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 ギルドから出てすぐ、ライティエットは北側の城壁を真っ直ぐ目指した。ギルドマスターの情報通り、城壁から一つの山が見える。

 距離的に今から向かって山の麓に辿り着くのに半日、ダンジョン探索に1日から2日、その後討伐、休息、帰還ー・・・全行程で短くとも3日と言ったところか。

 亜空間収納庫(アイテムボックス)の備蓄は一人分だけならギリギリ何とかなる。足りなければ狩りでもなんでもすれば良い。最悪水は魔法で出せば良いし、魔力回復用のポーションも残っている。


 問題ない、行ける。


 と、ここまで考えてライティエットはハッと思い出す。



 メーディエだ。



 夜には帰る、と言ってしまった。

 側で見張っていた方が良い、とも思った。

 けれど今宿に戻って、彼女はいるだろうか?

 買い出しを頼んでしまったし、出かけている可能性が非常に高い。

 何より討伐に連れて行って、もし万が一、魔族の方に味方されたら?

 でもだからと言って3日も放って置くのも危なくはないか?


 ライティエットは悩んだ。

 とても、とても悩んで、悩んでーー・・・魔力回復ポーションだけを買い足した。

 外に出る為の北の城門前にポーションを売っている薬屋があったのが決め手だった。


 そして城門を出る前に伝達魔法を飛ばす。

 届け先はもちろん、メーディエである。


 ーー討伐依頼を受けた。

   すまないが帰宅は明日の夜になるーー


 空中に浮かんだ紙に青色の文字が浮かんで消える。紙は空中に浮かんだまま折り畳まれていき、鳥の姿になって宿の方へ飛んでいった。

 それを見送ったライティエットはすぐに北の城門を抜け、山に続く道を走る。ある程度走った辺りで脇道に入り、更に奥の方へ。

そして道からこちらが見えないほど奥に行ってから抑えていた魔力を解放した。

 身体中に魔力が巡り、力が増すのが分かる。ライティエットはその状態を維持したまま、目の前にある大きな木の幹を駆け上がった。一気に天辺まで登り切り、山までの方角を確認。麓ら辺まで林が続いているのを確認すると、そのまま駆け出した。


 何処を。

 木の上を。


 魔力によって肉体強化の掛けられた身体は凄まじいスピードと跳躍力で密集した木の上を走り、離れた木へと飛び移る。

 本来ならば点在する林を迂回しながら抜ける山までの道を障害物無しで一直線に走り抜けた。



 そうして、本来なら山の麓まで半日はかかる道のりを数時間ほどで走り切ってしまったのだった。


 ライティエットは少しばかりの休憩を取りながら自分に回復魔法をかけ、魔力回復ポーションを2本飲み切る。

 肉体強化は身体全体に魔力を巡らせるだけで簡単に行える魔法なのだが、その分消費する魔力量がとてつもなく多い。出来ればあまり使いたくはない荒技だったが、今回はそんな事を言っていられない。


 1時間ほど休んでからライティエットは立ち上がって山へと視線を向けた。

 ダンジョンの固定化が進んでいるのだろう、空間を歪めるための魔力が見事な球体を描いて山と周辺一帯を覆っているのが見える。

 球体というダンジョンの中ではありとあらゆる植物が生き物のようにうねって道を塞ぎ、視界は濃い霧の所為で数歩先すらまともに見えない。更に一定の時間が経てばザザっと音を立てて周囲の木々の位置を変化させている。

 更にこんな入り口付近では確認出来ないが、ギルドマスターの情報によれば奥には毒の沼や酸の雨もあるらしい。

 自然をそのまま利用したダンジョンとしては至ってシンプルな、けれどなかなかに面倒くさい形状だ。順当に攻略して行こうとすれば、どうしたって数日はかかるだろう。


「やはり、あの方法で行くか」


 ライティエットはため息混じりに言うと、以前メーディエを探す時に使った探知魔法を発動させた。膜のように薄くした魔力の波を扇状に山に向かって広げ、強い反応を探っていく。

 上級のモンスターの反応が10体以上、こちらは完全に無視だ。後でギルドに報告だけはして、討伐は任せる。それらを通り越した奥、ダンジョンの中心であり、山の頂上付近で巨大な魔力反応を捕らえた。

 魔力の大きさからして明らかに伯爵級(アール)か、もしくはそれ以上で間違いない。

 だが念のためにダンジョン全体を探索しておく。子爵級(バイカウント)3体の例があるのだ、慎重になるに越したことはない。

 上級のモンスター以外に魔族の反応が先程のものしかない事を確認したライティエットは、静かに魔法を唱え始めた。


「我は謳う、風の如く。我は疾る、風の如く。我は舞う、風の如く。自由の象徴にして天空の覇者。我は汝と共に駆けることを今ここに願わん」


 翠色の魔法陣が浮き上がると共にそこから竜巻を思わせる強風が吹き荒れる。風は瞬く間に勢いを増し、ライティエットの身体を軽々と空高くに舞い上がらせた。

 ライティエットは魔法の発動と同時に肉体強化も発動させて押し寄せてくる風圧に耐える。そうして数秒後には山の頂上よりも高い位置まで飛び上がることに成功していた。


「さて、上手く着地させてくれよ・・・」


 宙に浮かんだまま、腰の剣を鞘から抜く。

 そして剣を構えてグッと身体を縮こませると、思い切り空を蹴り、山の頂上に向かって急降下した!


ーーガギン!!!!!


 魔法によって落下速度を加速させ、その勢いを利用して魔力の球体の天辺に剣を思い切り突き刺す。

 球体はベギッバギッ!と音を立てて四方にヒビを広げていき、最終的にはガラスが割れるが如く粉々になって消え失せていった。



「な、な、なな、なななな、何だ!?き、キサマ、貴様なのか!!?い、いったい何をした!!?」


 落下の勢いを殺せずに地面を滑るライティエット。そんな彼を球体が消え去るのをただ呆然と見ていることしか出来かった魔族が半狂乱になって問い詰める。

 だが、


「くっ・・・やはり着地が上手くいかないか・・・」


ライティエットは魔族の方を全く見ず。砂埃を払いながら立ち上がって剣を持ち直していた。


「聞け貴様!!この私を無視するな!!貴様おかしいぞ分かっているのか?!この私の丹精込めて作ったダンジョンを無視して空から来るとか!!しかも、本来触れられない魔力のドームに剣を刺して壊すとか!!あり得ない!!あり得ない!!これからもっともっと複雑にして、この大陸中を覆って、阿鼻叫喚のオーケストラを奏でる筈だったのに!!!それを貴様は!よくもよくも!!!!頭おかし過ぎる!!あり得ない!!あり得ない!!あり得ない!!ありえ」

「うるさい、死ね」


喚き散らす魔族に剣を一閃、振り降ろした。




読んでくださってありがとうございます。

今回の話、ライティエットが急な出張を嫉妬深い奥さんに浮気と勘違いされないかと心配して慌ててるサラリーマンみたいになってるなぁと思いながら書いてました(笑)

ごめんねライティエット(笑)


誤字脱字ありましたら知らせていただけると大変助かります。


少しでも面白いと思っていただけたら↓から評価していただけると嬉しいです。

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