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48.5

「……」


 アトイミレユの街のとある大通り。晴れ渡る空の下、陰鬱な面持ちで歩く彼の横を、1人、また1人と通行人は通り過ぎていく。


 ふと視線を感じて顔を上げれば、そこには無垢な子どもが首を傾げている。その子は掴んでいた親のズボンを引っ張り、こちらに指を指す。


 心臓が締め付けられるように痛んだが、その子の親は自分と目が合うと、途端に焦ったように頭を下げ、子どもを叱りつけて早足で去っていった。


 去り際に振り向いた親が浮かべていたのは憐みの表情。幾度となく向けられたその表情に、かつては苛立ちと後悔が浮かんでいたが、今、彼の中には安堵があった。


「あれ、お前トルクトか?」

「っ!?」

「ああやっぱり!元気にしてたか?」


 名前を呼ばれて身を跳ね上げた彼、トルクトは、しかし相手が明るい声で近況を尋ねてくればほっと息を吐き、そんな自分に気付いて羞恥心と怒りがこみ上げ、彼は左手を固く握りしめた。


 それを見て勘違いした、話しかけてきた男。彼は冒険者で、かつて何度かトルクトと一緒に依頼を受けたこともあった。


「なあ、やっぱり怒ってるか?お前に引退を勧めたこと。……俺、知ってるんだよ」

「!……な、なに、を」

「お前、パーティ解散した後も1人で≪常緑の森≫に行ってただろ?それで……」


 トルクトはまた安堵し、また苛立った。まともに彼の話を聞いてはいなかった。今のトルクトにとって、それはどうでもいいことで、過ぎた過去でしかない。ただチラチラと失った右腕を憐れむ目線が鬱陶しいだけだった。


「最近は何してたんだ?ここにいるってことは大会の依頼を受けたんだろ?良ければ一緒に」

「ごめん。もう、僕は冒険者じゃないから」

「え・……それって」


 トルクトは振り返らなかった。これ以上一緒にいると、もしかしたら何かの拍子でバレてしまうかもしれない。自分が犯罪行為を働いたことに。これ以上誰かに見つかる前にと裏路地に入ったトルクトはまた無意識に安心し、気付いて怒りと共に手を振り上げ、しかし諦めたように力なく下ろした。


「もう、完全に犯罪者になったんだな……」


 彼は情けなく、みっともなく逃げ出した自分を思い出した。


 ー ー ー ー ー


 大発生で生まれた魔物がゲルセルであったと知り、それでもどうしようもないため、ただ茫然とドームを見ていたトルクト。その視界に3人の学校の生徒が映り、彼は目を見開く。


 遠くからも、その3人の中にユウシがいることに気が付いたために。


「おい、スタインっ!向こうに、向こうに学生がっ」

「え?……あちゃ~。ついてないねぇ、遠くまで来ちゃ駄目って言われなかったのかなぁ?」

「そんなこと言ってる場合じゃないだろ!はやく助けにっ」


 すぐ見えるところにいる3人。そのうちのユウシが尻もちをついたところを見て、その表情までは分からなかったが、それでも絶体絶命に絶望していることは考えずとも分かる。トルクトは彼らを見ても呑気なスタインを急かすが。


