終-12
巨大な未知から、光が漏れる。
魔族とモンスターとの戦いに明け暮れていた者たちの頭上で、ビシリ、ビシリ・・・と小さく乾いた音が響いた。
ハンター達が、いや、逃げ惑い祈りを捧げていた大陸中の住民が、それこそ魔族達すらも頭上に目を向けたことだろう。
直後、宙に浮かぶ巨大な未知の建造物から、ポロリ・・・と小さな欠片が落ちた。
それを合図に、雨のように、滝のように、粉々に切り裂かれた建造物が降り注いできた。
粉々とは言ったとしても元があまりに巨大な建造物だ。その欠片となれば人を押しつぶすほどの大きさと重量を十分に持っている。
このままにしておけば、未知の船が浮かんでいた真下にあるフェスティア大陸中央部は降り注ぐ瓦礫によって潰れ、埋もれてしまうだろう。
ーーフェスティア大陸東部
「・・・おいおい、ライティエット・・正気か?随分派手にやってくれたねぇ!!」
「ミネリア様!!バリスタはどういたしましょう!」
「置いていくに決まってんだろ、ここからじゃ何も出来やしないよ。さっさと撤退して町の被害を食い止めるよ!!」
「「「はい!!!!」」」
ーーフェスティア大陸北部
「はっはっはーーーーーっ!!コイツはすげぇや!!!やりおったなライ坊!!!!」
「親方!あぶねぇ!!」
「あぁん?問、題、ねぇ、よっ!!!!」
ーーブォン!!ガラガラどがしゃーん!!
「破片がちょいちょい飛んで来てやがんな。後退しながら全部吹き飛ばすしかねぇか。町に被害が出ねぇように最後の大仕事だ!気合い入れていくぜオメェら!!!!」
「「「合点承知!!!」」」
ーーフェスティア大陸南部
「なんとまぁ・・・豪快なことで。最後はアレの片付けですか」
「モルド様、帰還用の魔法陣起動完了しました!!」
「ではさっさと帰りますよ。このままでは中央部の被害がとんでもないことになってしまいますからね。あぁその前に簡易結界を周辺の町や村に飛ばしておきましょう」
「(あれだけ特大魔法を連発してまだそんな余力があるのかこの方は!?)」
ーーフェスティア大陸西部
「「兄者」」
「うむ、ハンター諸君は即刻魔法陣で帰還せよ」
「え、天空の守人様達はどうされるのですか!?」
「「「愚問なり」」」
「我らは守人」
「守るは人民」
「ならばやる事は一つ」
「お、おれ達も行きます!!」
「守人さん達に、全力でついて行きます!!」
「その心意気や良し」
「では空をかける者たちよ」
「我らに加勢せよ」
「「「全力で飛ぶ。いざ参らん!!!」」」
「「「「はい!!!」」」」
ーーフェスティア大陸中央部
「ちょっと、冗談でしょ!!!??!」
「うぉおお?!!?マジかコレ!!!!」
「あわわわ!ぺしゃんこになっちゃうにゃ!!?!」
「きゃい!!特大結界!!!急ゲ!!!!」
「あ、は、はいにゃ!!!えーーーーーい!!どデカいの、いっくにゃーーーーーーーっ!!!!!!」
「結界魔法ガ使エルヤツ、きゃい二続ケ!!!!」
「あーもう!!ここまできて潰れて死ぬとか絶対ゴメンなんだからね!!弓使い!!!結界が壊れないように出来るだけ落下物弾くわよ!!!」
「近接連中は結界内に入り込んだ魔族とモンスターの討伐だ!!行くぞーーーーーっ!!!!」
「「「「「「おおぉぉぉ!!!!!」」」」」」
現状を理解した者から様々な怒号が上がる。
それぞれがそれぞれの力を持って落ちてくる破片を遮り、避け、弾き、更に粉砕する。
空を飛ぶ魔族達は己の住処であり拠り所である城の崩壊にただただ呆然となり、降り注ぐ住処に押しつぶされていった。
「待たせた!!現状報告!!!」
「「「「ミネリア様!!!!」」」」
「きゃいヲ中心二、魔術師達デ多重結界ヲ展開中」
「で、あたしら弓部隊が落下物出来るだけ弾いて細かくしてるとこ、です!!あーもうデカい!!!」
「あるす達近接ガ結界内ノ魔族達ヲ討伐中デーー」
「私が今加勢に来たところです。とりあえず結界の補強を終えて、魔術師を半分休ませました」
「よし、皆ご苦労!!よくここまで耐えてくれたね!」
「ハァハァ、ありがとう、ございます、にゃ、ハァハァ・・。でもミネリア様、マジックポーションがもう、少なくて・・・」
