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遡ること1時間前。シガナとユカと合流し、ユウシ達3人は他の生徒が全くおらず、普段と変わらない光景の街を歩き、北門を目指していた。
「この3人で一緒に何かするの、久しぶりだね」
「なぜでしょう、あの日がもうとても懐かしく思えます」
「あれからいろいろあったからね~」
3人が共に常緑の森でギガスライムを討伐したのは約1ヶ月前のことである。それから今に至るまで、座学と魔法でDランクに昇級し、ユカがゲルセルを倒し、初めての魔武戦があり、いろんな人との交流があった。
「そういえば最近は2人とも見てなかったけど、何かしてたの?」
「誰かさんのせいで人に追われるようになったから隠れてたよ」
「私も似たようなものです」
「ユカさんは自業自得でしょ。……うん?ユウシくん、どうしたのかな?」
「ご、ごめんなさい……」
ユカにジト目で睨まれつつ、シガナがわざとらしくユウシに振り返れば、シガナの噂が広まったことに心当たりのあるユウシは素直に謝罪した。そして何があったのかを話そうとしたが、既に大方の話を知っているらしいシガナはそれを止めた。
「そんな気はしてたよ、まあこの大会のおかげで多少落ち着くのが早かったのがせめてもの救いかな。あ、でもさっきはユカさんおも、大変そうだったね」
「今面白いとか言いかけませんでした?」
「そうだよ?」
「……あなたって人は……」
「あはは……」
悪戯な笑みで肯定したシガナにユカが頭を抱え、人気者の気持ちが分からないユウシは苦笑するしかなかったが、だからこそ気になったことを質問した。
「ねえ、ユカさんが人気になりたくない理由はなんとなくわかったんだけどさ、シガナはどうして人気になりたくないの?」
「えー、そもそも人気者でいいことってある?」
「ぼ、僕は羨ましいと思うよ、だってスッゴイ才能持ってるってことだし、友達もいっぱいできるし」
「うん、ユウシらしい理由だね」
「ん?シガナ?どういう意味?」
どことなく友達が少ないと煽られた気持ちになったユウシはそう尋ねたが、シガナは笑って答えなかった。
「人気になるメリットが友人関係なら、やっぱり自分はいらないかな。別に友達が欲しいわけじゃないし」
「ええ、嘘ぉ!?」
「おっと今日一番の大声だね」
人気者になりたくない以上に共感できないシガナの考えを信じられずにユウシが硬直していると、今度はユカが質問する。
「考えてみれば、確かに気になりますね。シガナさんは講義を受ける前から頭も良かったですし、この学校を選んだのは冒険者になるためですか?」
「んー、なんというか、3分の1ぐらいはそうなんだけど。別に冒険者になるだけなら入学せずとも知識はあったし」
「ぼ、冒険者にも友達は必要だよ!」
「友達っていうか仲間ね」
我に返ったユウシがシガナの前に出て友達を強調するが、シガナは難なくユウシを躱す。慌ててユウシは横に戻る。
「残る3分の1ずつある2つの理由の片方は、入学を勧められたからで、あと1つはやりたいこと……いや、やらなきゃいけないことがあるから、かな」
「やらなきゃいけないこと、ですか」
他2つに比べ、最後の1つについて話すシガナの口調はどこか重い雰囲気を纏っており、真面目な表情も相まって、気軽に聞いてはいけないものではないかとユウシに迷わせた。実際シガナも誤魔化すように首を横に振った後、笑みを取り戻した顔で次のように述べる。
「まあそれが何かはきっとそのうち教えることになるよ。今はユカさんが魔法に傾倒するみたいに、なにかやりたいことがあるぐらいに思っておいて」
「そ、そっか」
「分かり、ました」
そう言われてしまえば、2人は内容が気になっても尋ねることはできない。かといってすぐに切り替えることもできず、少しの間気まずい空気のまま無言で3人は道を歩いていたが、耐え切れなかったユウシが話題を探せばすぐに見つかった。
「大会!そう、大会の途中だよ!ねえ、2人は優勝……あ」
「気付いた?っていうかユカさんはホールで言ってたよね?」
「はい、魔武戦と違って魔法の腕前を見せることもないですし、優勝は目指さないですよ」
「そういうこと。それで?ユウシはもしかしなくても優勝狙ってた?」
「あ、えっと、そのことなんだけど……」
ユウシはシガナとユカと共に行動しようと思った理由の1つとして、自らの魔法の現状について相談しようと思っていたことを告げた。
