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「おはよー!」

「おはようございます」

「おはよう。どう?昨日の薬は効いた?」

「うん、だいぶ軽くなったよ!」


 日付は第4週3日目。ユウシはテラス席にてユカ、シガナと合流し、シガナの質問にあるわけでもない力こぶを強調して答えた。


 シガナが昨日ユウシに差し出したのは筋肉痛を和らげる薬。ギガスライムの魔核を売って得たお金で購入したもので、ユウシは今朝は快適な目覚めを得られた。


「でもごめん、それでお金のほとんど使っちゃって」

「いいですよ。もともとお金目当てで討伐したわけじゃありませんし」

「まあ他にも回復薬とか買ったからだけど、それでも薬は高いからね〜。癒属性の知り合いとかいたらそこら辺楽できるんだけど。ユカさん、友達にいない?」

「いませんけど、それはなんですか、一昨日の話を覚えていてわざと言っているんですか」

「さぁね~、あ、席離れたほうがいい?」

「……」


 悪戯な笑みのシガナは料理を持って離れた席に移る。ユカは悟った。この人はもしかして、他の異性とは違う意味で面倒な人なのではないか、と。なおユウシはフーシュの名前を出すか迷ったが、友達と言っていいのか分からなかった上にテイガの言葉を思い出して罪悪感が蘇っており、それどころではなかった。


「さて、冗談はさておいて。ユウシは昨日まででレベル、どれくらい上がった?」

「あ、えっと。ちょっと待っててね……」


 ユウシは食器を置き、鞄を机の上において学生証を探し始める。その途中、チラリと見えたお守りの宝石を見てシガナが考え事をしていたことに、ユウシは気付かなかった。


「あった!えっと……えっ、スッゴイ!今レベル15だって!」


 昨日と一昨日で討伐したギガスライムは計12匹。数としてはスライムの三分の一より少し多い程度にすぎないが、討伐ランクが上の魔物という効果は絶大だった。加えて嬉しいことはそれだけではなかった。


「あ!ステータスも上がってる!」

「お、動き回った成果が出たね。表示されるステータスはレベルと関係ないから、上がったステータスはまちがいなく、ユウシの努力の証だよ」

「そっか……そっか!」


 ステータスを開いてみると、攻撃力がGからFに、敏捷がFからEへと上がっていた。これはまさしくユウシ筋肉痛が無意味ではないことを示しており、ユウシは上を向き、しばらくその喜びをかみしめると、目元を拭って気合を込める。


「僕、今日も頑張るよ!今日でレベル20まで行っちゃうぐらい!」

「どうかな~、すぐにスライムが見つかればいいけどね~」

「あの、そのことなんですが。今日は休み、もしくは午前か午後のどちらかにしてもらえませんか?」

「え」


 ユカの思いがけない申し出に、ユウシの表情が固まる。当然ユカには理由があり、言いにくそうに話した。


「ギガスライムの討伐は私自身のためになりますし、ユウシさんの動きに文句があるわけでもありません。ただ、私の問題なんですが、少し森までの移動が辛すぎて」

「あー、そういえばそうだよね、ごめん、気づかなくて」


 午前中に森で討伐を行い、昼食のために街に戻って、午後に再び森に来る。街から1時間離れている森は、途中で挟む休憩の時間も加味すれば、移動だけで6時間弱かかっており、体力の低いユカにはなかなかに耐えがたい苦痛ですらあった。


「なにか移動に使える方法があれば問題はないんですけど」

「残念ながらないかな。馬車になんて乗ったら即学校に連絡だね。もちろん制服だからとかじゃなくて、街の出入りの身分証明に学生証を使う時点で、ね」

「そっか……じゃあしょうがないね……」


 移動の辛さは言葉にはせずともユウシも感じていたことであり、それを協力してくれているユカに押し付けるわけにもいかず、ユウシはしぶしぶ納得した。


「今日は午前中行って、午後は各々自由ってことにしようか」

「分かりました」

「さーて、そうと決まれば時間は有限だよ、ユウシ?」

「はっ!」


 今日も今日とてユウシだけ朝食を食べ終えていないため、ユウシは急いで口の中にご飯をかきこもうとして、以前同じようにして喉に詰まらせたことを思い出す。そうして結局よく噛んで食べ、およそ5分後、ユウシは人並みの早さで、安全に食事を完食した。