「いやぁ、そこまではしないよぉ?」

「……は?」


 スタインはのんびりとした声で、そう言った。


 聞き間違いかとトルクトは思ったが、スタインは背伸びして立ち上がると、彼らに背を向けて歩き出した。


「可哀想だけど、まあ仕方がないねぇ」

「でも、お前は、それは、嫌って」

「だって、僕が傷つけるわけじゃないしねぇ」


 彼は、スタインは、間接的に人を傷つける分には、何の抵抗もないらしい。


 ふざけるな。人の命をなんだと思っている。トルクトはそんな言葉を口にしようとして。


「あ、君は助けに行ってもいいよぉ」

「え」


 トルクトは、何も言えなかった。


「聞いたよぉ、君はゲルセルには思うところがあるんでしょ?それなら大発生は、たくさんやり返せるチャンスだねぇ」

「い、いや」

「どうせブラックさんは今も見てそうだし、君が行くんだったら万が一は助けてくれるよぉ」

「そうじゃ」

「じゃあ僕は先に街に戻って、冒険者達と合流してくるねぇ」


 スタインはそう言い残し、トルクトが手を伸ばしたのにも気が付かず、1人で歩いて行ってしまった。


 手が空を切り、トルクトは1人残された。恐る恐る振り返り、今なおドームから溢れ出るゲルセルを見て、足は全く動こうとしなかった。


 彼は自分で助けに行くつもりなど全くなかったのだ。行ったところで敵うはずがないと知っているから。


 彼の脳裏に飛び込んできたゲルセルが蘇る。冒険者の仕事柄何度も魔物に痛い目に合わされてきたトルクトだが、ゲルセルは特に記憶に新しいこともあり、立ち向かおうという勇気は微塵も湧き上がらない。増して今回は数が数であり、気がつく頃にはトルクトの足は既に後ろを向いていた。


「あぁ、トルクトくん、待ってよぉ」


 結果、トルクトは先を行くスタインを追い越して逃げ出した


 それが、また、心優しいユウシを傷つけると知っていながら。


 ー ー ー ー ー


 そうして重大な犯罪と分かっていながら行為に及び、危機に瀕した3つの命を見捨てて逃げ出したトルクトには、あらゆる勇気が残っていなかった。自らの罪を告白する勇気も、『殲滅』という極悪組織を摘発する勇気も、すっかり失われてしまったのだ。


 青い顔で裏路地を歩いていると、遠いどこかで爆発音が響く。街の人間が何事かと騒ぎ立てるのを耳にして、トルクトは想像よりはかなり早かったが、冒険者がゲルセルと遭遇して討伐を始めたのだと認識した。


 ふと違和感を覚えたが、どこかで聞いたことがあるような気がしたその音が何かなんて、もうどうでもよかった。


「ゲルセルに、そこまで心がやられるとは思いもしなかった。そうか、お前には辛かったな」


 頭に浮かんでいた矢印の先で裏路地の影が渦を巻き、ブラックが中から現れる。彼は憔悴しきったトルクトを見て労わったが、トルクトは恨みの籠った目でブラックを睨みつける。


「……全て見てたんだろ?理由がゲルセルじゃないことも、知っているんだろ?」

「ふっ、スタインめ、余計なことを。……ああ、お前が自らの都合を優先し、罪なき若い学生の命を奪って心を痛めていることは分かっているさ」

「……うっ!」


 改めて言語化され、トルクトは重苦しい罪悪感と自らへの嫌悪感に呻き、堪え切れずに地面にうずくまって嘔吐した。ブラックは地面に広がる染みを見て、面倒だと言わんばかりにため息をついた。


「まさかこの先、仕事を与えるたびにそうやっているつもりじゃあないだろうな」

「な、慣れるわけがないだろ、慣れていいわけないだろっ」

「正義感を振りかざしたところで、お前の行いが変わることはないが?」

「ぐっ……」


 トルクトは何も言い返せなかった。ユウシ達の命を本気で失わせてしまったと信じている彼には、何も。


 俯いて黙り込むトルクト。ブラックはもう一度、深くため息をついた。


「まあいい。今後お前には法に抵触しない仕事を回してやる」

「……どういう風の吹き回しだ」

「なに、元よりお前を迎い入れた目的を実行する準備が整っただけだ」

「何を、させる気だ」

「簡単に言えば物探しだ。スキル〈捜索〉を持つお前の得意分野だろう?」


 トルクトは、≪常緑の森≫にて勧誘された際にもスキルについて言及されていたことを思い出す。また、碌に戦えない自分に出来ることといえば、逆にそれぐらいしかなかった。


「物探しは基本マキナと共にこの街の外で動いてもらうことになる」

「待て、それは1日で行って帰ってこれる距離なのか」

「ああ、あの子の心配をしているのか。だが元冒険者のお前だ、数日空ける程度何も問題はあるまい」


 その後彼は何日かかるのかは捜索対象によっても異なり、中には場所どころか、その存在があるのかどうかも分からないものもあると言った。トルクトは不満を零しかけたが、そのために〈捜索〉を求めていると言われれば、彼は黙るしかなかった。