「ずっと練習してたんだけど、一向にうまくならなくて」
「最初は始めたばかりだから当たり前だって自分を励ませたんだけど」
「1週間頑張っても全く変わらないのが杖に光を灯せなかったときと重なって」
「怪我が理由でできないって決めつけてたけど、ほんとはそんなことないのは分かってて」
「怪我が治っても、やっぱりうまくいかなくて……最初と全く変わらなくって……」
シガナの前で最高級の杖を手に魔法を披露したその日から、全く成長できずに悩んでいたことを話した。話している途中、シガナとユカには嬉しい報告よりも悲しい相談の方が多く、情けない自分に涙が零れそうになったユウシ。
ユウシの沈みゆく思考を後押ししたのは学生証に映るステータス。魔法の制御に大きく関わると言われている魔適性はEで平均以下ではあるが、それはけして低くはないし、なによりテイガも同じくEである。確かにテイガはモモコよりもフーシュよりも魔法は苦手そうであったが、それでも見る限り魔法はほとんど意図した通りに行使することができていた。
であれば、何故自分はできないのか。その答えを、ユウシは、ユウシの頭は何度も出して、その度に否定し、やがて彼は疲れてしまった。
「今更諦めたくなんてない、けど。なんでできないんだろ。なにが悪いんだろ……」
初めてシガナに相談したときのように、本音を口にして軽くなる心と現状を再認識して重くなる心。杖を光らせたときのように、やり方を変えればできるようになると楽観的な気持ちと今度こそ自分はそこが限界でそれ以上上達しないと悲観的な気持ち。再びユウシの身体は限界に差し掛かろうとしている。
いつしか足は立ち止まり、ユウシの独白を、シガナとユカは無言で聞いていた。そして絞り出すようなか弱い声のユウシの暗い表情にユカが言葉を詰まらせる横で、シガナはユウシの肩を叩く。ユウシが顔を上げればシガナはまっすぐ前を指差しており、そこには北門が小さく見えていた。
「ユウシ、まずは実際に魔法を使って見せてよ」
「えっ」
「聞いた感じ、怒られてからはギガスライムのときの1回しか魔法は使ってないよね?」
「うん。だって、魔力を込める段階で失敗しちゃうから……」
「杖を光らせるときと同じだよ。今ユウシは失敗のイメージが根強く残ってる。だからやり方を変えた方がいい」
シガナはユウシの背中を押して前に歩かせる。ユウシは戸惑いながらも促されて歩き出し、ユカもその後ろを歩く。
「あとは単純に改善した方がいいところもあるかもしれないし、直接見せてほしいかな」
「でも、失敗したら、また迷惑かけちゃわない?」
「そこは事情を話して街から離れたところでやるだけだよ」
3人が北門の前で外を見れば、そこには数える程しか生徒はいない。また生徒達が離れすぎないように見張っていた冒険者に声をかければ、以前ユウシの『爆音』を聞いたことがある人らしく、ユウシが杖を持っているのを見て、遠くで討伐することはあっさりと許された。
「常緑の森での『爆音』は街まで届かなかったし、いざというときは自分がある程度は魔法を打ち消してあげるよ」
「2人は、ほんとは、別にやりたいことがあったんじゃないの?大丈夫?僕、時間をもらってない?」
「んー、全くないと言えば嘘になるけど。それこそさっき言ったことをやっても良かったし」
「な、なら」
「ただせっかく大会って言うぐらいなら参加はしようと思ってはいたし、ユカさんに頼まれて同伴することになった時点で解決してるよ。ね、ユカさん?」
「……そう、ですね」
シガナが正直に答えればユウシは申し訳なさそうにしたが、そもそもシガナはユカと共に北門へ向かっていた。
目立たないために優勝は狙っていなかったが、スライム討伐自体はしたいと考えていたユカ。しかし彼女は街を1人で歩いたことはなく、万が一異性に絡まれでもしたら面倒だ、と誰もいなくなった後のホールで困っていた。そこに柱の陰から現れたのは、この大会期間中をどのように過ごそうか迷っていたシガナ。互いに優勝を狙わないことは事前に知っており、どうせなら一緒に行かないか、とユカが頼めば、シガナには特に断る理由はなかった。
「だからユカさんがどうか次第かな?」
「私はむしろ、シガナさんが魔法を打ち消すことについて話を聞けるので賛成ですよ」
「やっぱり止めようかな。……冗談だよユウシ、気にしないで」