「ごちそうさまでした!」

「そう、毎年初心者用の杖の魔導石の材料にギガスライムの魔核が使われるから、それなりに高値で売れるんだけどね」

「この街近辺で取れる魔核は草属性の割合が多いために、昨日はそこまで高い金額にはならなかった、と」

「ランクが低いと言えども需要的に良い値段すると思ったんだけどね~。これなら魔素遮断加工をして別の機会に、なんなら強制蘇生で環境適応による属性変換を誘導しても良かったかな~」

「環境適応というのは?属性変換につながるということは」

「ご・ち・そ・う・さ・ま・で・し・たあああ」

「あ、終わった?」


 難しい話に花を咲かせる2人を止めるべく、ユウシは大きな声を出す。シガナは1回目の時点で聞こえていたのだが、面白がって逆に話を難しくしていたことを、ユウシは知る由もない。なお、ユカは気付いていなかった。


「終わったよ!ほら、早く行こうよ!」

「はいはい、少しは落ち着こうね~」

「無理!僕、先行ってるから!」


 いち早く食器を片付けたユウシは2人を待ちきれずに1人で食堂を飛び出した。そんな姿を見て、ユカは微笑みを浮かべていた。


「ユウシさんって、良い意味で子どもみたいな人ですね」

「そう、だね」

「……?、どうかしましたか?」

「いや~、少し嫌な予感がしてね」


 珍しく真顔なシガナを見てユカが尋ねれば、シガナは遠くの空を見上げる。その方向には、青い晴れやかな空には似合わない、薄暗く厚い雲が見えていた。


 ー ー ー ー ー


【~……】

「ふー、終わったぁ」


 1体目のギガスライムを討伐し終え、溜めていた息を吐くユウシ。ギガスライム討伐2日目となる今日はユウシもユカも慣れ始めていたこともあり、昨日よりも短い時間で倒すことが出来た。しかし討伐過程に課題が何もないわけではなく。


「ユウシは事前に移動先の地形を意識したほうがいいかな。何回か木の根に躓きそうになってたよね」

「う、うん」

「ギガスライムは動きが遅いし基本的に遠距離攻撃しないから、分裂体を躱した後は1回周囲を見渡すといいかもね。ただ後半は分裂によって軽量化して素早くなるから、そのときまでに移動場所は覚えておいた方がいいね。全体的には安定してたし、次からは自分がいなくてもよさそうだね」

「!、うん、分かった!」


 シガナが逃げるギガスライムの妨害を担えばその分討伐数も増える。その分貰える経験値が増えることもユウシには嬉しかったが、なにより1人でも役割をこなせると判断されたことが嬉しかった。


「ユカさんは安定性を意識してできてていいね。あとは軌道制御かな。最悪失敗したら今は自分が対応できるから、どんどん試していいよ」

「そうでした、昨日あなたが使った『霧散』という魔法って」

「はーいその話はまた別の機会でお願いしまーす、自分はギガスライム探してくるから、ユウシは魔核をよろしくね~」

「あの!」


 シガナは逃げるようにその場を去り、ユカは聞きたい話をはぐらかされてムッとした表情である。


「前から思ってはいましたが、シガナさんは自分のことを話そうとしませんよね」

「あ、確かに。僕も僕のこと話してばかりかも」

「私には国のこととか魔法のこととか尋ねておいて、少し酷いと思いませんか?」

「……魔核拾ってきまーす」

「ユウシさん?」


 シガナとユカの会話の内容は知らないが、魔法についてはおそらくユカも乗り気なのではないかと思っていたユウシ。しかしそれを指摘できるわけもなく、また深堀しても面倒なことはテイガとモモコの2人から学んでいたため、不服そうなユカを放ってユウシは魔核のもとに向かった。


