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篠崎涼風の推理航海記

作者: 京のカモメ
掲載日:2025/10/07

学校の音楽室に中から鍵を掛け閉じこもってしまった音楽教員のウタタネ先生。窓を割って教室内に入るとそこには巨大な氷柱つららに氷漬けされたウタタネ先生の亡骸があった…

篠崎涼風(しのさきすずか)はいちごばたけ学園

に通う17歳の女子高生

学園始まって以来の秀才と呼ばれている

容姿端麗学業優秀

学園のマドンナとして学園生徒の憧れの存在だった


そんなある日音楽室に閉じこもり作曲活動をしていた

音楽教員のうたたね先生が中から鍵を閉めて3日間

外に出てこなかったのである


うたたね先生は56歳の髪の毛がモジャモジャの

疲れた感じのオジサンだが生徒には人気の音楽教員だった

うたたね先生は素晴らしい楽曲をひらめいたと

教員室の先生たちに告げた後

音楽室に入った後中からガチャンと鍵を閉めて

でてこなくなってしまったのである


不審に思った先生たちは音楽室の外から声をかけ

ドンドンとドアを叩いて返答をまったが

なにも応答は無かった


音楽室の頑丈な防音ガラスを割って中に入ることを決めたのはうたたね先生が音楽室に入って3日後のことだった


体育教師の遠藤先生が屈強な体を揺らしながら

野球のバットを持って音楽室の前にやってきた


「壊しまっせ」


そう言うとバットを振り下ろして

音楽室の防犯窓を一撃で叩き割った


中に入るとうたたね先生は立っていた

立っていたというよりは立たされていた

氷柱(つらら)を逆さまにしたような氷の棺に

うたたね先生がフルートを吹いた格好で

氷柱のなかで眠るように閉じこめられていた


「うたたね先生」


学園の一同が声を出した


「氷の棺をどうやってこの中にもちこんだんだ?」


数学教師の白石先生がロングヘアーをゆさりと揺らして言った


「春のこの季節で氷の棺が溶けずに残っているなんてうたたね先生が殺されて間もないんだわ」

女子生徒の一人がそう言った


「密室殺人だ…」ある男子生徒がそうつぶやいた


内側から鍵をかけ氷の棺に閉じこめられてうたたね先生が殺されている

一般には完全理解不能の密室殺人だった


山奥に住む仙人のようないでたちの教頭先生がいった


「だれがこんなひどいことをしたんじや?」


「分からないけど常軌を逸した殺人方法だわ」


数学教師の白石先生が真っ赤な唇を噛んで言った


警察を呼びましょうとだれかが言った後

「あの御方に相談してみましょう」

と音楽室の隅にいた女子生徒がポツリと呟いた

「篠崎涼風さんに事件を解決してもらいましょう!あの人ならこの難攻不落の密室殺人をすぐに解決してくれると思うの」

「それはいい考えだ篠崎涼風さんなら事件をすぐに解いてくれるだろう。あの頭脳は国家の至宝だよ」

「そうだ篠崎涼風よ」

生徒達が口々にそうまくし立てた


「篠崎涼風は今どこにいるんだ」

仙人のような髭を揺らしてモゴモゴと教頭先生が言った


「私はここにいます」


音楽室の扉にもたれてロングの黒髪美少女が

ゆっくりとした口調でそう言った


「篠崎涼風君か」


仙人のような髪の毛を逆立たせて教頭が言った


「密室殺人にお困りのようですね。でも大丈夫です私が来たからにはこの難攻不落の密室殺人トリックと犯行に及んだ人物をすぐに解決してみせましょう」

「おおそれは心強い」「さすが篠崎涼風だ」

「学園の宝だ」「いえ日本國いや世界の至宝よ!」

狭い音楽室で生徒たちが騒ぎだした


「ではまず音楽室に巨大な氷柱を持ち込めたのか?お答えしましょう」

篠崎涼風は凛とした表情を崩さなかった

「おお」歓声が響く


「そしてうたたね先生はフルートを吹いた姿で氷漬けにされたのかもワタクシもう理解しました」


「篠崎君!あなたはすべて解決してしまったのじやな?」

仙人のような白髮がハラリとゆらして教頭は言った


「ハイ!教頭先生ワタクシにはもうすべて解決できておりますのよ」

「ほう。では真相を聞かせてくれないか?篠崎涼風君」

「いいでしょう…」


篠崎涼風は少しうつむいて短い沈黙の後

口をそっと開いた


「そんなことより」


涼風は歌うように口ずさんだ


「そんなことより?」


そこにいた全員が口を揃えて言った


「そんなことより私たち踊りませんか?」


思いも寄らないセリフに全員たじろいでしまった


「せっかく音楽室で生徒教員が集まってるんですもの踊りましょうよ。みんなで歌って踊れば嫌なことも忘れられるのよ こんなくだらないちっぽけな事件もみんなで歌って踊れば疲れて寝ちゃってすべて忘れて事件解決よ」


篠崎涼風は生徒教員全員が思いも付かない事を言い出したのである。


仙人のような喉仏をゴロロと鳴らして教頭は


「なんという閃きじゃ!」


と感嘆の声を漏らした


「ウタタネ先生なんて独身で身寄りのない学校の穀潰しなんだからいちいち考えるだけ時間の無駄じゃないかしら?そんなことより生徒教員が一同に集まる機会なんてそうそうないんだから歌って踊りましょうよ!それがウタタネ先生の弔いにもなると思うの」


「これが天才か…」


仙人のようなシワシワの手をプルプル揺らして教頭先生が言った


生徒教員は何も言わず隣どうしで手をつなぎ始めた

教室内で輪になって

氷柱を中心にキャンプファイヤーをしてるみたいだった


「さぁ歌いましょう」

「さぁ踊りましょう」


篠崎涼風は高い声が鳴り響く


それに続いて校歌を合唱しながら

踊り始めた


校歌は風に乗って

どこまでもどこまでも

私たちの町に

轟いていたのであった



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