ユカの隠そうともしない魔法探求心の主張にシガナが逃げそうになるが、罪悪感を帯びたユウシと板挟みになり、渋々といった様子で言葉を取り消した。ユカの顔が明るくなった。
「ほら、もう心配することはないよ。あとはユウシがやりたいかやりたくないかだよ」
「……そんな風に言われたら、僕はやりたいって言うよ」
門の前でシガナに意思を問われれば、ユウシはかつての門の外に恐怖を抱いていた自分の姿が蘇る。才能以前に、心が成長していないと改めて気づかされ、ユウシは強く頬を、今度は2度、同じことを繰り返した自分への叱責と、弱い自分の心を切り替える意味を込めて叩いた。
じんわりと痛む頬に風が染みる中、ユウシは大きく息を吸い、長く息を吐く。そして覚悟の決まった顔で2人に頭を下げた。
「ごめん、お待たせ。それじゃあ2人の時間を少しだけ、僕にください」
「了解。それじゃあ森の近くまで歩こうか」
「そうですね」
そして数十分の徒歩を経てユウシは杖を手に魔法の発動に挑み、ある意味想定通りに失敗する。シガナの働きにより爆音とはならずとも、そこそこの音を響かせながら、ユウシは魔力欠乏症により草原の上に横たわっていた。
「はいユウシ、君が倒したスライムの魔核」
「はぇ?」
魔法を失敗した印象が強かったこと、杖が学校支給のものであること、今回はシガナが音を軽減させたことから、スライムを倒せなかったとばかり思いこんでいたユウシはシガナから魔核を、それも少なくない数渡されれば、欠乏症によりふわふわした頭でも驚いて目を瞬かせた。
「前に『爆音』で大量討伐した日から少し調べたんだけど、スライムは視力があまり良くない代わりに、全身が周囲を知覚する感覚器官みたいでね。特に音には敏感で、身体の色に関わらず、全部の個体が音による攻撃を弱点としているみたいだよ」
「そうなのか……だったらもーっとざんねんだな」
「残念、なんですか?」
「だって、ちゃんとつかえたら、いちばんになれたかもしれないもん」
もしも魔法を、球弾魔法だけでも思い通りに使うことができていたのなら、嘘でも冗談でもなく、テイガやモモコと対等に競うことができていたかもしれない。そんな可能性を示されてしまったら、ユウシは余計に悔しくなった。だがユウシの代わりに魔核を拾い集めたシガナは、ユウシにはまだ可能性が残されていることに気が付いていた。
「ユウシ、君は優勝を狙えるよ」
「……はげまさなくても分かってるよ」
「いやいや、本当に」
「え。でも、どうやって……?」
「それじゃあ説明しやすくするために、まずはユカさんの討伐を済ませよう」
「分かりました」
実は早く魔法を使いたくてそわそわしていたユカは詳しいことを聞く前に立ち上がると、鞄の中から1本の杖を取り出した。金色の装飾が施された金属製の柄に、反対側がある程度透けて見える赤い魔導石がついたその杖はユウシには見覚えが無く、彼女が新たに購入したものであると分かるまでにさほど時間はかからなかった。
「それ、ユカさんのあたらしいつえ!」
「そうです、あの後シガナさんにアドバイスを貰いつつ選びました!」
「よく考えたら朝食以外も普通にユカさんと過ごすこと多いし、知られたら自分もユカさん親衛隊に連れてかれそう」
「へ、変な名前つけないでください!」
杖を手にテンションが上がっていたユカは嫌なことを思い出したと言わんばかりに語気を強めに親衛隊を否定し、そのまま杖を握りしめてそこら中にいるスライムを目視すると魔力を込める。その速度は魔武戦で見たときよりも明らかに早く、魔導石を輝かせたユカは短く詠唱をした。
「-私の魔力。その力を炎に変え、数多の火球を成し放て。『火球乱舞』!」
【【【~!?】】】
作り出された10の火球はそれぞれが的確にスライムへと襲い掛かり、あっという間にその姿を魔核に変えた。その高い魔法技術にユウシとシガナは拍手をしたが、彼女が持って帰ってきた魔核を見て、シガナは微妙な顔をした。
「どうしましたか、何か気に入らないことでもありましたか?」
「いや、説明するにはもっと分かりやすい魔核を用意したいなって。仕方ない、自分で用意するか」
ため息をついたシガナはいつか見せた白く濁った魔導石の杖に魔力を流して詠唱を行う。
「-我が魔力、数多の球を成せ。『魔球連弾』。……さて、今回の犠牲スライムは。よし、あの子にするか」
【?……!?】