「はい拾った〜っと。……ん?」


 ユウシが緑色の魔核を拾い上げたとき、そこに不自然なものが落ちていることに気が付いた。顔を近づけてよく見れば、それは小さな瓶。


「誰かの落とし物かなぁ」

「ユウシ、次のギガスライム見つけたよ~」

「あ、今行く!」


 中には水色の液体が入っていて、手にとって見れば微かに輝いているようだった。それが不思議に思ったのか、持ち上げて透かして見たり、よくよく観察してみたりしているとシガナの名前を呼ぶ声がする。ユウシは返事をすると、小瓶をポケットにしまい、既に歩き出していた2人のもとへ駆け出した。


 それから約30分後。先ほど見つけたギガスライムを討伐してからなかなか次が見つからず、森での移動で疲労の溜まったユカを休ませるため、3人は一旦休憩を取っていた。


「お手間をとらせてすみません」

「全然大丈夫!どう?元気になった?」

「はい、おかげさまでもう行けそうです」


 1日一緒に過ごしたおかげで普通の会話を交わせるようになった2人。なおシガナは時間が惜しいとギガスライムを探しに行っている。ユウシも手伝いたかったが、迷子にならないならお願いしたいと言われ、その場で静かに倒木に腰かけた。


「そういえばユウシさんは、前に一緒にいたご友人とは練習しているんですか?」

「うっ」

「?どうかしましたか?」

「な、なんでもない」


 なかなか帰ってこないシガナがどこまでいったのかなどと考えているときにされた不意打ちのような質問に、ユウシの口から呻いたような声が漏れる。首を傾げるユカに、慌ててユウシは誤魔化した。


「えっと、テイガ達は、その。そっちはそっちで大変そうだから」

「ならいいんですが。あなたは少し、慣れてきましたが、あの方が来るのははっきり言って嫌なので」

「やっぱり苦手なの?」

「苦手以上に、無理ですね」


 ユカの遠慮のない物言いにユウシは苦笑いするが、初めての出会いを思い出せばテイガを擁護することはできず、ユカの脈無しの様子にテイガを心の中で慰めることしかできなかった。


「ユウシさんはよくあの方と一緒にいられますね」

「確かにテイガはたまに……いや、よく変になるけど、ああ見えても、テイガは優しくていい友達だよ?」

「本当ですか?騙されてたりしませんか?」

「ほんとだよ」


 欠点は無いとは言わないが、それでも本当だと言い切れるぐらいにはテイガのことを信頼している。いつもはすぐに逸らされるユウシのまっすぐな視線を受ければ、ユカもそれ以上テイガについて悪く言うことはなかった。


「でも、テイガは無理でも、モモコとは仲良くなれると思うな~」

「もう1人の女性の方ですか。あの方もあまり良い印象ではないですけど……」


 図書室での出来事から判断すれば、モモコはテイガに暴力を振るっていたという記憶しかない。ユカの苦い顔を見て、ユウシはなんとかイメージ改善を試みる。


「モモコもいい人だよ!いっぱい話しかけてくれるし、元気だし、優しいし!」

「そんな人が暴力を……?」

「そ、それは相手がテイガだったから」

「なら、やはりテイガさんが良くないのでは?」

「それはそう。……じゃなくて!そんなことない、ことはないかもしれない気がしないでもなくて……」

「……ふふ」


 気になる異性を見つけるたびに話しかけに行くテイガに巻き込まれた日々を思い返せば意図せず即答しており、その後も否定しきれずにユウシが悩んでいると、ユカが笑いをこぼす。


