少し開けた。隣に聞こえない程度のため息を開けた窓の隙間に漏らした。





「あまり食べないんですよ」と彼女が居酒屋で話していたことを思い出した。なのに彼女は太っている。それが腹立たしく思えた。





車を運転しながら何度も考えた挙げ句、彼女とは寝れないなと感じ、目的地に着く直前、1部屋しか取っていなかった部屋を2部屋にできないか寝起きの彼女に車中で提案した。





「お互い緊張して眠れなくてもあれだし、部屋2部屋に変更できないかな?」





「私も迷ったんです」と彼女は言った。





実は居酒屋の席でホテルの部屋をどうするか話していた時に僕が「1部屋」にしようと言っていた手前、なんだか申し訳なく、気まずくなって、お詫びにコンビニでデザートを奢ることにした。








チェックイン時、幸い、部屋をもう1部屋取れて、僕はまず彼女の部屋に入り、一緒にコンビニで買ってきたドリアを食べた。部屋はダブルだった。ちょっと可哀想だと思ってしまった。





僕が食べ終わる頃、彼女は「まだ時間かかるからもう出ていいよ」と言いながらスイーツのカップを自身の手前に寄せた。なんとなくいじけているようにも感じた。でも僕は気づかぬふりをして「ゆっくり休んでね」と言って部屋を出た。





1個下の階の自分の部屋もダブルだった。ベッドに横たわりながらアルバイト先の可愛いD子ちゃんと一緒ならどれだけ楽しかっただろうと思った。同時に1個上の階にいる彼女のことが腹立たしく思えてきた。





これだけ絞って美肌パックをして、オシャレして一緒に旅行に行く相手がこんなおデブさんだからだ。





どう考えても釣り合っていないと感じた。














彼女とはもう無理だ。この旅行を最後にもう会うことはないだろう。





こんなふくよかな人とホテルに一緒に入って、街中を歩いて一緒に食事をする。いろんな人に見られていろんな憶測が飛び交っていたかもしれない。


もう恥も変なプライドもなくなった。これからはどんな美女に対しても直球ストレートでアタックできそうな気がしていた。仮にデートの誘いを断られても「あのふくよかな彼女と一緒に出歩くよりはマシだ」と感じられることだろう。





僕は彼女と出会えたことに心から感謝した。彼女がそれをもたらしてくれたのだから。





彼女には幸せになってほしい。そのためには今、この関係が終わることが1番だ。





彼女に気づいて欲しい。そう思った。そしてもっと魅力的になって僕なんかよりいい男性と出会ってほしいと。







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