27
「まさかまたユウシ君に驚かされることになるなんて思いもしなかったよ」
「『魔女の涙』をどうするかはゆっくり決めりゃいいさ」
「はい、ありがとうございます」
あの後、フーシュ達を待たせていることを思い出したユウシ達は『魔女の涙』に対する判断を見送り、野次馬達の間を潜り抜けて外に出た。ユウシがアルトとヘダルに礼を述べる間にフーシュを見つけたモモコは駆け寄り、ユウシのレアドロップをあたかも自分が見つけたものかのように自慢して驚かせ、興味を持ったユカに質問攻めにされて苦しそうに呻いていた。
そんなやり取りを見て朗らかに笑うアルトに、テイガがモモコが離れた隙に質問をした。
「アルトさん達って、この後は空いてますか?」
「ん?どうしてだい?」
「俺ら、ギガスライムの討伐に行きたくて、よければ一緒に行ってくれないかと」
「!」
テイガは包み隠すことなく、ギガスライムを倒したいことを2人に話した。シガナの協力の元で街の外に出たこと、スライムは慣れれば1人でも倒すのが簡単だったこと、それでは物足りなかったこと。最後にスライムの上位種であるギガスライムの存在を知り、協力して倒せる丁度いい相手だと思ったことを告げる。
ユウシの話を聞き、テイガはユカとの討伐を楽しんだユウシを羨む気持ちもあったが、それ以上に自らの力試しとして討伐をしてみたかったし、親友と共に魔物と戦いたいとも思っていた。そんなときにレアドロップの話を聞かされていてもたってもいられず、レイアが話していたような、冒険者に外へ連れて行ってもらうことを試みたのだった。しかしテイガの発言に驚いていたアルトとヘダルは納得はしたものの、申し訳なさそうに首を横に振る。
「実はこの後、長旅に備えて不足品の買い足しをしに行かなくちゃいけないんだ」
彼らは今朝ギルドにて、ユウシ達がアトイミレユに来たときのように、とある商隊の護衛依頼を受けていた。詳しく聞けば出発はこの日の正午過ぎであり、ギルドの施設案内程度ならできるとしても、討伐の引率はそこそこ長時間の拘束が想定されたため、彼らは断らざるをえなかった。
「かといって他の冒険者もなぁ、今いるやつは仕事を探してるやつか飲んだくれしかいねえし、今日のところはあきらめた方がよさそうだぞ」
「そうですか……」
「どうしたのよ、そんな辛気臭い顔して」
シガナの代わりに冒険者に頼る案を失ったテイガと、同じく魔物討伐をしたかったユウシ。2人のがっかりした顔を見て、女子3人を連れて帰ってきたモモコが首を傾げる。訳を話そうと振りむいた2人は、ギルドから歩み寄る1人の冒険者に気が付かなかった。
「そっか、こっちはユカもフーシュもいるから外に行けるけど、そっちはシガナがいないから行けないのね」
「は?お前らまさか、俺らを置いて行くつもりか!?」
「そうよ!……っていうのは流石に冗談よ。ただ、ユカはアンタと一緒に行くの、まだ嫌そうね」
ギガスライムの討伐はまだしも、外に出ることなら女子3人についていけば行けるかもしれなかったが、ユカは明言こそしなかったものの、テイガの視線を受けて露骨に嫌そうな表情である。テイガは二重に心に暴力を受けて膝をついた。
「もう外に行けない以上どうしようもないし、2人でどっか楽しんできなさいよ」
「しかもまーたユカさんはお前とフーシュと行くのかよ……」
「テイガ、しょうがないから、グラウンドで魔法の練習を……」
「君たち、何か困っているのかい」
傷心したテイガの手を取って立ち上がらせたユウシは背後から声をかけられる。ユウシが振り返ると、そこに立っていたのはどこかくたびれた様子の青年の男性。まだそこまで年老いていなそうな彼の髪に白髪が混じり、クマの浮かんだ顔に小さな皺がいくつもあるのを見れば苦労した様子が伝わる。ただなによりも印象的なのは、彼が片腕を失っていることだった。
