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幕間4 ごはんはひとりよりも 〜酒漬けドライフルーツのケーキ〜


※六夜終了直後



 母さんの墓の前でしばらく話した後、俺とメーディエはゆっくりした足取りでシタヤのいる小屋に戻ってきていた。

 正確な時間は分からないが、もう真夜中と言っていいだろう。もしかしたら日付が変わるぐらいになっているかもしれない。


 シタヤは、恐らく寝ずに待っていてくれている。

 あの人はそういう人だ。

 俺個人のことなのに夕飯も食べずに付き合わせてしまったメーディエとシタヤには悪いことをしてしまった。

 けれど、2人のおかげで自分で自分を縛ってしまっていた何かが解けようとしている気がする。


 この感謝の思いを、どう伝えれば良いだろう。



 そんな事を考えていたら、隣を歩いていたメーディエがピタリと足を止めた。俺もつられて足を止めれば、少し先に明かりの灯った家が見える。

 あぁ、やはり起きて待ってくれているか。

 そう思ったのも束の間、五感の一つを強く刺激してきた『それ』に、俺は感じていた感謝が急速に萎んで消えていくのを止められなかった。


「ライ、なんだか家の方からいい匂いがしない?」

「・・・あぁ、するな」

「あ、シタヤさんがご飯を作ってくれているのかしら?早く帰ってお手伝いしなきゃ!」

「・・・」


 薫ってくる良い香りにはしゃぐメーディエ。何なら急ごうとばかりに俺の手を引いてくる。

 反対に俺は足取り重く、けれど明るい笑顔のメーデュエに抵抗出来るわけもなくて。不思議そうにするメーディエにずるずると引っ張られて家に辿り着いてしまった。


「おぉ!2人ともおかえり!!」

「ふわぁ〜・・・!」

「・・・・・・・・・」


 扉を開けて飛び込んできて光景にメーディエは感嘆の声を上げ、俺は嫌な予感が大当たりした事を痛感した。


 目の前に広がるのは、大量の料理。

 先ず数種類のパン。

 ロールパンにバケット、黒麦パンと色々あるが突出すべきは1番香ばしい香りを放つ胡桃パンだろう。生地に練り込む前に炒られた胡桃が香ばしさをより高め、口に含んだ瞬間にパンの柔らかさとカリッとした胡桃の歯応えと甘さが感じられる一品だ。

 次は野菜のサラダ。

 精霊王達の作る亜空間収納(マジックボックス)は収納された物の時を完全に止めて鮮度を保つ優れモノだ。そこに収納されていたであろう採れたて野菜は鮮度抜群で瑞々しく艶やか。シタヤ特製のドレッシングがかけられたサラダはそれだけでご馳走たり得る一品と言えるだろう。

 その次がスープ。

 何も具材が入っていないように見える白緑色のシンプルなスープ。だがこれは複数の茹でた豆と炒めた玉ねぎを潰し、更に丁寧に濾して作られている。単調になりがちな豆の味に玉ねぎの甘さとコクが加わった極上の一品だ。

 そして最後のローストビーフ。

 揚げたガーリックチップスと黒胡椒をまぶした表面と美しいワイン色を残した断面。絶妙な火加減と熟成時間のおかげで噛めばじゅわりと肉汁が溢れ出る。小鉢に添えられた赤ワインがベースのソースは酸味と甘味が強めだが、溢れ出る肉汁と調和し引き立てるように調整されたもの。こんなの、美味くない訳がない。


 こうして並ぶ料理に俺は目眩がした。

 誰がどう見ても、お祝いのディナーだ。

 何なら東地方限定であると聞く女の子の初潮の祝いの風習と同じ気配がする。


 ただ俺の場合は男だ、そんな祝いをする必要はない。

 では何の祝いか?なんて、聞いてはいけない。

 それを聞こうものなら弄られる未来が確定で待っているからだ。だから俺は聞かない。俺は聞かないが


「すごいお料理ですね!どれも美味しそう!何かお祝い事ですか?」


分かっていないメーディエは純粋無垢な瞳のままでシタヤに疑問を投げかけた。


 聞かないでくれ頼むから!!

 メーディエは分かってない!

 シタヤは一見人が良さそうに見えるがイジれるネタがあればここぞとばかりにイジってくるんだ!その為に手間がかかろうが気にしない!何故なら無駄に器用だから手間が手間じゃないんだ!今回のこの料理なんてまさにその証拠で、確実に俺をイジるために準備したモノなんだ!!

 俺とメーディエの関係が変わることを予想しての行動で、それをここぞとばかりに根掘り葉掘り聞くためのふせき


「おぅ、ライの誕生日のな!」


--・・・・・・・、え?


「え!?今日ってライの誕生日なんですか?」

「正確にはちょっと過ぎとるんだがな。まぁそこは仕方ないとして、ここ数年祝えてなかったからな!今日は盛大に祝うぞ!!」


 そう言ってシタヤは暖炉の上に併設してある釜からケーキを取り出した。隣のメーディエから高くはしゃいだ悲鳴が上がてシタヤの側に駆け寄る。

 フワリと甘いアルコールと果物の香りが家中に広がった。

 酒漬けのドライフルーツがたくさん入った、バターケーキ。アルコールは釜の熱で飛ぶから、子どもでも食べられる。


 他の料理もだが、これは特にシタヤに絶対勝てないと、母さんが唸っていた。

 シタヤが1番得意な・・・俺と母さんのお気に入りの一品。



「久々だからうまく作れるか不安だったんだが、いやぁ意外と覚えとるもんだな。上手く焼けて良かったよ」


 本当に久々だ。

 だって、最後に食べたのは一体いつだ?

 それこそ、最後となってしまった3人で揃って食事をした時以来かもしれない。

 誕生日は旅に出ていたこれまでも何度か祝ってくれていた。けれどこのケーキは、食べた記憶がない。


 作れなかったのか、シタヤも。

 思い出があり過ぎて、辛くて。


 ケーキに向けていた視線をシタヤに向ければ何とも言えない表情で笑うシタヤと目が合う。

 俺も多分、同じような表情をしているだろう。


「・・・誕生日おめでとう、クロス」

「おめでとう、ライ!」

「ー・・・・ありがとう、2人とも」



 久々に食べたケーキはほんの少しだけしょっぱくて、けど変わらず美味かった。








 ある程度食べた辺りで、根掘り葉掘り質問攻めにあった。しかも精霊王たちも参戦して・・・。

 俺の感謝と感動を返せ!!






幕間4

ごはんはひとりよりも

 〜酒漬けドライフルーツのケーキ〜  END



ここまで読んでくださってありがとうございます。

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何卒よろしくお願いします!!!


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