「……そうか、そうだったな」

「なんだ」

「お前に半月の休暇をくれてやる。その間でその無様な心を多少でもマシにしろ、それとあの子を大切にしたいのなら、一度この街から離すことだな」

「……今度は何をするつもりだ」

「お前にはもう、話す必要はない……と、言いたいところだが。いいだろう、その質問にだけは答えてやろう」


 トルクトは外套のフードから見えるブラックの微笑に、既に悪寒を感じていた。だが、告げられる内容は、その想像を遥かに上回った。


「今日お前には大発生を起こしてもらったが、それは真なる目標への下調べに過ぎない」

「下調べ、だと」

「一月後、この街で何があるかは知っているな?」

「……迎夏祭」

「そう、その日に我々は四方の門にて、同時に大発生を引き起こす」

「な!?」


 迎夏祭、それは夏前月の第4週の始めから終わりまで、7日間に渡って開かれる、季節の変わり目を告げる祭り。それはイベントの中でも最も規模の大きなイベントであり、街の外から多くの冒険者や行商人が訪れる。


 そんな中で大発生が起きるともなれば、道行く馬車を襲う魔物も現れ、人々への被害は今日とは比べ物にならない程に甚大なものになりかねない。話を聞かされたトルクトは当然反対しようとして。


「では今度こそ摘発してみるか?膨れ上がった己の罪と共に」

「-っ!!」

「それとも己の罪を隠し、祭りの件だけを摘発できる気でいたのか?先に言っておく、中途半端な選択は無理だとな」


 ブラックはそういうと虚空に手を伸ばす。するとその先で影が渦巻き、ブラックは中に手を入れると丸まった羊皮紙を取り出した。彼がそれを開くと、描かれていたのは魔法陣。それはトルクトが作成したものの1つだった。


「よくできている、が、何の注意もせずに陣を描く魔粉の定着を行ったな?」

「ちゅ、注意、だと?」

「分かるように言えば、ここには微量だが、お前の魔力が込められている。そしてこの魔法陣は今日、大発生の誘因に用いられた……あとは分かるな?」


 トルクトは言われて絶句した。現場には、彼の犯行を示す証拠が残っている。そういうことだった。


 学生証やステータスカードと呼ばれる魔導具がある。これは使用者の魔力を記憶し、使用者の身体的情報や個人情報を映し出す魔導具である。


 つまり、この世界には魔力から個人を特定する技術が存在するのだ。


「回収しなかったのはお前とスタインの落ち度だ。とはいえ元々善良な冒険者だったお前のことだ、犯人であると疑われることはまずなく、自ら出向くようなことがなければ、お前の魔力との照合を求められることもないだろう」

「……」

「だが祭りの件を摘発しようとすれば、当然今日の大発生との関わりは疑われるだろう。そして魔力の照合と共に、お前は主犯として断罪されるだけ。最悪お前の自作自演として、我々の組織の捜索もされることはない」

「……」

「分かったな?お前に残された道は組織の悪行に目を瞑り、汚れた身を隠して表に生きるか、殺人と大発生誘発容疑で重罪を課せられ、二度と明るい世界に戻ることができないかしかない。もし後者を選べば、我々が手を出さずとも、あの子がどうなるかは……」

