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変幻美少年サイキッカー、CPUにリンク!? 守るべき存在とサイキック・インターフェース  作者: あみれん


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20/23

第20話「発火前夜」

第二回セレスティア、ヴァルガード合同授業前夜。


タカコのカフェ。その夜はドアのディスプレイに「Closed」の文字が灯っていた。

普段なら港町の人々で賑わうはずの店内は、今は澪、リオン、ユナの三人だけ。

タカコの配慮で澪達の貸切状態になっていた。

カウンターの上に置かれたポットから、湯気の立つハーブティーの香りが漂っている。それなのに空気は重く、張り詰めていた。


澪はタブレットを広げ、画面に浮かぶEIDOSのシミュレーションログを指先で示した。

「……これが、明日の第二回合同授業に対するEIDOSのリスクシナリオ。ただし――ここには、私の『ゴトウ=ダーク・ヒールズ』という仮説が少なからず影響してる」

声は低く、抑揚のない響き。しかしユナは瞬きもせずに聞き入っていた。


画面には数字と確率、そして赤く点滅する【危険】の文字。

「ここを見て、EIDOSもゴトウとダーク・ヒールズの関連を示唆してる。彼らの目論見は単純。――マルタンのサイキックパワーで両国の教育基幹システムをクラッシュさせ、友好の象徴を叩き壊すこと」

澪は唇を結び、言葉を選ぶように続ける。

「システムが停止すればどうなるか。ヴァルガードはセレスティアの攻撃と断定する。両国の関係は悪化、トンネル閉鎖、国交断絶。ダーク・ヒールズが狙うのはそこ」


リオンが組んでいた腕を解き、深く息を吐いた。

「まったく……奴らにとっては混乱こそが利益ってわけだ。軍需産業、情報ブローカー、裏市場。どれも肥え太る」

低い声がカフェの木壁に反響する。


ユナが不安げに澪を見つめた。

「……でも、対策は打ったんだよね? それでマルタンのサイキックパワーは遮断できるはずじゃ……」


「防御策は打ってある。でも……ぶっつけ本番よ」澪はゆっくり首を横に振った。

「未然に防げるなら、それが一番。私達の対策で食い止められるとしても、マルタンの心が壊れたら意味がない」


一瞬、場の空気がさらに沈む。タカコが静かにポットを持ち上げ、三人のカップに温かい液体を注いだ。カップの中でハーブが揺れる。

タカコの表情はいつになく硬い。


澪は画面を切り替えた。新しいログには、【トリガーワード】と記された項目が並んでいる。

「EIDOSの解析によれば、ハルカを拉致したのはゴトウ。ゴトウはマルタンにハルカを拉致したのはヴァルガードだと刷り込んで、言わば“催眠状態”に近いレベルまで洗脳している可能性が高い。……ゴトウがある言葉を発すれば――マルタンのヴァルガードに対する怒りは爆発する」


ユナが眉をひそめた。

「……ある言葉?」


澪は小さく頷き、モニターの文字をなぞる。

「例えば、“ヴァルガード”と“敵”を結びつける一言。それが“トリガーワード。ハルカの失踪を絡めて、その憎しみを一点に集中させる。それが合図になり、マルタンは制御不能に陥る……EIDOSはそうシミュレートしてる」


カフェの時計の針が、静かに時を刻む音だけが響いた。


リオンがテーブルに身を乗り出した。

「本当なら、ゴトウを締め上げて全部吐かせたいくらいだぜ。マルタンとハルカをだしに使いやがって、あのゲス野郎!」


澪は即座に首を振る。

「ダメ。確証がない。もし下手に動けば、逆にセレスティア側が授業を妨害したと取られかねない」


「分かっている...」


澪はユナを見た。

「……ユナ、お願いがある」


「え?」


「明日の合同授業は、科目が初日と同じ“歴史”。教壇に立つのはまたゴトウ。ゴトウは授業中に誰にも分からないようにトリガーワードを発する可能性が高い……もし授業中、マルタンに異常が見られたら、あなたがすぐに外へ連れ出して」


ユナは驚いた表情で澪を見つめ、唇を噛んだ。

「……分かった。わたしが必ず」


澪は深く息を吐いた。

「マルタンは今、怒りで満タンの状態。ゴトウが火をつけるのを待っているようなもの……。絶対に、爆発させちゃいけない」


リオンが静かに頷き、低く笑った。

「……つまり明日、俺達は爆弾処理班ってわけだ。へまをすれば、これまでの国の努力が全部吹き飛ぶ。たった一言のトリガーワードでだ」



窓の外では、海風がシャッターを叩き、かすかな音を立てていた。

嵐の前の夜のように、街は不気味な静けさに包まれていた。


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