シガナが浮かべた白の半透明な球弾も美しい程に綺麗な形をしていたが、ユカが浮かべたものよりも2回りほど小さく、また込められた魔力が少ないのか、以前見た魔球と比べて色が薄い。そんな魔球を2人が眺めていると、あるスライムに狙いを定めたシガナが球弾のうち1つを放つ。速くも遅くもないそれはスライムに命中するも、威力が足りないのか、魔球は身体を少し傷つけることしかできない。
「ほーら次だぞ~」
【ー!?】
「まだあるぞ~」
【!?!?】
「次は2つ同時だぞ~」
【~!?】
しかしシガナはそうなることが分かっており、傷ついて逃げるスライムに次々と魔球を放っていく。スライムは必死に左右に逃げるが、シガナの攻撃はどれも吸い付くようにスライムに命中。だが威力が弱いために倒れることはなく、攻撃を受け続けるスライムはひたすら苦しそうである。
「なんか、かわいそう……」
「シガナさん、どうしてすぐに倒さないんですか?」
「すぐにわかるよ、そーれ」
【~!?】
魔球を当てた回数が2桁に到達すると、弱り切ったスライムは亀のような速度でしか動けなくなり、それでもなんとか生き延びようと地面を這うようにしてシガナから離れる。そんなスライムを見て、シガナは満足そうに頷いた。
「もう大丈夫かな、それ」
【~……】
「あ、たおれた……」
シガナが最後に素早い一撃でスライムを貫くと、スライムは薄く潰れて広がり、魔核を残して消滅した。ユウシは鼻歌を歌いながら魔核を拾いに行くシガナの背中をなんとも言えない気持ちで見ていたが、帰ってきた彼に魔核を見せられ、ようやくその意図を理解し、自らが音魔法で倒した魔核と見比べた。
ユウシが倒したスライムの魔核とシガナが甚振って倒したスライムの魔核。どちらも濁った緑色をしていることには変わらなかったが、シガナの魔核は拾ってからは何もしていないのに、表面に罅割れや欠けが目立ち、また内部にも無数の白い線が走っている。対してユウシの魔核は表面の傷がほとんどないのはもちろんのこと、内部にもあまり傷は見られなかった。
「なるほど、先生が仰っていた質とはこのことで、ユウシさんが優勝する方法はこれのことですか」
「そういうこと。頭がふやふやのユウシにも分かるように言うと、どうも魔物は討伐前に感じていたストレスによって得られる魔核の質が悪化するらしいんだよね。だから質が高い魔核を手に入れるなら、一撃で倒すのはもちろんのこと、瞬時に仕留めるのが良いってことだよ」
「でも、あれ?たくさんたおさないといけないのは?」
「今日の先生の話からは分かりにくかったですが、どうやら魔物討伐大会には2つの種目があって、討伐数と魔核の質でそれぞれ優勝者が決まるみたいですよ」
「そうなの!?」
質についての言及はテイガもしていたことから、あくまで加点対象だとばかり思いこんでいたユウシ。しかし過去のイベントに関する本を図書館で読んでいたユカとシガナに実態を告げられ、丁度意識がはっきりとしてきたのか、ユウシは改めて自身の魔核を見て、そのどれもが傷の少ない質の高いものであると分かると飛び跳ねて喜んだ。
「スライムの魔核は砕かれて魔粉になる場合が多いからあまり恩恵はないけど、上のランクの魔物の魔核はその質が杖とか魔導具の効力にそのまま作用するから、将来的にも大切だってことをイベントを通じて教えてるのかもね」
「そっか!それじゃあ僕も優勝目指して頑張れる!」
「おー、元気出たね~。そんなユウシに更に元気になれる、かもしれない方法を教えてあげるよ」
「え、なになに!?」
ようやくいつもの明るいユウシに戻ったのを見て微笑むシガナの言葉に、ユウシは顔を輝かせてシガナに詰め寄った。
「その前にユウシ、自分があげたあの最高級の杖って今持ってる?」
「え、えっと、今は使っちゃ駄目って言われて、部屋の机の上にあって」
「ああ、怒るわけじゃないよ。むしろちょうどいいね、杖をとるついでに今ある魔核を提出してから早めの昼食を食べて、また戻ってくる頃にはある程度ユウシの魔力も回復してるだろうし」
「それなら早速戻りましょう。そして是非そのいかにも特別そうな杖について教えてください」
「ユカさんは相変わらずだね」
初めて使った日以降外に持ち出してすらいないため、ユカはその杖を見たことがなく、最高級と聞いて居ても立っても居られないのか、真っ先に街へと足を進めていた。シガナは苦笑したが、同じく楽しみなユウシがすぐさま後を追いかければ、シガナはその方法が成功するように願いながら、先行く2人を追いかけるのだった。
