終-13 エピローグ
呼ばれている、自分の名が。
聴こえてくる、何度も夢で聞いた愛しい人の『声』が。
答えなければ、自分も愛しい人の名を音にのせて。
「・・ディエ・・・・メーディエ」
ぼやけた視界に黒い影が光を遮り、自分の顔を覗き込んでいる。
声はその影から囁かれていた。
影の向こうには薄紅い明け方の空が、やはりぼやけて見える。
なかなか戻ってくれない視力がもどかしい。
声も、掠れてしまって出したいのに出てきてくれない。 声の出し方を忘れてしまった訳ではないというのに。
ーーー声よ、お願い・・・出て・・・。
「・・・らぃ」
ようやく戻った視界に映ったのは黒銀の髪と瞳を持つ青年。 彼の瞳には薄っすらと涙が溜まっている。
「メーディエ!」
次の瞬間、強く抱き締められた。
だが苦しいと思う前に、メーディエも同じように強く抱き締め返す。
「ライ・・・ライ、ライ! !」
温かな温もりと鼓動。
小さいながら、それでも必死になって名を呼び抱きついてくるメーディエという存在が何よりも、誰よりも愛しい。 抱き締める腕に更なる力を込めて、自分も名を呼び続ける。
もう二度と離れはしないと、互いに誓い合うかのように。
「一一・・何だか夢みたい。もう二度とメーディエとしてライの傍にいられないんだって思ってたから」
ライティエットの手を握り締め、本当の意味で色を取り戻した世界を見詰めながらメーディエは呟いた。
「夢じゃないさ。なんなら、頬をつねってやろうか?」
「・・・痛そうだから遠慮しとくわ」
視線が重なって、二人は同時に笑いだす。
こんな幸せはシタヤの家で過ごした時以来だ。それ自体数日前と言えるほどつい最近の事なのだけれど。 二人はもう何年も前の事のように感じてしまっていた。
ライティエットは腰のポシェットからサァーラのオルゴールを取り出し、底の螺子を回して蓋を開ける。
ゆっくりとしたテンボの静かな曲がオルゴール独特の金属音によって奏でられ始めた。その流れる曲を目を閉じて聴くメーディエの掌に、ライティエットはオルゴールの箱から取り出した物を乗せて握らせる。
メーディ工はそれに気付いて目を開け、自分の手の中にある物を見た。
そこには細かなペンデロークカットがなされたサファイアのイヤリングが太陽光を受けながら輝いている。
イヤリングは今の空と同じ、水のように透明な光を宿した蒼色で、彼女の耳を美しく飾った。
そして二人は立ち上がり、美しき蒼い空の下、手を繋ぎ歩き出す。
新たに始まる物語の旅路に向かってーーー。
私は語り 人がまた語る
大地を覆いし闇は
まるで淡雪の如く溶けて消え失せた
開放されし大地には
豊かな色を持つ鳥や虫さえも色褪せて見えてしまうほどの
美しくも鮮やかな草花が 清き風と共にゆれ
空には 極上の宝石もただの石ころ同然に
思えてしまう星々が 夜を強く儚く輝かす
私は知り 人は知らぬ
総ては美しき一組の男女が 光をもたらした事を
その者 剣の鋭き光を宿した銀の化身
その者 小さく儚い けれど生を宿した紫の花の化身
私は聞き 精霊が語る
その者たちが既にこの大陸から姿を消した事を
まるで伝説のように褒め称えられ
これから語られてゆく事を
そして私は奏でよう
夜の中 光無くさず
闇をも受け入れたふたりを想う曲を
いつの日かふたりが
この故郷の地に帰還する その時まで…
夜想曲 END
ここまで読んでくださって本当にありがとうございます!『夜想曲』これにて完結です!!
長期間の連載に最後までお付き合い頂き、本当にありがとうございました!!
ふたりの旅路はまだ続きますが、一旦はここで閉幕となります。機会がありましたら、別の物語にてふたりがひょっこり登場するかもしれません。
それまでどうか皆様お元気で。
今後は改めて登場人物や用語の紹介・説明文を書いていきたいと思います。
あと思いついたら幕間もある・・・かも?
少々体調を崩しながら書きましたので確認が不十分かもしれません。誤字脱字ありましたら、知らせていただけると大変助かります!
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