初対面の自分に何か用があるのか尋ねようとして、服の右袖の付け根から縛られていることに気付いて息をのむユウシ達。そんな彼らに話しかけた青年も少々苦い顔をしていて、先に話しかけたのは彼のことを知っていたアルト達だった。
「しばらく姿を見てませんでしたが、無事だったんですね!」
「無事、というには少々失ったものが大きすぎるけれどね」
「それでも竜と相対して死人を出さなかったのはすげえことだ、冒険者として尊敬するよ!」
アルト達は興奮気味に話しているが、ユウシ達は話の流れでうっすらと彼が何をしたのかは分かっても、依然として何者か分からない状況に変わりはない。なんとか話が途切れた隙を伺ってユウシがアルトに尋ねれば、アルトは彼の代わりに彼のことを紹介し始めた。
「この方の名前はトルクトさん。若くして優秀な冒険者とされるCランクまで上り詰めて、それから数年でBランクになった、熟練の冒険者なんだ」
「冒険者の先輩たちはみんな口を揃えて将来有望な人材だって言ってな、俺らもトルクトさんは身近な目標だったな」
「え!?そうなんだっ、スッゴーい!」
「それは腕を失う前の話だ。今はもう、そんな実力はないよ」
「あっ……」
彼の今までの功績はユウシ達が目指す姿そのもので、ユウシは目を輝かせ、テイガも更なる話を聞こうとする。だがあたかも拒絶するように右袖をつかんだトルクトの言葉に、誰も何も言うことができなかった。気まずい空気が漂う中、トルクトは固く結んでいた口を緩め、小さく笑顔を作った。
「それより、君たち、討伐がしたいとか、そんな話をしていなかったかい?」
「……え、っと」
「あ、はい、俺とユウシだけじゃ外に出れないからどうしようかって悩んでて」
言葉の重みを受け止めきれずに返事が遅れたユウシの代わりにテイガが答える。そしてアルト達に頼み込んだが、依頼が控えている都合上断られてしまったことを話せば、トルクトはなるほどと頷き、立候補するように手を挙げた。
「それなら僕がついていこうか。今日は休もうと思っていて予定はないし、ギガスライムぐらいなら利き手じゃなくてもある程度相手には出来るから」
「マジか、いいんですか!?」
「ぜひお願いします!!」
「え、なに、ギガスライム?」
願ってもないトルクトからの提案に、2人は前のめりに頼み込んだ。モモコはトルクトが口に出した聞いたことのない魔物の名前に首を傾げ、その声を聴いたユカは1つ違和感を覚える。
「(今、あの冒険者の方が来てからテイガさんもユウシさんも、ギガスライムの名前は言ってませんでしたが……単なる例えでしょうか)」
「そうと決まれば急ごうか。まずはミドルスライム辺りで実力を見せてもらうね」
「……!」
「分かったぜ!」
「それじゃ、モモコ達、またね!」
日々周囲の視線に晒されるユカは人の視線に敏く、足早にギルドを発とうとしたトルクトが最後に一瞥したのがユウシとテイガではなく、ユウシの鞄であることに気が付いた。しかしそのことを尋ねる間もなくユウシとテイガは離れていき、ユカもまた止めてまで話を聞こうとは思わなかった。
「ギガスライム、いいじゃない!私たちも倒しにいくわよ!」
「駄目です、万が一に対応できる方がいません」
「そうだよ、危ないよ」
「えー?」
「ですが予定は変えて、やはりスライム討伐は行いましょう」
しかし、テイガはまだしも、ユウシとは一緒にギガスライムの倒した、校内でも比較的親しい仲である。ユカはフーシュからギガスライムの特徴を聞いたモモコの提案を一蹴するも、多少の心配は隠しきれず、観光の予定を中止して外へと出る決意をするのだった。
- - - - -
「――うん、テイガ君を中心に戦えば、大きな問題は無さそうだ」
「おし!」
ミドルスライムと初めて戦うも、スライムよりも遅く、的が大きな相手に手間取ることはなく、あっという間に討伐を終えたテイガ。その手には練習用の木剣ではない、鋭い刃の金属製の剣が握られており、太陽の光を受けて銀色に輝いていた。