「くそがッ!!」


 今度こそ振り上げた手を壁に打ち付けたトルクトは暴言を吐き捨てた。そもそも彼には選択肢などなかったのだ。もうこれ以上話は聞きたくない、とトルクトはブラックに背を向ける、が。


「明日、家にマキナを向かわせる。詳しい話はそこで聞け」

「……ぁあああ゛あ゛ッ!!!」


 逃げることは許されなかった。トルクトは沸き立つ怒りを、後悔を、混ざり混ざって名状し難い暗い感情を吐き散らしながら、ブラックから、現実から逃げるように、裏路地を走り去った。


 ブラックはそんな背中を、笑みを深めて見ていた。その後ろで、ふと近くの壁が崩れ落ちる音を聞いて振り向けば、壁の向こうからスタインが現れた。彼もまたトルクトが走っていった路地の先を見ており、いつものどこか頼りなさげな笑みのまま肩を竦めた。


「ほんと~に悪いねぇ、ブラックさんは」

「ふふ、なんのことだ」

「その魔法陣、今日使ったやつでしょ?あのとき、こっそり回収してたでしょ?」


 ブラックはわざわざ肯定はしなかったが、否定はしなかった。


「でもぉ、僕ほどじゃあないけどまだ良心のあるマキナと一緒にしてあげてるしぃ、犯罪はしないでいいようにしたしぃ、祭りの襲撃の本当の目的は教えなかったしぃ、ほんと~は優しいってこと、僕は知ってるからねぇ」

「マキナは監視、犯罪はそもそもトルクトの目的外、襲撃の件はむしろ邪魔だからだ。それよりスタイン、マキナがいない以上、お前に襲撃の要を任せることとなる。対人戦闘も覚悟しておけ」

「えぇ~?もぉ、しょうがないなぁ」


 スタインはわざとらしくため息をつくと、拠点へと戻る道を行き、ブラックも影に紛れてその場から消え去った。




「はぁ、はぁ、くっ」


 トルクトは脚の痛みに耐えられなくなり、走る脚を止めざるを得なかった。裏路地から大通りに飛び出し、目を丸くする通行人たちにも気付かず、彼は後ろを振り返り、スキルを発動。ブラックが近くにいないことを確かめ、ようやく息を整えた。


 しかし、安心できたのも束の間である。トルクトは1ヶ月後に迫る街の危機を思い出し、行き場のない激情を己の中で押し殺す。


 何が正しかったのだろう。どこで間違えたのだろう。絶望したような暗い顔で歩くトルクト。


 そんな彼に、小さな女の子が近づいた。


「あっ、ぱぱ、おかえり!こほこほ」

「なっ、ネマ!?」


 トルクトをぱぱと呼ぶ女の子、ネマ。髪色や目元など、ところどころトルクトの面立ちに似たことからも、2人の血が繋がっていることは誰の目から見ても明らかだった。


 彼女はトルクトを見ると嬉しそうに駆け寄ってきたが、走り出して間もなくして、苦しそうに咳き込んでその場にしゃがみ込む。トルクトは慌てて駆け寄ると、咳を続ける娘の背中を優しく擦った。


「駄目じゃないか、安静にしてなきゃ。まだ病み上がりだろ」

「ごめんなさい、でも1人は寂しくて」

「っ、そう、だよな。ごめんな」

「ううん、お父さんがいるから大丈夫だよ」


 そう言ってネマは嬉しそうに笑う。苦しいはずなのに、まだ10歳に満たないほど幼いのに、父親を気遣って笑みを浮かべる娘を、トルクトはそっと抱きしめた。


 トルクトは学生時代、付き合っていた女性がいた。彼女は英雄を夢見て冒険者になると決めた彼を応援し、卒業後も関係は続き、始めたてでうまくいかなかった彼の心の拠り所となっていた。


 やがて彼が冒険者として成長し、安定して収入を得られるようになったある日、彼から彼女にプロポーズをし、晴れて2人は夫婦となる。その後その年のうちに家を買い、1年後に子どもを授かった、ところまでは順風満帆の人生と言っても何も問題はなかった。


