表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/515

名月

 部屋に入って来た少女は夢と同い年くらいの見た目をしていた。


 刈安(かりやす)色の着物に茶色の帯、深紫(こきむらさき)色のおかっぱ頭に朝顔の花冠をのせ、さらには天女の羽衣のように朝顔の蔓をまとっている。


 白緑(びゃくろく)色の肌をしており、赤と青の左右で違う色をしたくりくりとした瞳で涼多たちを見た。


 「話し声がモロに隣の部屋まで聞こえていたから、大体の事情は把握しているのだ。初めまして、あたしは名月(めいげつ)。以後、よろしくなのだ!」


 「よ、よろしくお願いします」

 すっと差し出された手を、恐る恐る握る。

 

 「名月さん、白蛇様の怪我は大丈夫っスか?」

 「薬が効いてグッスリ眠っているのだ、だから静かにしてほしいのだ」


 「了解っス!」

 「……すみません」


 蕉鹿(しょうろく)はガバッと頭を下げ、ルテは目を伏せ謝罪の言葉を述べる。


 「今回の騒動、気になる点が沢山あるのだ。あたし達の『仕事』のやり方も、変えなければならないかもしれないのだ」


 名月の言葉に二人は頷き、小声で話をし始める。


 「ん?どうした?」

 蛍が奏の服の(すそ)を引っ張ていた。


 しゃがむと「はい」と右肩にペシッとお札が貼られる。

 お札に書かれた文字が淡く光ったかと思うと、奏は驚いた顔をした。


 「このお札はね、少しの怪我ならスグに治してくれるんだよ」

 蛍は笑顔でそう言うと、叶望、夢、涼多の順にお札を貼っていく。


 食器が刺さった箇所がみるみる治っていった。


 「さっきはありがとう」

 「蛍君……だっけ?無事で良かったよ」


 そう笑いかけると、後ろの女性と目が合った。


 「あ、えっと――」

 「……(はる)と申します。先程は、本当にありがとうございました」


 丁寧にお辞儀をすると、蛍と同じ(とび)色の目を細めながら涼多を見る。

 鴉の濡れ羽のような長い黒髪がサラリと揺れた。


 「僕のお姉ちゃん」

 「そうなんですか」


 「…………はい、そうです」

 (……?何で目を伏せるんだろう?)


 疑問に思っていると、名月たちの話し声が聞こえる。


 「疲れた頭で考えてもしょうがないのだ。お開きにするのだ」

 「そうっスね。涼多君たちも結構、限界が来てるんじゃないっスか?」


 蕉鹿に言われたとたん疲労がどっと押し寄せてきた。

 夢にいたっては舟をこいでいる。


 「布団を用意しますので、とりあえず今日はここで寝てください」

 ルテはそう言うと部屋から出て行こうとした。


 「あ、手伝います」

 涼多がそう言うと、ルテは小さく溜息を吐く。


 「そんなフラフラな状態で運べるわけがないでしょう。危険なので、そこに座っていてください」


 (……?)

 突き放すようなセリフだが、何故か声に優しさが含まれているように感じた。


 「ルテさん、少し嫌いになったとか何とか言っていたくせに」

 「ルテはツンデレなのだ」

 名月の言葉に、蕉鹿は顎に手を当て――。


 「いや、ツンデレ+ギレっスね」


 そう言った途端、座布団がふわりと浮き上がり蕉鹿の頭にぽすんと当たった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