終-4
「ライティエットさん!!!」
ライティエットが宿の屋根で寝転んでいたところに複数の足音が近づいてくる。駆けつけてきたのは白金ランクのパーティー『断罪の剣』のメンバーだった。そういえばこの町に滞在していたのだったと思い出す。
4人は町のお祭り騒ぎに便乗している様子は全くない。むしろ、今まで見た中で一番緊張した面持ちでいるなと、ライティエットは感じた。
「教えてくれ!!これ何がどうなってるんだ!!?」
「空・・・晴レテル」
「でもあそこになんかあるわよね!?もしかしてあれが敵の本拠地ってやつなの?!!」
「ていうかこのピリピリした空気は何なんですかニャァ!?」
それぞれがそれぞれに、この祝いのムードに流される事なく、天上の異物に気付き、更に異様な空気の混沌さを感じとっているようだ。
同世代だからと親しくしてきた訳ではないし、何ならハンター歴はライティエットの方が数年先輩だ。故にライティエットは彼らがパーティーを組んでハンターを始めた頃から知っている。
随分と頼もしいパーティーになったモノだと、自分の事のように誇らしく思えた。
「ちょ、なに!その顔やめてくれる!!?」
「緊張感ガ、トケル・・・」
「はうにゃぁ、ドキドキしちゃいますニャァ」
「キャイしっかりしろーーーーっ!?て、みんな!アレ!!」
ライティエットの微笑で倒れそうになるキャイを支えていたアルスが叫ぶ。
彼の視線と指先が示す方向には数多に飛ぶ鳥型の『伝達魔法』がいた。
ほのかに黄色と緑色に光りながら高速で飛ぶそれは、数と速度からしてハンターギルド代表のミネリアとモルドの合作魔法だろう。
その伝達魔法の鳥がライティエットとアルス達の側に降り立つ。と、同時に、勝手に伝達を『再生』し始めた。
【ハンター諸君。
アタシはハンターギルド頭首ミネリアだ。
今から伝える事はギルド頭首と他代表2名の合意による命令である。
ハンター資格を持つ者は全員、戦闘態勢にてその場に待機せよ。
ただし、町の外にいるハンターは別だ。
どんな手を使っても良い。
すぐさま近くの町や村へ帰還しろ】
愛らしい鳥から力強く、そして緊張感が強く漂う厳しい声が響く。
ミネリアから告げられた内容にアルス達4人は困惑の表情を隠せずにいた。
「え、え、ミネリア様?伝令じゃなくて、命令?」
「戦闘態勢で待機って、どういうことだよ?」
「一体ナニガーーっ!!?」
「ガガル?」
「ーーー・・・ナニカ、クル」
そう言ってガガルが腰に下げていた三日月のように湾曲した双剣を構えて空を睨む。
視線の先の空はどこまでも澄み切った青空が広がるばかりだ。だが、ガガルは警戒を解かないどころか奥歯をギリリッと音が鳴るほど噛み締めて睨み続けていた。
「あぁ、良い反応だ、ガガル」
ガガルの反応にライティエットが起き上がり、彼同様に剣を持つ。剣を手にしたライティエットとガガルの行動に、他の3人は分からないながらも即座に各々の武器を持って構えた。
そんな中で伝達魔法は、ミネリアの言葉は続く。
【皆、恐らく、これが最後の戦いだ。
全身全霊を持って迎え撃て!!!
