第6話 少年は安息を忘れて
試験合格から数十日後、
僕たちは卒業式を終え新しい学校生活が始まった。
卒業式に関しては対して差別なんてものもなく、
とても平凡的で穏便なものだった。
あぁ、今までの3年間もこんなんだったら良かったのに。
どうやら技楽さんの方針は局所集中特化らしく、
今は前理事長の頃から続いていた、
高校でランク差別制度を徹底的に排除しているらしい、
現にそれでDGのランク差別は、
圧倒的に軽減されたので効果はあるのだろう。
まぁそのせいで地獄の3年間を送ったわけなのだが。
まぁ高校からはマシになるだろう。
そして僕以外のE組の皆は中卒だったり、
他の高校に行ったりいろいろな道を辿った。
そうして僕は今新しい学校生活の始まりとなる高校の校門の前にいる。
選ばれたものしか行くことのできないDG育成機関の高校、
それは学校の見た目からも伺うことができた、
前に試験をした会場のように、
周りの建物とは一線をかくす様な、
巨大で豪華でどこか歪な近未来的な見た目をしていた、
「おーい、
何してんだ?
早く入るぞ!」
先に校門をくぐった天灯が左手を高く振り上げ僕を呼ぶ。
「はいはいすぐ行く!」
相変わらず他人の羞恥心とか全く考えない奴だな、
僕は駆け足で天灯の元へ向かう。
「にしてもでけーな」
「もうちょいまともな感想はないのかよ。」
「いやだって…
て言うか入学式嫌なんだけど」
「なんでさ?」
「…当ててみ」
「どーせ、
主席のスピーチがあるんだろ」
「な、どうしてわかったんだ!?」
「お前これ中学の時もやってたろ、
お前そう言う堅っ苦しいの苦手だからな」
「さすが俺の幼馴染!
よく分かってる〜」
「16年も一緒にいりゃあこのくらいはわかるよ」
「…そうかもな」
天灯はその一言を聞いて遠くを見て朧げに答える、
彼的にも色々思うところがあるのだろう。
そんなこんなで入学式の会場となる体育館に着き入学式が始まる。
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ーーーーー「次に入学生主席、
新重 天灯様。」
「はい!」
天灯は前に出て彼のスピーチが始まる。
そのスピーチは新入生主席として恥がなく周りの視線をものともしない、
とてもハキハキとした素晴らしいものだった。
あいつ嫌だなんという割にはちゃんとやるとこやるからなぁ…
僕は台本にほとんど視線を移さず喋り続ける天灯を眺め、
どこか誇らしい気持ちを感じているのだった。
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ーーー入学式が終わり僕は自分のクラスへと向かった。
「1年D組ここか」
程よい温度の昼日に照らされた教室は、
同じクラスになったことを喜び合う生徒たちで賑わっており、
とても明るい雰囲気が漂っていた。
高校ではどうやら意識改革の影響もあるらしく、
クラスには特にランクの差などはない…らしい、
(実際のところは知らんけど)
そんな感じなので僕はせっかくなので、
入学式の時に配られたクラス表のメンバーは見ないことにしていた。
まぁちょっとした遊びみたいな感じだ。
せっかくクラスにランクが関係ないなら天灯と一緒のクラスがいーなーと、
思いながら教室を見回すと、
ひとりの女性と目があった。
所々が金色に染められた短い黒髪、
学校指定の紺色のスカートと少し緑がかった灰色のベストのよく似合う、
上品な雰囲気を放つ女性。
「「マジかぁー」」
目が合うのと、
事前に打ち合わせでもしたんじゃないかというほどに、
ピッタリと息の合った言葉を浮かべる。
「マジかぁーお前かぁー」
「ほんっと最悪」
「なんだその反応お前もクラス表見なかった口か、
お前みたいなお嬢も案外僕みたいな思考するんだな」
「失礼ね!
別に見ようが見まいが私の自由でしょ!」
「そりゃそうだ、
て言うか天灯はこなさそうか?」
「あぁ、待って今クラス表見るから」
星来はすぐ近くにあった自分の席にかかってたバックから、
ファイルを取り出しそこからピンク色の紙を出す。
そこには大々的に「入学おめでとう!」と印刷されている。
こんな時代にわざわざ印刷されたプリントとは、
古臭いと言うべきか、
伝統とでも表現すべきか。
星来は人差し指でD組の名前の並んだ欄をなぞり、
天、天、天、と小さく刻む様に呟き探していく。
そして富谷という名前で手を止め、
小さくため息を吐いてプリントをファイルに戻す。
「残念、別のクラスよ。」
「そっか…」
僕は出来るだけ顔を崩さない様にしたが、
僕と星来の間でどんよりとした空気が流れる。
こいつと一緒って言うのはなんか癪でけど、
やっぱり仲良い奴が一緒じゃないのはいつになっても悲しいな。
ーーー気を取り直し僕は黒板代わりの巨大なモニターに映し出された座席表を見て自分の席を探す。
「えーと27番、27番は、
あった!