「仲がいいんですね」

「うん!だから僕も早く魔法を使えるようになって、一緒に練習できるようにならなくちゃ!」

「応援してますね」

「すっかり仲良くなったみたいだね。良かった良かった」


 声のした方を振り返ればシガナが帰ってきたところだった。しかしその顔は明るくない。


「ギガスライム見つかった?」

「残念ながら近辺にはいないかな。昨日そこそこ倒したし、もう少し森の奥までいかないといけないかもね~」

「どうしますか、今から行きますか?」

「迷ってる時間も勿体ないし、早速行こうよ!」

「……」


 ユカとの会話で高い意欲をさらに高めたユウシが返事をするも、珍しくシガナはすぐに答えず、沈黙し、何かを悩んでいる様子だった。


「?、シガナ、どうしたの?」

「……いや、駄目だな、今日は引き上げよう」

「えっ」


 ユウシのやる気とは裏腹に、街への帰還を提案したシガナは空を見上げた。驚くユウシもつられて見上げれば木々の隙間から空が窺え、ちょうど太陽は雲に隠れて辺りが薄暗くなるところ。既に青空は半分以上どんよりとした雲で覆われており、シガナが言わんとしていることは理解できてしまった。


「朝から雲行きが怪しかったから、なんとか午前中なら間に合うかなって思ったんだけど、想像以上に雲の流れが早かったね。せめて近場の1匹を倒して終わりたかったけど、奥まで行ったら流石に時間がかかりすぎるかな~」


「そっか……雨に濡れて風邪ひいちゃうと大変、だし、ね」

「ごめんね、自分が見つけられればよかったんだけど」

「いやいや、むしろ探してくれてありがとうだよ!気にしないで!」

「でもな~、ここにきて雨はきっついね~」


 シガナ曰く、雨の翌日は森が湿り、足場が不安定となるため、ユウシには動きづらくなる。また木々への延焼こそしにくくなるが、ギガスライムが体内に多分に水分を蓄えるため、火属性の魔法では弱点をついても倒すことが難しい。そのため労力に見合った結果が得られず、討伐には向いていない。


「最悪今週は森じゃ無理かもな~」

「なんとかなりませんか?」

「まあ雨次第だね。明日晴れれば明後日はギリギリできるかも」

「そうですか……」

「しょうがないよ、天気なんて分からないもん!」

「ユウシさん……」

「ここで悩んでたら雨が降っちゃうし、とりあえず帰ろ!」


 ユウシのその言葉に反対する理由はないため、3人はひとまず荷物をまとめて森を出る。帰り道の途中、ユウシは気丈に振る舞っていたが、とりとめのない会話が多く、言葉の端端にはやはり天気やギガスライムを気にしている様子が窺えていた。そんなユウシを追い詰めるように空はどんどん雲で埋まり、3人が街に着いて少しすればポツポツと雨が降り始める。それはその日のうちには降りやまず、翌日の早朝まで静かに街を濡らしていた。


 ー ー ー ー ー


「……なにしようかな……」


 第4週4日目の朝、人より早めの朝食を終えたユウシは食堂近くの広場でベンチに腰掛け、通常の時間に食堂を利用する生徒の出入りを眺めながら呟いた。近くにはシガナもユカもおらず、ユウシは数日ぶりに1人となっていた。


 少し見渡せば、ところどころのくぼんだ場所に小さな水たまりができている。食堂に来る前にそれを確認したシガナはこの日の討伐は中止することを話し、またやることができたと先に食堂を立ち去った。ユカもまた、校内では共に行動すると迷惑をかけると言ってどこかへ行ってしまっていた。


 残されたユウシだが、シガナは去り際、この日を休日としてはどうかと提案していた。思い返せばここ1か月、まともに休みを取った記憶がないユウシ。休学届を出したとはいえ講義に出ることはできるが、座学は復習で、魔法は意味がない。それならいっそ休めるときに休み、また後日頑張ればいいとシガナは言っていた。


「でも僕、休みの日って何してたっけ」


 これまた思い返せば、初めての休日は魔法の練習をしており、続いて説教を受けて一日中草むしり。テイガたちの勧めで一度街に出たことはあったが、スリミレに会えた喜びがあったとはいえ、迷子になった不安を拭いきれず、1人では行きたくなかった。