「風属性の魔法も使えるって言ってたけど、どうする?」
「あー、いや、魔法は不安なとこもあるし、今日は剣だけでやってみます!」
「分かった。……あとはユウシ君だけど、うーん」
「ど、どうですか……?」
ユウシはトルクトに自らの属性と魔法の現状について告げ、『爆音』による大量討伐のことも話した。しかし一度の魔法で倒れてはその後何かがあったときに対応できないとして、あくまでそれは最後の手段とすることに決め、今、倒したことがあるスライム相手にユウシの実力を見ていた。
結果は満点からかけ離れており、追いかけては見失い、息が切れて立ち止まり、ようやく討伐できたのはおよそ10分後。トルクトは事前にある程度の話を聞いてはいたが、それがそのまま事実であるとは思っておらず、どうしたものかと首を捻った。
「(いや、そんなことを考える必要があるのか?)……まあ、どうとでもなるよ。ほら」
「あっ、ありがとうございます」
トルクトは討伐の邪魔にならないよう、預かっていた鞄をユウシに返す。そのとき、内心彼が暗い笑みを浮かべていることなど、ユウシ達に気付くはずもない。
「例え聞いたことのない希少な属性を有していても、他のステータスが低いとやっぱり苦労は避けられないよね」
「はい、それでやっと杖に魔力は流せたんですけど、魔法は上手に使えなくて……あ、でも」
何を思ったのか、突然鞄を開けて中を漁り始めたユウシ。トルクトは目を見開き、鼓動が早くなるのを感じた。まさか、いや、そんなことは。そしてユウシが取り出したのは学生証で、トルクトは静かに息を吐いた。
「ほとんどは平均よりも低いんですけど、それでも運だけは良くって」
「運、か」
「はい、おかげでみんなが僕を助けてくれて、僕は頑張れました!」
「運といえば、お前がアレを手に入れられたのも関係してるのかもな」
「アレ?……あ!」
「っ」
ユウシは再び鞄に手を入れ、かき混ぜるようにして漁る。しかしなかなか見つからないようで、漁りながら首を傾げている。トルクトは息をのみ、頬を冷汗が伝い、気づけば半歩後ずさりしている。そしてそんなことに気が付かず、ユウシは再び鞄を覗き込み、口を開けた。
「あ、底の方に倒れてた」
「間違ってもこぼすなよ?」
「……それは、『魔女の涙』かい?」
「はい、ちょっと前にみつけたんです!」
ユウシは小瓶を手に取ってトルクトに見せつけるように掲げる。トルクトは数分前にも見たそれを、まだ手中に収めずにいる判断をした過去の自分を褒め称える。そして何も知らないふりをしてユウシに尋ね、ユウシは大きく頷いた。
「僕、これが魔法使いが喜ぶスッゴいものって聞いて、もしかして神様がご褒美として僕にくれたのかなって思って!」
「ご褒美?」
「ああ、さっきこいつが魔法使えないって話はしてましたよね」
それからテイガはユウシの苦労を語り始めた。ユウシが自分で話しても説得力があまりないと思っての気遣いだったが、照れてすぐにでも話を止めさせようとするユウシに対し、トルクトは感情を殺したように無表情であり、話も相槌をうつことを除いて聞き流していた。
「(珍しい属性を持っていて、その上ご褒美、か)」
ステータスこそ運を除いて平均以下であることは聞いていたが、如何に苦労話を聞かされても、彼らはこの日会ったばかりの他人同士であり、第三者を介した説明があっても、そこにさして違いはなかった。
今すぐにでも貰うものを貰って引き返したい。このまま一緒にいると、うまく隠せている暗い気持ちが溢れだしそうになる。溢れだして、襲い掛かって、人気のないところに捨ててしまいたくなる。越えてはいけない一線を安易に飛び越して、もう二度と戻ってこれなくなる。歯を食いしばり、手を握りしめ、自分の気持ちをどうにか堪えつつ、森まで先導することを言い訳に前を歩く。欲望にまみれた表情が彼らにバレないように。
「僕、適性の属性だけでも良いステータスで良かったぁ……あ、運も!」