一番左の列窓側下から3番目か」
そして僕はギリギリ主人公席にならなかった自分の席を見つけその場所へ座る。
ふと隣を見た次の瞬間隣の席の女子と目が合う。
その女子は所々薄紫の混じった紫ショートヘアーで、
紺色のスカートと緑がかった灰色のベストのよく似合う、
ファッション雑誌にいそうな陽気な女子。
僕はこの女子を見たことがある。
「あー君はこの前のお兄さん!」
「あ、
お久しぶりです。」
「へー、
この学校だったんだ!
て言うか敬語とかいいよ!
君は私の命よ恩人なんだし!」
「えーとじゃあそれじゃあ、
改めてよろしく兎崙」
そんな感じで予想外なことに言葉を詰まらせた僕をよそに、
ガツガツ喋りかけてくるので僕は少し引き気味で会話をする。
「あー!
私の名前覚えてくれてたんだ!」
「まぁ、
数日前のことだしあの日は色々印象に残ること多かったから。」
「へぇーそうなんだ、
て言うか君の名前聞いてなかったね。」
「確かにそういえば、
えーと僕の名前は宮本 桐幸、
よろしく」
「よろしく〜」
なんて会話をしているとチャイムが鳴り出し、
その聴き慣れた音が学校中を包み込む。
少しすると少し気だるげな女性の先生が入ってくる。
高校最初の授業が始まる。
とは言ってもちゃんとした授業はまだやってはいないのだが。
ーーー入学式の後聞いたのと同じ聴き慣れた音が学校中に響き渡り、
授業の終わりを告げる。
今日の授業が全て終わり下校時刻になった。
いつもなら速攻で天灯を連れて帰っているところだが、
意外にも兎崙との会話が楽しくって最終下校時間まで長居してしまった。
「あ、
もうこんな時間か、
そろそろ帰らなくっちゃね」
「そだね」とそんな感じで返事を返していると、
何やら廊下が騒がしい。
「?、何だろう」
兎崙が首を傾げ、
じっと廊下の方を見つめながら廊下へ歩み寄る。
「あ、
そっか、
毎度恒例のあれか!」
僕はふと思い出した。
小学校の時にも中学の時にもあったあのイベントを。
「待ってよ天灯様ー」
などと言う色気付いた声が廊下に響き渡る。
もはや恒例行事の天灯ハンティングだ!
後で知ったのだがどうやら星来もいたらしい、
さすがは天灯ファンクラブ会長だ。
「おい桐幸!何やってるんだよ、
早く帰るぞ!」
天灯は廊下の奥から聞こえる声にも負けず劣らずの、
荒々しい音を立てて扉を開けて僕を呼ぶ、
新品のはずの制服は入学式の時とは違い所々はだけ、
髪はせっかく気合を入れて長髪を切り落として整えたと言うのにボサボサで、
女子たちにもみくちゃにされながらきたのだろう。
「はいはいわかったよ、
それじゃバイバイ!」
「うん、バイバ〜イ!」
なんて会話をして僕は兎崙と別れ天灯と一緒に雪崩の様な、
女子の大群から能力を駆使しながらも逃れた。
入学早々能力の違法仕様なのだが、
まぁあれに捕まるくらいならまだマシだろう…たぶん。
ーーー照らされる夕日が焦げ熱く静かになった帰り道にて、
「そういやぁ、
学校で話してたあの女子誰?
彼女?」
天灯が予想外のことを不意打ちで言ってきたので、
思わず飲んでいた水を吹きかるところだった。
僕は危うく気管支に入りかけた水をなんとか飲み込み、
弁明の言葉を紡ぐ。
「兎崙のことだろ?