「そのあとはずーっと魔法の勉強」


 フーシュ、モモコ、テイガが魔法を使える横で1人、何もできないのが嫌で休日にも勉強をするようになった。自身のステータスの低さに絶望しつつも無理やり心を立ち直らせ、それからは平日も休日も関係なく勉強をして、何も進歩がないまま1ヶ月が過ぎた。……そこまで考えて、ユウシは首を横に振った。今は落ち込む時間じゃない。


「……1人で何ができるかな」


 しかし今日これまでに空いた時間がなかったユウシには、1人で何をすればいいのかが分からなかった。そこで入学前はどうしていたのかを思い出そうとして、気が付いた。


「そういえばタユニケロでも、雨の日に物語を読むこと以外は全部、テイガとモモコがやりたいことをやってたっけなぁ」


 ユウシが休みの日の過ごし方が分からなかったのは幼少期から、他の誰かに従って行動していたことも起因していた。それ故に、ユウシがやりたいことを考えたとき、頭に浮かぶのは親しい友の顔。


「……あっ、テイガたちだ」


 ぼーっとしていたユウシの視界に入る3人の姿。食堂に入っていくテイガとモモコは何かを言い争っていて、フーシュは止めようとするがうまくいかず、周囲の生徒の視線を集めていた。そんな様子が遠くからでも分かり、ユウシは気付けば立ち上がっていた。


「……やだ。追いついてからがいい」


 しかし歩こうとする足を止め、ユウシは後ろを向いて走り出す。テイガはつまらない遠慮はいらないといったが、それでもユウシは悲しい報告よりも、嬉しい報告がしたい。一緒に遊ぶのも、余計なことを考えず、全力で楽しみたい。テイガたちにも、できることなら気を遣わせたくはない。


「やっぱり僕は魔法を練習するよ。それが無駄なことだとしても」


 ユウシは自室に向かっていた。寮棟に入り、部屋の鍵を開け、中に入り、机の端に置いてあった杖を見る。


「最後に持ったのはいつだったっけ」


 両手に持って念じても、力を入れても、掛け声を出しても何も変化がなかった魔導石。それを見るたび才能が無いと言われている気がして、見るのが嫌になり、後半は自身の知識不足を決めつけて、杖を用いた練習を止めていた。机の端に置いていたのは、極力視界に入れたくなかったから。


「でもそれは大間違い」


 シガナは言っていた。なんども繰り返し、失敗して、失敗を重ねて熟練値を溜めるのだと。後天的な適性値を上げることで魔法を使えるようになるのだと。ユウシは魔導石を見る。なんの属性にも染まらない、なんの属性も持たない真っ白な魔導石。それでもユウシはもう一度手に取り、力を込めた。


「今度こそ、諦めない」


 絶対に魔法を使えるようになる……でも。凄い冒険者になる……だけど。


ー無理だよ。ダメだよ。できないよ。


 心に抱く強い想いは本物で、決して嘘偽りではない。しかし願いを思い浮かべるたびに、どうせ無理だと否定してくる自分がいる。振り払っても振り払っても、心に潜むそれは払いきれることはない。この日は特に、時間に余裕があり何もしていなかったせいか、その声は一際大きく聞こえた。


「今度こそ、諦めない。……けど」


 早く魔法を使えるようになって、嬉しい報告をテイガたちにしたい。一緒に魔法の練習がしたい。そのための希望も見つけて、頑張ればなんとかなるかもしれない。でも、ようやく魔法が使えるようになった自分が、スタートラインに立ったばかりの自分が、ずっと先に進んだ彼らと一緒に練習なんてできるのだろうか。足を引っ張ってしまわないだろうか。いないほうが良かったなんて、思われたりしないだろうか……。


「辛いなぁ」


 魔法を使えるようになれば全て解決すると思っていたのに。1つ悩みが消えれば、2つ3つと悩みが生まれる。心に抱く強い想いは決して嘘偽りではない、と、ユウシはそう思いたい。手に握る杖の魔導石はやはり、光ることはなかった。

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