そして、必ず生き残れ!!!!!!】
ミネリアの叫びが町中に響く。
まるでそれを合図にしたかのように、空が陰った。
「えーーー?」
それは誰の声だったのだろう。
自分かもしれない、仲間かもしれない。それこそ町の人々だったかもしれない。
急な陰りが町の人々の歓喜の声を止めさせる。
大陸中の人々が空を仰ぎ、陰りの正体を見やる。
先程までシミでしかなかった影が、あっという間に空を覆うほどに迫ってその全容をライティエット達に見せつけてくる。
それは、黒い『未知』だった。
巨大な、あまりにも巨大な鉄の固まりが空に浮かんでいる。山のように聳える城であり、空を、いや、宇宙を泳ぐ船であり。
フェスティア大陸の住人たちが見たこともない、科学の叡智。それが空を覆い尽くしていた。
そしてそこから、数多の魔族が湧き出るように降りてくる。
数多のモンスターが、雨が降るように地上に落ちてくる。
全てを、今度こそ本当に、全てを蹂躙する為に。
空と地上が、黒に塗りつぶされていく。
「・・・なんだよ、あれ」
「ァア・・・・」
「嘘でしょ、あんな数、一体どうやって・・・」
屋根に登っているからこそ見える、天地が悪意と殺意で黒く染まっていく情景。
これを絶望と言わずして、何を絶望と言えばいいのか。
圧倒的な数の暴力が彼らの身体を、心を蝕んでいく。
「ーーみんな!!弱気になっちゃ駄目ニャ!!」
「「「!!?」」」
「ミネリア様言ってたニャ!これが『最後』だって!だから、だから頑張って戦うニャ!!戦って戦って、みんなで今度こそ笑ってお空見るのニャ!!!!!」
キャイの言葉に同じパーティーの3人はもちろん、ライティエットも驚いた。
何故ならレベルと力量で言えば、キャイはこのパーティーの中で1番弱いからだ。しかも魔術師でありながらあまり攻撃魔法は得意ではなく、パーティーメンバーの力の底上げか敵の動きを止めるなどの補助的な魔法を使うのを主な役割としている。
そういった事から1番戦闘を苦手としており、1番怖がりなのだ。
そんな彼女が今、この絶望に立ち向かっている。
足を、杖を持つ手を震わせて。それでも放たれたキャイの言葉が3人の心を明るく貫く。
「ーー全く、年下のアンタに言われちゃ世話ないわね!!」
「ありがとうキャイ!おかげで目が覚めたぜ!!」
「・・・イコウ」
「はいニャ!!」
そうして気合いを入れ直した4人が屋根を降りようとするのを
【『断罪の剣』諸君。
アンタ達には別で命令がある。心して聞け】
ミネリアの伝達魔法が止めた。
「「別の、命令?」」
【アンタ達がいる『ウェイゼン』の後ろ、霊峰『カリシュディア』はこの大陸に残された最後の聖域だ。
つまり、我々の最終防衛場所はそこになる。
町の防衛はもちろんだが、霊峰への侵入は絶対にさせるな。
ーーアンタ達なら出来る、必ず生き残れ】
その言葉を最後に伝達魔法の鳥は消えた。
「・・・キツイコト、イウ」
「本当よ。ミネリア様も無茶苦茶言ってくれるわね」
「でも、出来るって言ってもらえたニャァ!」
「あぁ、みんな行こう!!」
頷きあった4人は一度ライティエットを見て、何も言わずに迫り来る敵に向かって走っていった。
無詠唱で即座にかけられたキャイの魔法で身体能力が爆発的に上げられた4人はすぐさま町の外まで行きつき、敵と接触する。
先ず先制とばかりにシャロッテが放つ魔法の矢が無数の雨となって上空の魔族達を貫き落とし、そこにアルスが底上げしてもらった馬鹿力で振り上げた大剣を文字通り叩き落とした。地面は彼を中心にひび割れるどころか100m級の巨大クレーターが出来上がり、あっという間に屍の山が出来る。更に討ち漏らしや死角からの攻撃はガガルがしなやかな鉄線で繋がった双剣をブーメランのように振り回して操ることで確実に仕留めていった。
白金ランクの怒涛の攻撃に後方から追いついた他の上位ハンター達が加勢していく。下位ハンターは町の住民達の避難誘導を優先し、こんな時の為に作られたハンターギルドは巨大な地下空間を開放して住民達を保護していった。
町を守る守護精霊達も危機と人々の熱意に応え、結界を強化し、更には魔術師達の魔力補助を率先して行なっている。
正に大陸中が一丸となって、この脅威に立ち向かっている。
だが、最終的にあの天上の未知をどうにかしなければ、この大陸に未来は無い。
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