その頃、他の場所では。
ー ー ー ー ー
「大変よ、もう近くにスライムが見つからないわ!」
「あんなにいたのにですか!?というか、テツジは一体どこに行ってるんです!?」
「ハハハッ、見ろよテツジ!お前の元仲間ともう3週差をつけたぞ!」
「そうだなぁイアンさん、いやイアン様!おかげでとても助かっています!」
「「テツジ!?」」
「ハハハハハッ!僕は今!すごく気分がいい!!」
学校と距離が近く、生徒が殺到した南門では既にスライムが粗方狩りつくされ、さらにはテツジがいなくなったことで効率が半減したモモコとソユノが苦戦していた。そこにイアンと組むことで、というより、モモコとソユノと離れることで効率が倍増したテツジが現れ、イアンを崇めるように褒め称えていた。また学校に来て初めて明確に尊敬されていたイアンもまた嬉しそうにしており、テツジのことを気に入っていた。
ー ー ー ー ー
「これはっ、素晴らしく質の高い魔核ですね!ここまで高いものは珍しく、成績も現在1位です!」
「やったぜ!流石はクロアスとフーシュだな!」
「いやテイガがスライムを誘導してハウターが逃げ場を封じたおかげでもある」
「ハッ、全員が力を合わせたって綺麗事でも言うつもりかよ」
「そうだよ、みんなの力でいい結果を出せたんだよ!」
「……そ、そうかよ」
「お、ハウター、まさか何とは言わねえけど変えるのか?」
「なななわけねえだろうが!?」
西門から帰ってきたテイガ達4人は、提出に並ぶ長蛇の列を待った先でそれぞれ提出した魔核の質を、受け取った教師に褒められていた。クロアスが伝えた方法とはまさにシガナとユカが知っていた方法の通りであり、4人はいろいろと工夫を凝らすことで既に数百と提出された魔核の中で最も質が高いと評価される。そんな彼らは余裕になったのか、互いに努力を称え、感謝の言葉を送り合って解散した。
ー ー ー ー ー
「……レイアさん。もしかしなくても」
「……セキラ、それ以上は言わないで」
「レイア様、でも」
「タリユスもよ」
「ガハハッ、総合的に成績のいいアンタでも失敗することはあがはっ」
「何を言ってるか分からない」
「お、お前には言ってないだ、ろ」
距離の離れた東門に向かっていたレイア達だが、流石に走りっぱなしでは体力が持たないということで休憩していた。だが全力を尽くしてやっと討伐数がトップに並ぶ彼らは、南門に路線変更し、手を抜いてやっていたグランと3週ほどしか変わらない事実を知る。そして最初から東に向かうのではなく、数が減ってから別の門へ向かえばよかったと今更に気付き、自らの力を過信していたのと、大事な話をどう切り出そうか考えるあまり当たり前のことに気付かず、両手で顔を覆っていたレイアを、セキラとタリユスは責めることができなかった。
ー ー ー ー ー
ー ー ー ー ー
「これでいいのか?」
「ん?私に聞いてる?なはは、そんなん分かるわけないじゃん!」
「……」
「ん~?ああ、もうできたのかい?……おお~!キミ、やるねぇ!」
「軽く齧った程度だが、それぐらいはできるさ」
「そしたらもう、今日やることはおしまいだよ。なにせ本番は明日だしね~」
「お!んじゃあ空いた時間で私と一緒に酒でも飲む?なぁトルクト君?」
「遠慮するよ。それじゃあ今日は帰らせてもらうよ、スタイン、マキナ」
「なーっ、君はいっつもつれないなぁ!」
そう言って朝から酒に酔っている女性の誘いを断ったトルクトは、小屋を出た。まだ出会ってから1週間程度しか経っていないが、猫背の無精ひげの男性-スタインと、相変わらず薄着の女性-マキナとはこうして気軽に話せる程に仲が良くなっていた。だが他の3人の男性についてはそもそも見かけないか、もしくは必要最低限の話しかせず、トルクトもまた行為を直接見たわけではないが、犯罪者集団を自称する彼らをまだ信用しきったわけではなかった。
「(一体何を企んでいるんだ)」
1つ仕事は任されたとて、その具体的な内容を聞かされていないトルクト。最後に自身が任されていた仕事である、低品質の魔核から作った魔粉で羊皮紙に描いた魔法陣を見て、使うことになるであろう明日に得体の知れない恐怖を抱きながら、彼は組織の隠れ家を後にした。
前回から1週間、間を空けての投稿となりましたが、今後は毎日投稿の形は難しそうということだけお伝えしておきます(ただ連日投稿できる日もありそう)