「冒険者になったら、困ってる人を助けたいんです」
「ホントはまだ、ギガスライムと戦うの怖いけど、魔法のために頑張るぞー!」
「トルクトさん、手伝ってくれてありがとうございます!」
……今すぐにでも、引き返したい。このまま一緒にいると、嫌でも思い出してしまう。かつて勇者に憧れて冒険者を志した入学生の自分を。人より特別秀でた才能はないが諦めずに邁進してきた学生時代を。仲間と励ましあって貧しい中耐え抜いた冒険者の新人時代を。期待の新人と呼ばれてからも驕らず、愚直に自らを鍛えぬいてきたここ数年間の日々を。
トルクトは前を歩く。その表情がユウシ達にバレないように。悔恨やふがいなさに押し潰され、今にも泣き出してしまいそうな表情が、ユウシ達にバレないように。
当たり障りのない会話を交わして歩いて時間は過ぎて、3人はギガスライムの住まう≪常緑の森≫へとたどり着く。森に足を踏み入れて数分が経ち、久々に森に足を踏み入れたテイガは新鮮な空気を肺に取り込み、軽い足取りで前を歩いていた。
「やっぱ街の賑やかな雰囲気も好きだけどよ、この心も身体も癒される森の心地よさは忘れらんねえよなー」
「ね、僕も図書室で籠って勉強してたときよりも気が楽になったもん!」
「そう、だな」
若かりし頃、そう思っていた日も確かにあった。しかし劣竜に襲われたあの日から、かつては準備運動程度の軽い気持ちで倒せた魔物に、本気で挑んでも勝てなくなったあの日から、この森の空気は味がしない。
トルクトは要らない思考を追い出すと、その場で辺りを見渡してしゃがみ込み、片膝をついて左手で地面に触れる。気付かずに先に進もうとしたテイガをユウシが慌てて止め、引き返してきたテイガはトルクトに尋ねた。
「何やってるんですか?」
「ギガスライムを探すのさ」
「あ、もしかして、動いたあとを辿るとか?」
「いや、もしかしたら辿れるのかもしれないけど、僕にはその方法は分からないよ。ただ、教えてもらうのさ。-選別し、指し示せ。〈捜索〉」
トルクトは詠唱のように呟くと、目を瞑って黙り込んでしまった。しかし集中している様子は傍から見ても分からないものではなく、ユウシ達も静かにトルクトを見守る。やがて数十秒の後、トルクトはゆっくりと目を開き、まっすぐ右前方を指差した。
「あっちだ。あっちの方向にギガスライムはいる」
「え、なんで分かったの!?」
「それも魔法なのか?」
「いや、僕には魔法の才能はなかったよ、全く、ね」
トルクトは学生時代ユウシ達と同じように適性検査を受け、診断の結果、彼は『無』属性であると診断された。彼曰く、無属性は何の性質も示さない属性のことであり、魔法を使えないことはないが、他の属性のように魔法を行使しても攻撃は威力が低く、防御は紙のように脆い。それは到底冒険者に向いたものではないとして、トルクトは魔法を諦めるように言われた過去がある。
「代わりに僕がこの"スキル"を持っているって気づいたのは冒険者になった後さ」
「スキル、ですか」
「ラルドで習うのは、後天的に習得する武技スキルぐらいだったか」
スキル、それは特定の事象を起こす魔法のようなもの。魔法とは違い、習得すれば頭の中に自然に使い方が浮かび上がり、スキル名を口にするだけで行使できる特徴を持つ。ただし魔法と違って応用力がない、一度使用すると次に使えるようになるまでに制限がかかる、無数に種類があることから教育が難しいなど、メリット以上にデメリットが目立つという理由で、ラルドでは一度座学で存在を教えられたのみで、それ以降ユウシは聞いたことがなかった。
トルクトはラルドの学生ではないものの、後輩冒険者からスキルに関する話は聞いており、その教育方針に納得はしていたものの、しかしスキルの有用性を知る彼としては物申したいところもあった。
ただ、だからといって今それを口にする意味はない。強いて言うのであれば、ユウシ達がスキルに興味を持つぐらいだが、それこそトルクトには関係のないことである。