いやいや違うし、
ただ前にチンピラに追っかけられてたのを助けただけだよ」
「何ちゃっかり助けてるんだよ。
…にしても、もしかしたら…」
「…?、どうした?」
「…いや、なんでもない。
て言うかほんとお前巻き込まれ体質だよな」
「?、そんなに巻き込まれてたっけ僕」
「…まぁな」
「ふぅ〜ん、
覚えてないや」
「思い出さなくていいと思うぞ」
「そう?」
「そおそお、
て言うか実際どうなんだよ、
その兎崙って子は」
天灯は「なぁなぁ」と言いながら肘で僕の肩を押してくる、
「どうもクソもないよ、
ただの女友達だよ」
「なぁーんだ面白くないの、
でもまあお前が女子に話しかけれるだけ進歩か」
「随分と小さな一歩だこと」
「いやお前換算だとめちゃめちゃ大きな一歩だぞ!」
「…僕舐められすぎだろ」
そんな会話をしていると分かれ道に着く、
僕と天灯の家の方向はここで分かれる。
「なんだもうこの分かれ道か、
もうちょい色々聴きたかったのに」
「そんな聞くほど関わってないけどな。
…それじゃ、バイバイ」
「バイバーイ、また明日」
僕は夕日に照らされた自分の影と、
こちらを振り向きながら右手を大きく降り上げる天灯と別れ、
朝の暖かさなのない日差しとは違う、
色を焼きとってしまいそうな夕日に照らされ家に帰る。
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ーーー桐幸と別れた後天灯は密かに桐幸をつけていた、
桐幸の話を聞いて一つの可能性を浮かべたからだ。
そうして実際その可能性はあたっていた、
桐幸を付ける二人の影。
恐らくは桐幸の言っていたチンピラだろう。
桐幸は顔が割れない様に色々と工夫したらしいが、
この手の輩は無駄に情報の網が広く、
土壇場で思いついた作戦じゃあ完璧に隠し切りづらい。
桐幸をつける目的はさっき話してた件の報復か、
その兎崙とやら関係か、
あるいはその両方だろう。
チンピラは桐幸と5mほどの距離をあけて追跡をしている。
「う〜んどうしたものか、
能力の射程圏外だな」
天灯は近くの建物の屋上から見下ろしながら、
桐幸達を付けているので能力の射程距離である、
半径15mの円形上からではギリギリ届かない。
「仕方ない、
あれ使うか」
天灯は右手を軽く上げ指揮者の様に右手をチンピラの方へ流れる様に向ける。
能力の効果範囲を半径15mの円形で届かないのなら、
無駄な効果範囲を削りその分を伸ばせばいい。
粘土で作った作品の余計なところを削り別の場所に継ぎ接ぐ様に。
そうして重力の方向をチンピラを押し出すように横向きにして、
重力の強さを強める。
あらかた内容を設定し終えた天灯はぶらりと力を抜かれ垂れ下がった手を銃の形に作り直し、
ゆっくりと、
力なのど何もこめず天へ向かって前腕ごと突き上げる。
ただそれだけの簡単なことでこの銃の引き金を引かれる。
この世界ではこんな形でも人は傷つき、
あるいは死んできた。
次の瞬間チンピラたちは何かに撃ちぬかれたかのように吹っ飛び、
建物に激突し意識を失う。
"重弾"
その一撃は大砲の様に。
そしてこれよりももっと重い重圧が常に天灯にまとわりつく。
自分を縛り付けていたその重圧は、
今では彼の戒めとなっていた。
「もう誰にも奪わせない。
そして、
俺が必ずお前の命を奪い去る。
お前だけは…絶対に許さない!」
少年は心からその言葉を叫ぶ。
そしてその心にはあの時と変わらない少年が、
泣いていた。
どうも皆さん、最近更新頻度の平均がわかってきたヤック・ヤッグです。
今回の話の文字数が約5000と少し多めの回になりました、本当は4500文字くらいだの予定だったんですけど、なんか書いてたら書きたい表現や、描写などが膨れ上がってきちゃってこんな文字数になっちゃいました。
今回の話では後半天灯についてが大きく取り上げられましたが、本来の予定ではこの手の設定は1章終盤まで触れるつもりはなかったのですが、書いてみたらあまりに触れなさすぎたので、少し増やしてみた。
こう言う設定って後書きでポンポン触れない方がいいんでしょうかね?
まぁ、この投稿頻度のままだと完結まで何十年かかるか、わかったもんじゃないんですけどね、早めたいとは思ってるんですけどいかんせん遅筆な上にやりたいことも重なって、なかなか時間が取れないんですなねぇ。
まぁ、早く投稿できるように精進します。
一言言及コーナー(開拓中):一章もいよいよ中盤!
経過投稿日数<4日>