 出産の日は予定よりも相当に早く、トルクトは運悪く長期依頼を受けており、立ち会うことができなかった。


 街に帰ると血相を変えた友人が待っていて、彼をすぐに案内した。向かった先は家ではなく、治療院だった。




 愛する妻は、亡くなっていた。家で産気づいたときには頼れる人が誰も近くにおらず。友人が訪れたときには、既に血を流し過ぎていた。




 トルクトは絶望している暇などなかった。娘は奇跡的に生きていたのだ。


 愛する妻の名前を貰ったネマは、生まれつき頬に正体不明の白い痣があり、生まれるのが早かったためか身体が人より弱く、月に一度は高い熱を出した。


 薬代は安くなく、トルクトは稼ぐためにも冒険者の仕事を止めることはできなかった。


 彼は一層努力した。友人に頭を下げ、家にいないときには代わりに面倒を見て貰った。スキルを知ってからは依頼に要する時間が半減し、ネマと話す時間もとれるようになった。冒険者ランクが上がり、報酬が増えるにつれ、ネマと遊ぶ時間もとれるようになった。


 そうして絶望から立ち直り、母無き娘を少しでも幸せにさせてあげようと毎日を過ごし、




 彼は劣竜に人生を破壊された。




「お父さん?どうしたの?」

「あ、ああ、なんでもない」


 手をつないで家に帰る道、トルクトは娘の声で我に返った。人生の間違い探しをしようとしていて暗い感情がこみ上げていたのを、娘には知られたくなかった。


 腕を失って帰って来たとき、ネマはトルクトよりも悲しみ、一晩中泣いていた。


 翌日、疲れて熱を出して苦しんでも、ネマはもう、泣き言を言わなくなった。それまででさえほとんど言わなかった我が儘も、言うことはなくなった。


 トルクトが人生をかけて挑んだ夢を目指せなくなっても、全てを投げ出さずにいられたのは、そんな娘のおかげだった。


 愛する娘のため――。ふと、トルクトの頭にスタインの姿が思い浮かんだ。


『僕にはねぇ、病気がちだった妻がいたんだ。もう亡くなっちゃったけどねぇ』

『若かった僕には、薬を買えるほどの稼ぎがなくてねぇ。そこで助けてもらったおかげで妻は少しでも長生きできたし、僕は恩人であるダレンダスさんに恩返しをしようっていう、まあありふれたお話さ~』


「お父さん、ネマのびょうき、すぐになおるかな?」

「よく食べて、よく寝たらな」

「でも、お父さんもいっぱい食べなきゃだめだよ?」

「ああ。もう、大丈夫だ。お父さん、新しい仕事、で、たくさんお金もらえたからな」

「ほんと!?やったあ!」


 なんと眩しい顔であることか。トルクトは心の天秤が、大きく傾く音がした気がした。


「これからは毎日、お腹いっぱいになるまで食べていいからな」

「うん!元気になったら、お祭りもいっしょにいけるかな?」

「あ……。……ネマ、ごめんな。お仕事のために、お引越ししなきゃいけないんだよ」

「えっ……でも、このおうち……ううん、分かった、しょうがないね」


 聞き分けが良すぎる娘は、我が儘の1つも零さず、すぐに笑顔に戻る。そんなネマをトルクトは抱きしめた。


「(ネマを守るためなら、ネマを幸せにするためなら、ネマと一緒にいてあげるためなら。僕は……)」


 英雄を夢見た自分が憎悪の目で咎めてくる。かつての仲間たちの、街の住民たちの憐みの視線が肌を刺す。心優しかった小さい白眼の少年が助けを求めて手を伸ばしてくる。


 しかし、トルクトはそのどれもから目を背けて歩き出した。近いうちに別れを告げる、あの家に。


 全ては愛娘のために。


(またまた長くなってしまった)

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