「分かってるよ。今ギルドで薬師たちに全力で作らせてる。あとはーー」
瓦礫の雨はまだ終わりを見せない。ここまでただでさえ魔族とモンスター達を相手に戦ってきたハンター達に疲労の色が濃く出ているのは最早仕方のないことだろう。
襲撃という脅威の後にきた新たな問題にミネリアはどうしたものかと空を睨む。
そこへ、力強い羽ばたきが耳に届いた。
「遅参ご容赦」
「おぉマーズじゃないか!無事で何よりだよ」
「報告あり。空かける者の部隊を編成。落下物の中でも特に巨大な物を中心に移動、もしくは粉砕を命令」
「マーズさんそれ最高です!!」
「本当にありがたい、部隊編成感謝いたしますよ」
「礼不要なり。報告続行。ガーフィス殿、中央部外に飛んだ落下物の処理をしているところを確認。落下物、降下速度が遅い物多数」
「あぁそれはあたしも気になっていたところだ。本来ならばとっくの昔に全部落ちてきてても可笑しくないからね」
「あれだけ巨大な物が浮いていたのです。浮遊の魔術が付与されていただけではなく、利用していた鉱物そのものに浮遊の特性があっても不思議ではないでしょう」
「なるほど、それのおかげで今どうにか時間を稼げてるってことか」
「追加報告あり」
情報を元に現状の打開策がないかと頭をフル回転させるミネリアとモルドにマーズは更に続ける。
「大陸中の精霊達、皆、力を霊峰『カリシュディア』に送っておられる」
「なんだと?」
ミネリアが報告を聞いたその直後。
大地が揺れる。
大きな揺れだ。
だと言うのに何故か一切恐怖を感じない。
それどころか、まるで母の腕に抱かれているような、安らぎと安心感を覚える。
大地が白く発光し、あちこちでその光に呼応するように草木が芽吹き、花が咲く。あまりに美しい光景に誰もが現状を忘れ、見惚れる中。
空を、光が横切った。
「まさか、あれは・・・」
オパールのような虹色の光を瞬かせ、宙に一筋の光の帯が描かれる。
それは翡翠の瞳を持つ、白緑色の巨大な翼竜であった。
背中に生えた四枚の翼が羽ばたく度、鱗粉のような光が辺りに舞う。半透明の鱗がその光を纏って乱反射し、虹色に輝いて空を彩った。
精霊信仰のあるこのフェスティア大陸に置いて、その存在を知らぬ者は生まれたての赤子のみ。
ただその姿を見た者はほんの僅かしかいない。
聖域である、霊峰『カリシュディア』。
そこに聳え立つ、大陸全土を支える『生命の木』 。その守護者にして化身。
【 カリュシェード・ラナス・ターエラ 】
全精霊の長たるカリュシェードの神々しい姿に全ての者が言葉を失った。
『愛しき我が子らよ・・・良くこの危機を耐え抜きましたね。未だ力の戻らぬ我が身ではありますが、せめて、これらの処理だけでも請け負いましょう』
頭に鈴の鳴る清涼な声が直接響く。
カリュシェードが瓦礫を囲うようにぐるりぐるりと回れば、瓦礫の落下がピタリと止まった。そして瓦礫一つ一つに光の粒子が纏わり、光に完全に覆われた物から順にその姿を消していく。
蛍の瞬きのように点滅と消失が繰り返される。
そうしていつの間にかーー瓦礫の雨で途切れ途切れにしか見えなくなっていた青空が黒いシミ一つない姿で眼前に広がっていたのだった。
『ーー間に合った?』
「あぁ間に合ったようだ」
『良おございました。一時はどうなるかと思いましたが』
『ほんとよぉ!間に合わないかもぉってハラハラしちゃったわぁ』
『・・・・あーすら、つかれた』
『おいらも〜。みんなの力をカリュシェード様に運ぶのに大陸何周したかわっかんないよ〜』
「ありがとうなお前達。おかげで完全とはいかないがカリュシェード様が復活出来た」
『あのままだとみんながディルクファーム大陸の叡智に触れ過ぎてしまっていたわ。それはきっとこの大陸には悪い影響しか与えなかったでしょう』
「あぁ、だがいつかはあの叡智に辿り着くかもしれん」
『そうだとしてもゆっくりで良いのよ。この大陸のスピードで・・・。急激な成長は害にしかならないわ』
「そうだな・・・。さて、行こうかサァーラ。俺達の息子を迎えに」
『えぇ・・・』
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