「まあどうしてもスキルを使いたいなら武技を選択するのが確実だけど……今の君たちには余計な話だったね、行こうか」
「い、いえ、勉強になりました、ありがとうございます!」
「……礼なんていいよ」
思わずトルクトは呟いた。これ以上感謝なんてしないでくれ。ここまで来てしまえば、あとはギガスライムを見つけて、理由をつけて鞄を預かって『魔女の涙』を回収し、残りは雑に済ませればいい。ギガスライムを倒してもいいし、倒す振りをして逃げかえってもいい。なんなら戦っている途中で鞄を落とすのが自然か。
見たこともないギガスライムに胸を高鳴らせるテイガと心構えを先輩面して語るユウシの会話を背後で聞きつつ、トルクトは『魔女の涙』を略奪する算段を頭の中で組み立てる。そしてそろそろスキルが示したギガスライムの位置に辿り着く、といったとき。彼は目を疑った。
「ギガスライムが群れている……?」
「トルクトさん、どうしたんだ?」
「静かに」
そこは森の中の広場のように開けた空間になっていて、小さな野草が地を覆い隠すようにびっしりと生えていた。どうやらその野草を好んでいるのか、はたまた木々が薄く、入り込む日光を浴びに来たのか。そこには2匹のギガスライムがいて、各々気ままに揺れていた。
これまでトルクトはこの森で数十匹のギガスライムを討伐してきたが、一度の討伐中に複数匹を見かけたのは攻撃して逃げたギガスライムを追いかけているときぐらいで、複数匹が同じ場所にいるのを見るのは今回が初だった。
「(さっさと終わらせたいけど、流石に今の僕じゃ2匹相手にすることは厳しい、か)」
「わっ、こんなにギガスライムがいる」
「うん、両方を相手にするのは流石に危険だ。今回は諦めて違う場所に行こう」
いくら道を違えようとしていても、彼は元Bランクの冒険者。状況判断能力は失われておらず、後ろ髪を引かれる思いではあるが、その場を後にしようとした。しかし不運は重なるもので、トルクトは後ろを見て目を見開いた。
【ー!】
「と、トルクトさん、後ろにも1匹いるよ!?」
「しかもあれ、なんか怒ってね……!?」
【~!】
【【!】】
草原に生息するただのスライムやミドルスライムとは違い、森に生息するギガスライムはある程度決まった範囲内でのみ行動する。それは周囲より魔素の濃度が高かったり、餌となる植物が多く生えていたりするためだと予想されているが、確実なのは、個体によっては縄張り意識を持っているということ。それは特に餌場に関して顕著に確認され、普段は温厚だったり臆病だったりするスライムでも、敵とみなした相手には果敢に立ち向かう。
立ち去ろうとしたユウシ達の帰路の先で縄張りに向かおうとしていたらしいギガスライムは彼らを目撃した。そして言葉は発さずとも、その個体は何度も思い巨体を跳ねさせており、普通ではない様子が誰にでも見て取れた。そして一際大きく飛び跳ねれば着地の衝撃で地面が揺れ、振動に敏感なスライム達は仲間の怒りを感じ取った。結果、ユウシ達の背後から、2匹のギガスライムが接近するのが分かった。
「まずい、挟まれた!」
「ど、どうしよう!?」
「そんなん、やるしかねえだろ!」
【【【ー!】】】
ギガスライムはそこまで移動速度が速くないため、運が良ければ走って逃げきることは可能である。ただし万が一にも転んでしまい、上から押し潰されてしまえば大怪我は免れず、最悪死に至る場合も考えられる。それを考慮したうえで、さらに帰路を外れた逃げ道は木の根が絡んでいて逃げるユウシ達には足場が悪いが、追うギガスライム達には関係がない。ダメ押しに、ステータスの低いユウシでは、逃げ切れるか分からない。
窮地に追いやられたユウシ達。残された選択肢は立ち向かい、討伐することのみ。じりじりと迫り寄るギガスライムを前に、3人は覚悟を決めるのだった。




